食道がんの手術後に肺炎になったときの治療は?

回答者・出江洋介
都立駒込病院食道外科部長
発行:2011年11月
更新:2020年3月

  

3期の食道がんと診断され、手術を受けることになりました。主治医の説明では「術後に肺炎になる可能性がある」とのこと。母が肺炎で他界したため、肺炎と聞くととても怖いです。肺炎になったときの兆候とはどのようなものですか。なってしまったら、どのような治療がされるのでしょうか。自分でできる予防策はありますか。

(鳥取県 男性 64歳)

禁煙や痰を出す努力をしましょう

都立駒込病院食道外科部長の
出江洋介さん

術後の合併症として1番多いのが肺炎です。軽症のものも含めると20パーセント近い患者さんが肺炎になります。最初に発熱が起こったり、痰が多くなったりし、症状が進むと呼吸困難に陥ります。しかし、最近は術後の管理がよくなってきているので、呼吸困難ほどの重症になるのは1~2パーセント程度と非常にまれです。

肺炎は、①術後1週間以内で起こるケースが多いですが、そのほか、②術後1週間して食事を開始してから起こるケースもあります。

①術後1週間以内に起こるのは、手術によるダメージから起こる肺炎です。まず抗生物質を点滴すれば、1週間以内には落ち着きます。

このタイプの肺炎には、痰が関係しています。痰が肺への空気の通り道をふさいでしまうことにより、肺がつぶれて細菌が繁殖し、肺炎が起こるのです。咳は、痰を体の外に出す役目を果たしています。術後は痰が多くなる一方、弱い咳しかできません。

そこで、「ミニトラック」という細いチューブを首に入れる処置をすると、痰を吸引することができます。チューブは入れっぱなしにしておき、退院前に抜きます。

肺炎を起こしていなくても、高齢者や、痰を出すのが大変そうで肺炎を起こす可能性が高い患者さんに対しては、予防的にミニトラックを入れます。

②術後1週間たち、食事を開始してから起こるのは、食べた物が気管に入り込んで起こる誤嚥性肺炎で、ときには重症化します。

肺炎が起こったときは、まず食事を止めれば、治まります。さらに、先程と同じくミニトラックの処置を行います。多少飲み込みにくかったり、違和感があったりしますが、チューブを入れたままでも食事はできます。そのほか、非常にまれですが、肺炎が重症化した場合には、気管切開をして人工呼吸器を装着します。

患者さんご自身ができる予防策は、手術前からの禁煙です。煙草を吸っていると、肺炎を起こす確率が大変高いのです。

また、術後は努力して咳をして、痰を出すようにしてください。なかなか痰が出ないことで、肺炎が起きるからです。深呼吸をしたり、体を積極的に動かすと、咳が出やすくなります。じーっとして動かないのが、1番いけません。手術して翌々日には看護師さんに補助してもらいながら立てるようになるので、どんどん体を動かして咳を出してください。

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