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病勢をうまくコントロールして共存 原発マクログロブリン血症/リンパ形質細胞性リンパ腫(WM/LPL)の最新治療

監修●口分田貴裕 近畿大学医学部血液・膠原病内科講師
取材・文●半沢裕子
発行:2022年3月
更新:2022年4月

  

「WM/LPLの患者さんには病気を正しく理解してもらうことがとても大切です。しっかり病勢をコントロールしながら日常生活を送る方も多いので、根治が難しいとされている病気ですが悲観することはありません。また、さまざまな薬剤が出てきているので、その人のニーズに合わせた治療ができるようになってきています」と語る口分田(くもで)さん

多種多様な血液がんの中でも罹患数の少ない原発性マクログロブリン血症/リンパ形質細胞性リンパ腫(WM/LPL)。希少がんであるWM/LPLにも、近年血液がんにおいて急激に進む分子標的薬開発の成果が及んでいます。

とくに2020年8月、BTK阻害薬ベレキシブルがWM/LPLに追加承認されたことで治療は大きく変わリました。

近畿大学医学部血液・膠原病内科講師の口分田貴裕さんに、WM/LPLとはどんな病気なのか、ベレキシブルにより治療はどのように変わったのか、そして、いい治療を選択して長期生存を果たすには何に気をつけたらいいのかお聞きしました。

原発マクログロブリン血症/リンパ形質細胞性リンパ腫(WM/LPL)とはどんな病気?

悪性リンパ腫の一種で、低悪性度成熟B細胞リンパ腫の一病型。日本では100万人に3人程度がかかるとされる希少がんですが、診断がむずかしいため、実際には患者さんがもっといると推測されます。高齢者、男性に多い病気です(男女比約3:1)。

血液細胞は造血幹細胞から複雑に分化し、赤血球、血小板、好中球、B細胞(Bリンパ球)、NK細胞、マクロファージなどに成熟しますが、リンパ系の免疫細胞であるB細胞は分化して形質細胞になります。形質細胞ががん化する病気が多発性骨髄腫ですが、WM/LPLはその一歩手前に当たる「形質細胞になりかけのB細胞」ががん化する病気です。

この2つの病気はB細胞系でがん化が起こる、異常な免疫タンパクが増えるといった点は似ていますが、まったく違う病気です。WM/LPLが進行して多発性骨髄腫になることはありません。ただ、WM/LPLはまれに悪性度の高い悪性リンパ腫に進展することはあります。

WM/LPLと2つの名前が併記されているのはなぜ?

原発マクログロブリン血症(別名ワルデンシュトレームマクログロブリン血症:WM)とリンパ形質細胞性リンパ腫(LPL)、2つの名前が一緒に表記されているのは、WMがLPLの主要なサブセット(部分集合)だからです。

LPLは、悪性リンパ腫のひとつで、がん化した「形質細胞になりかけのB細胞」が骨髄やリンパ節、肝臓、脾臓(ひぞう)などで増える病気です。そして、LPLの中でも、Mタンパク(マクログロブリン)という異常タンパクをつくり出すタイプをWMといいます。WMはLPLの7割を占める多数派です。LPLもWMも年単位でゆっくり進行するがんです(図1)。

抗体とは、ウイルスなどの異物が体に入ったときに、これと戦うためにつくり出されるタンパク質です。正常な形質細胞はIgMという抗体を産生しますが、WMではがん細胞がどんどん増え、Mタンパクと呼ばれる異常なIgMが次々と産生されます。Mタンパクはウイルスなどと戦う働きがないので、免疫が十分働かなくなります。また、IgMは他の抗体の5倍くらいある大きな抗体なので、Mタンパクも大きく、これが血中でたくさんつくられ、血液がどろどろになることでさまざまな症状が起きます。これを過粘稠度(かねんちゅうど)症候群といいます。

どんな症状が出ますか。いつ、どのように診断されますか

WM/LPLの診断がむずかしいのは、症状が非常に多彩で、患者さんによって大きく異なるためです。しかも、急性白血病のような劇的な症状は比較的少なく、B症状と呼ばれる全身症状(持続する発熱、寝汗、体重減少)や倦怠感のみという場合も少なくありません。

そのほか、病気が進行するとリンパ節、肝臓、脾臓に腫れが見られることがあったり、貧血などの骨髄症状も多く見られます。がんが中枢神経に浸潤(しんじゅん)すると、頭痛、認知障害、麻痺、意識障害などが起こります(ビング・ニール症候群)。

WMでは、これらの症状に過粘稠度症候群が加わり、頭痛、目のかすみ、鼻や口腔や網膜などの出血、手足のしびれ、めまいなどが起こることがあります。

このようにWM/LPLに特異的ではないさまざまな症状が起こるので、診断に時間がかかることも多いのですが、できるだけ早く血液内科に来ていただくことが大事です(図2)。

血液検査で血中のIgM値が高い場合はWMを疑います。ただ、IgM値が低くても、非常に質の悪いMタンパクがつくられると症状が強く出ることがあるため注意が必要です。ですから、診断はIgM値だけでなく、採血や骨髄検査を行い、画像で腫瘍やリンパ節などの腫瘍性病変がないか確認します。腫瘍性病変があれば、組織をとって病理検査を行うこともあります。

診断の後「無治療」と言われたら、どんな注意が必要ですか?

血液のがんなので、治療は基本、薬物療法となります。しかし、まず治療の対象となるかを判断することがたいへん重要です。WM/LPL特有の症状がない場合は、「無治療、経過観察」が『造血器腫瘍診療ガイドライン2018年度版補訂版』でも推奨されています。

WM/LPLは治癒が困難といわれていますが、低悪性度であり年単位でゆっくり進行するので、症状のない早期に薬物療法で病気を抑えるメリットは少なく、逆に副作用や合併症により体調が悪化するリスクが上がってしまうのです。

一方、症状が出たらすみやかに治療を行う必要があるので、定期的に通院してWM/LPL特有の症状が出ていないか確認します。私の患者さんにも何年も無治療で外来に通っている患者さんがたくさんいます。

そう説明すると「軽い病気なんだ」と思われがちですが、決して軽い病気ではないことも知っておいてください。症状が出たときに、病勢が強いと致命的な経過をたどることもあるからです。ちなみに『診療ガイドライン』には、この病気による死因として「原病の悪化、悪性度の高いリンパ腫への進展、感染、抗がん薬治療に起因する2次性白血病」が挙げられています。

症状が出でたら、どんな治療を行うのでしょうか?

経過観察中に症状が出てきたら、まず、過粘稠度症候群が確認される場合は、「血漿交換」を検討します。血漿交換とは血液を血球成分と血漿成分に分離し、病気の原因物質を含んでいる血漿の代わりに、同量の健常な血漿を交換する治療法です。

WMでは、血中のMタンパクの除去を目的とします。おもにIgM値が4,000を超えている場合に行われることが多いですが、過粘稠度症状を認める場合にはまず行うことが推奨されています。とくに注意が必要なのは分子標的薬リツキサン(一般名リツキシマブ)を投与される予定の患者さんです。リツキサンをIgM値の高い患者さんに投与すると、一時的にIgM値が跳ね上がり、過粘稠度症状が悪くなることがあります。これを「IgMフレア」と呼びます。

リツキサンは血漿交換のあとに処方することが推奨されていますが、どの薬剤を使う場合でも、IgM値が高く、過粘稠度症状が強い患者さんには血漿交換を検討したほうがよいと私は考えています。

WM/LPLの治療として最近までいちばん使われてきたのは、リツキサンを中心とする薬物療法です。リツキサンはB細胞性リンパ腫などの表面に多く発現しているCD20という抗原に結合し、その細胞を破壊する分子標的薬で、抗CD20モノクローナル抗体薬と呼ばれます。これを単剤で使う方法は、WM/LPLにおいて最も副作用の少ない治療のひとつと考えられています。

症状によりリツキサンに抗がん薬をプラスしますが、よく併用されるのはエンドキサン(一般名シクロホスファミド)、ベルケイド(一般名ボルテゾミブ)、トレアキシン(一般名ベンダムスチン)などです。

若年でIgM量が多い場合は、トレアキシンまたはベルケイドを併用する、高齢で合併症がある場合はリツキサン単剤、というようにそれぞれの患者さんの症状によって治療の組み合わせを選択します。

また、悪性リンパ腫でよく用いられや化学療法レジメン(治療計画)であるR-CHOP療法や、リツキサンにフルダラ(一般名フルダラビン)を併用する治療が行われることもありますが、最近、WM/LPLで使われる機会は減っています。

R-CHOP療法=リツキサン(一般名リツキシマブ)+ エンドキサン(同シクロホスファミド)+アドリアシン(同ドキソルビシン)+オンコビン(同ビンクリスチン)+プレドニン(同プレドニゾロン)

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