尿漏れは完治しますか?対策は?

回答者:赤倉 功一郎
東京厚生年金病院 泌尿器科部長
発行:2011年12月
更新:2013年11月

  

約1年前に前立腺がんの摘出手術を受けました。尿漏れはだいぶ少なくなり、普段の生活にはほぼ支障がなくなりましたが、飛んだり跳ねたり走ったりすると、どうしても尿漏れを起こします。気分的にもすぐれません。完治できるものなのでしょうか。

(栃木県 男性 69歳)

A 骨盤底筋体操で改善を目指す

■骨盤底筋体操の例(赤倉功一郎:前立腺がんの最新治療、主婦の友社、2011より抜粋引用)

尿漏れは、前立腺の全摘除術を受けたほとんどの人が体験する症状で、だいたい術後1年ほどで95パーセントの人が回復するとされています。ただ、この回復というのが、術前に患者さんが何の不自由も不快感もなく過ごしていた状態まで戻ることをいうのかというと、そうではないのが残念なところです。医学的な基準でいう回復とは、利用する尿パッドの枚数が昼間1日1枚以内で済むという程度と考えられています。

尿パッド1日1枚以内というのは、くしゃみをしたときや走ったときに、少し漏れることがあるという程度。パッドが完全に濡れてしまって交換しなくてはならない状態でなければ、パッド1枚以内ととらえます。中には、1日まったく尿漏れがないことがほとんどだけれど、念のためパッドをしているという人もいます。このあたりは、尿漏れをどうとらえるかという、個人の感覚によるものですから、かなり個人差があるかもしれません。

尿漏れの原因には、手術で前立腺を摘出すると、前立腺で支えられていた膀胱頭部(膀胱の出口)の尿の保持力が弱まることが挙げられます。そのため、外尿道括約筋という尿道の開閉をコントロールしている筋肉のみで尿漏れを防ぐことになり、急激な体の動きなどで腹部に力がかかると尿道に尿が流れ、「腹圧性尿失禁」という尿漏れが起こるのです。

対策としては、骨盤底筋体操が効果的です。これは、外尿道括約筋を強化する体操です。まずは、外尿道括約筋に力を入れる感覚を意識できるようにすることから始めます。この感覚は、「排尿時に尿を止める」「おならが出るのを防ぐように肛門を締める」というときの力の入れ具合から得られます。この感覚がつかめたら次に、「筋肉に力を入れた状態で数秒間維持する」「筋肉に力を入れたり緩めたりを、できるだけ素早く繰り返す」という訓練をします。1日数分間でよいので、このような体操を行っていくと症状の改善に役立ちます。

この相談者の方の場合も、飛んだり走ったりしたときだけ漏れるということですから、おおむね回復した範囲と考えられます。とはいえ、最初で述べたように、どの程度の尿漏れを不快として気にするかは、個人の感覚によります。女性は尿道が短いなどの体の構造上、若いときから産後などで尿漏れを体験していますが、男性の場合は術後初めて経験する体の不調として気になりやすいのかもしれません。

それでも、骨盤底筋体操のような訓練により、たとえば、跳んだ着地のとき、くしゃみのときには尿道を少し締めるというタイミングがつかめて、尿漏れの頻度はぐっと抑えられると思います。

長く付き合っていかなければならない症状であることにはかわりないのですが、生活上の不便感を解消する方法は、きっと見つかります。尿漏れを気にして水分を制限したり、外出を控えたりするよりは、少しのことはあえて気にしない姿勢で活動的で豊かな生活をおくっていただければと思います。

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