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肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 28
夫からの離婚届、慰謝料は請求できるのか
多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624
夫との間に、子供が1人おります。子宮頸がんになり、子宮を摘出しました。それから、夫との性的な関係がなくなり、ついには浮気をされてしまい、夫から離婚届を渡されてしまいました。夫と離婚してしまうと、子どもを育てることが経済的に困難です。この場合、離婚をしないといけないのでしょうか。また、離婚する場合、慰謝料を請求することはできますか。
(40歳、女性)
慰謝料の他に、婚姻費用、養育費も請求できる
お連れあいが、あなたと離婚したいという真の理由は何でしょうか。
子宮頸がんで子宮を摘出しても、性行為ができないということはないと思います。手術直後は痛みがあったり、お互い心理的なプレッシャーがあったりしてつい遠ざかってしまいがちですし、こわごわ行うことになりがちですが、それでも2人で工夫しながら行えば十分可能です。そのためには、あなたのほうからこうしてほしいと発信していくことが大切です。言いにくいかもしれませんが、そこは夫婦ですもの遠慮なく言って下さい。
ただ妊娠は望めませんよね。でも、既にお子さんが1人おられる由、ならばそれでいいではありませんか。妊娠の可能性がないということは、かえってそれだけのびのびと自由に性行為を楽しむことができる、とそのように捉えたほうがいいでしょう。
相手の女性はどんな人なのでしょうか。今、お連れあいはその人に夢中で、再婚を考えているのですか。もし、そうなら「離婚はしない」というスタンスでしっかり戦うことはできます。裁判所は、お連れあいの身勝手な望みを正当な離婚原因とは認めませんから、十分戦えます。そして、その間の婚姻費用(あなたとお子さんの生活費)も請求して下さい。
一方、離婚に応じてあげるのであれば慰謝料や養育費を請求することも可能です。ただ、その金額はさほど多くはありません。あなたが安心してシングル・マザーとして子育てできるかというと、かなり難しいです。
ただ、もしもお連れあいが文字通り「浮気」で、決して「本気で再婚を考えているわけではない」のなら、もう少し違った対応を考えたほうが良いかもしれません。もしかしたら、がんになったことが原因というよりも、あなたが「夫の非を責めすぎる」ことが2人の関係を悪くしているのではありませんか。お連れあいも申し訳ないとは思いながら、あなたの怒りが強すぎて謝るに謝れないということではないでしょうか。ならば、しばらく別居して冷却期間を措くのもいいかと思います。その間に、お互いの考え方が変わるかもしれません。その際も、婚姻費用だけはどうぞ決めておいて下さいね。
本来ならば、病気の負担は夫婦で分かち合うべきものです。でも「がん」と聞くと怖気づいてなかなかその重みを背負いきれない人もいるものです。
でも、雨降って地固まる。お子さんまでいらっしゃるご夫婦ですもの、お連れあいもそのうち目が覚めるのではないでしょうか。
つらいでしょうが、ここはひとつあなたが大人になって下さい。そうすることで、問題はいつか自然に解決するのではないかという気がします。「お子さんにとって何が1番幸せなのか」。そのことを、冷静に考えて対処してあげて下さい。