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肝っ玉弁護士がんのトラブル解決します 34
連帯保証している叔父が亡くなったが、債務はどうなる?
多彩な弁護士活動の中でも家族、相続などの問題を得意とする。2003年より「女性と仕事の未来館」館長。2児の母。2005年男女共同参画社会作り功労者内閣総理大臣表彰を受賞。『子宮癌のおかげです』(工作舎)など著書多数。
渥美雅子法律事務所 TEL:043-224-2624
叔父が、先日がんで亡くなりました。叔父は生前に不動産関係者の連帯保証人になっており、数千万円返さなければならない状況でした。叔父には身寄りがおりません。やはり、親戚の私が、お金を返さなければならないのでしょうか?
(53歳、女性)
相続人であっても、相続放棄の手続きをすれば、お金を返す必要はない
叔父さんに身寄りがないという意味は、妻子もいない、孫もいない、親兄弟もいない(あるいは既に死亡している)、あなたの他に甥も姪もいないということだと理解してよろしいでしょうか。その場合は、確かにあなた1人が相続人になります。
また、叔父さんが遺言を残してないという前提でよろしいでしょうか。公正証書遺言であれ、自筆証書遺言であれ、もし遺言があれば遺言に則って相続手続きを進めますので法定相続とはちょっと違った形になります。
それらの前提に立って、叔父さんの債務が数千万円あり、あなた1人が相続しなければならない状況であるならば、死亡を知った日から3カ月以内に相続放棄の手続きをするのがよいと思います。
相続放棄の手続きは相続開始地(即ち死亡した場所)の家庭裁判所に出向き、その裁判所に「相続放棄の申述」という届出を出すことになります。ただ、放棄をすると連帯保証債務だけではなく財産の全てを放棄することになりますから、ほかに遺産があっても、それをもらうことはできません。
そこで、まだ時間があるなら(つまり3カ月という期限が切迫していないのなら)叔父さんの遺産を少しお調べになってからのほうがよいような気がします。例えば、今まで叔父さんの住んでいた家は持ち家ですか、それとも借家ですか。近所の方にでも尋ねてみて下さい。もしも持ち家ならば、その登記がしてあるはずですから、法務局で登記事項証明書をとり、市役所(区役所)の資産税課で固定資産評価証明書を取ってきて下さい。それによって、概ね資産価値が分かります。
一方、債権者(金融機関)にも金銭貸借の内容などお尋ねになったほうがよいでしょう。というのは、もしかしたら金融機関側で保険をかけているかもしれないからです。その場合は、死亡すると残債務分だけ保険が下りてその時点で債務は消滅してしまいます。
そうした調査をなさって、プラスの財産とマイナスの財産を比較し、その上であなたの態度をお決めになったほうがよいかと思います。
ただ、調査に手間取って3カ月の熟慮期間が過ぎてしまうこともありますので、もしもそれが気がかりなら、予め家庭裁判所にタイム・リミットを伸ばしてもらうよう申請しておかなければなりません。
無論、資産は全くなくて連帯債務だけ負っている状況なら、あえて面倒な調査をする必要はありません。相続放棄の手続きをしさえすれば、請求を受けることはありませんのでご安心下さい。