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森川那智子のゆるるんヨガ de ほっ!

ゆるゆるセルフケア!(10) 冷気呼吸

イラスト●矢田勝美
発行:2008年8月
更新:2013年8月

  

森川那智子(もりかわ なちこ)
こころとからだクリニカセンター所長。カウンセラー・ヨガ指導家。心療内科と提携し、カウンセリングを中心に、ヨガ、リラクセーション、瞑想を取り入れた療法で、心と体のサポートに取り組む。
『こころがラクになる本』(大和書房)
『リラックスヨガ』(成美堂出版)など
著書多数こころとからだクリニカセンター http://www.kokokara.co.jp/

落ち着きを取り戻す冷気呼吸

① 足指に手指を深く入れて、ゆっくり8回まわし、逆方向にも8回。反対の足も同様に

「水はとても貴重なものだから、使えるのは洗面器1杯。それだけの水で、洗面、歯磨きはもちろん、全身を洗うのよ」

南インドのアシュラムで暮らしている旧友からの手紙にこんなことが書かれていました。数年来、雨期になっても雨が降らず、深刻な水不足が続いていた時期のことです。

洗面器1杯の水で、全身の清潔さを保つ……水道の水がまずいとか、安全性に疑問があるとか言われていますが、とりあえず蛇口をひねれば、いつでも必要なだけ水が供給される生活をあたりまえに送っている者にとっては想像しにくいことでした。

② 舌先を突き出し、OかUに巻き、息を吸う。吸ったら口を閉じて鼻からゆっくり息を吐く。これを5回。自然呼吸にもどして、もう1セット

たとえば喉の渇きを感じたときなども、私たちはとくに意識することなく、キッチンへ行き、冷蔵庫を開け、適当な飲み物を口にしています。だから、今回紹介する「シータリー・プラナヤーマ」の本当の意味を知るのは難しいかもしれません。

「シータリー」は「冷気・冷却」の意味で、日本語に訳せば「冷気呼吸」。渇きやほてりを和らげる呼吸法です。

ヨガにおける呼吸のしかたは、原則的に鼻から息をいれて、鼻から息を出します。冷気呼吸はその例外の1つで、入息のときに唇の外に舌先を出し、その舌をス トローのように丸めて、そのストローを通して息を吸います。こうすると舌の湿り気によって外気は適当な湿度が与えられ、冷やされ、喉を通るときはひんやり と心地よく感じられます。

ヨガの歴史的な教則本『ハタ・ヨガ・プラディーピカー』では、暑気のなかで、あるいは飢餓や渇きのなかで、熱を冷ますの に効果があると記述されています。暑さや食糧不足のなかで、いたずらに焦燥に駆られて体力を消耗させることなく、この呼吸法でわずかな涼をとりながら、静 かにやり過ごすことは「サバイバルの知恵」であったに違いありません。

③ 半座は足を腿内側にぴったりとつけ、反対の足をその上に乗せる

私たちの日々の生活では、そのような過酷な自然条件を突きつけられることはまずありません。

「だから時々は断食をして、死ぬ練習をしたほうがいいんですよ」

あるヨガの老先生からこう言われたとき、まだ20代だった私はピンときませんでした。

「人間死ぬときは、まずものが食べられなくなる、水も飲めなくなる。その飢えや渇きに苦しみ取り乱してしまうのですよ」

4達人座は足のかかとを恥骨まで引き寄せ、その上に乗せた反対の足の先を腿とふくらはぎの間に入れる

恐ろしいのは飢えや渇きそのものより、焦燥感や恐怖感や絶望感なのだと。

冷気呼吸はどんなときでも落ち着きを取り戻し、苦しむこと、死ぬことまでひっくるめて生きることなんだと、まるごと受け止める一助になると教えてくれました。

本 誌の先月号の巻頭対談のなかで、がん哲学外来を実践されている樋野興夫さんが、末期がんの患者さんに、「あなたには死ぬという重要な仕事が残っています」 と言うと、帰るときは姿勢が違っている、かがみがちだった腰や背筋がしゃんとするというくだりを読み、老先生の言葉を思い出していました。

今に至 るまで、本格的な断食もせず、練習不足もいいところの私ですが、冷気呼吸には大いに助けてもらっています。どの呼吸法もそうですが、少し立ち止まる、あれ これ考えるのを止めて、呼吸に気持ちを向けて味わうということ。少しの間、そうしていると、意識の表層で泡立ち渦巻く感情の波がみえてきます。そして海面 がどれほど波立っていても、海の底が穏やかであるように、自分自身の内側にも静かで平和な場所があることもみえてきます。そうした瞬間(瞬間なんですが) がおとずれます。

冷気呼吸

① 足首を柔軟にして、下肢の血行を良くしてから始めます。左足を右ももの上に乗せて、足指の股に手指を深く入れ、ゆっくり8回まわし、逆方向にも8回。左右の足を交代して同様に。

② どんな座り方でもいいのですが、今回は半座と達人座を紹介します。左足を腿内側にぴったりとつけ、右足をその上に乗せる。これが半座。左足のかかとを恥骨まで引き寄せ、その上に乗せた右足の先を左腿とふくらはぎの間に入れると達人座。

両腕を膝に伸ばし、人差し指の先を親指の腹につけて印をつくる。

腰から下は根のようにどっしりとしていて、脊柱は茎のようにすうーっと伸び、頭部は華のようにふわりとのっていると、自分の姿勢をイメージします。

③ (自然呼吸を数回行ってから)唇の外に舌先を出し、英字のOかUに巻き、舌と唇をストローのようにして息を吸っていく。吸ったら口を閉じて、おもむろに、鼻からゆっくり息を吐いていく。これを5回。自然呼吸にもどして、もう1セット。

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