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CAR-T細胞療法と新免疫療法薬エプキンリ 再発・難治性悪性リンパ腫の最新治療

監修●下山 達 がん・感染症センター都立駒込病院腫瘍内科部長
取材・文●柄川昭彦
発行:2024年3月
更新:2024年3月

  

「エプキンリは、皮下注射なのですぐ投与できるのは大きなメリットと言えます。また、CAR-T療法のような細胞採取施設は必要ないので、多くの医療機関で治療することができます」と語る下山さん

悪性リンパ腫の中で最も多いびまん性大細胞性B細胞リンパ腫は、R-CHOP療法などの1次治療で6~7割が治癒します。治癒しなかった再発・難治性悪性リンパ腫の治療は、かつてはなかなか有効な方法がありませんでした。

しかし、2019年に免疫療法のCAR-T細胞療法が保険適用となったことで大きく前進。2023年には、BiTE(バイト)抗体であるエプキンリが再発・難治の治療薬として承認され、CAR-T細胞療法以外の免疫療法が受けられるようになっています。

1次治療で治癒しなかった再発・難治性の治療は?

悪性リンパ腫は免疫に関わるリンパ系の組織から発生するがんで、大きくホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に分けられていますが、非ホジキンリンパ腫がほとんど(約90%)を占めています。その非ホジキンリンパ腫の中で最も多いのが、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLBCL)です。今回は、この病気の最新治療について紹介していきます。

まず、びまん性大細胞性B細胞リンパ腫の従来の治療について、都立駒込病院腫瘍内科部長の下山達さんは次のように解説してくれました。

「びまん性大細胞性B細胞リンパ腫に対しては、1次治療でR-CHOP療法や、Pola-R-CHP療法が行われ、この治療で6~7割ほどの患者さんは治癒します」

R-CHOP療法は、R:リツキサン(一般名リツキシマブ)、C:エンドキサン(一般名シクロホスファミド)、H:アドリアシン(一般名ドキソルビシン)、O:オンコビン(一般名ビンクリスチン)、P:プレドニン(一般名プレドニゾロン)の併用療法。

Pola-R-CHP療法は、Pola:ポライビー(一般名ポラツズマブ ベドチン)、R:リツキサン、C:エンドキサン、H:アドリアシン、P:プレドニンの併用療法です。R-CHOP療法のオンコビンを抗体薬物複合体(ADC)ポライビーに置き換えた組み合せです。

分子標的薬と細胞障害性抗がん薬を組み合わせたこれらの併用療法で治らなかった患者さんには、救援化学療法(サルベージ療法)が行われます。従来、より強い抗がん薬を組み合わせた治療が行われてきました。

「かつては、抗がん薬の量を増やせば治癒が期待できるとして、大量抗がん薬治療(自家移植治療)が積極的に行われた時代があります。しかし、それで治癒する患者さんはほんの一部でした。とくに1次治療後に、1年もたたずに再発するような悪性リンパ腫は、抗がん薬に対して抵抗性があるわけです。抗がん薬が効かない患者さんは、増量してがんばるより、免疫療法で治療したほうがよいのではないかと考えられるようになってきました。新しい免疫療法の臨床試験がたくさん行われ、CAR-T細胞(キメラ抗原受容体T細胞)療法やBiTE(バイト)抗体(二重特異性T細胞誘導抗体)の有用性が明らかになってきたのです」

2次、3次治療のCAR-T細胞療法の効果は?

まず登場したのがCAR-T細胞療法でした。患者さんのリンパ球(T細胞)を取り出し、そこにがん細胞を認識する遺伝子であるCAR(キメラ抗原受容体)を導入します。これを培養してから、患者さんの体に戻す治療です。

2019年にキムリア(一般名チサゲンレクルユーセル)が、2021年にはイエスカルタ(一般名アキシカブタゲンシクロユーセル)ブレヤンジ(一般名リソカブタゲンマラルユーセル)が日本でも使えるようになりました。1次治療、2次治療で治癒しなかった患者さんの3次治療として、CAR-T細胞療法を行えるようになったのです。そして、イエスカルタとブレヤンジは、その後、2次治療でも使えるようになりました。

「CAR-T細胞療法がよく効くかどうかは、腫瘍量が大きく関係します。腫瘍量が多いと、CAR-T細胞療法の効果が低くなることがわかっています。

もう1つは免疫の状態です。患者さんのリンパ球を利用する治療法なので、患者さんの免疫の状態がとても重要なのです。強力な抗がん薬治療を何度も行うと免疫力が低下し、CAR-T細胞療法ができない状態になってしまうこともあります。そこで、CAR-T細胞療法では、R-CHOP療法などの1次療法で治らなかった患者さんの場合は、なるべく早く免疫療法を行ったほうがよいのではないか、という考えが出てきました」(図1)

ただ、CAR-T細胞療法を望んだ人が、みんな治療を受けられるかというと、そうではありません。CAR-T細胞療法にたどり着けない理由はさまざまですが、最大の理由は、CAR-T細胞を作るのには時間がかかるため、治療を受ける前に病勢が悪化してしまうことです。

CAR-T細胞療法の対象となるのは、1次治療が効かなかった、2次治療の救援化学療法が効かなかった、自家移植後に再発した、といった人たちで、従来の治療法では余命はだいたい6カ月です。それに対し、CAR-T細胞は作るだけで約2カ月かかります。そのため、治療にたどり着く前に病勢が悪化して、治療ができなくなってしまうことが少なくないのです(図2)。

「スピードが大事です。すぐにCAR-T細胞療法に移行できるように、都立駒込病院のCAR-T外来では、病院間の連絡ネットワークを構築してあります。そして主治医の先生から再発の連絡をもらったら、すぐに対応できる体制を整えています。それにより、早い段階で治療を開始できる患者さんが、年々増えてきました」

CAR-T細胞療法を行える医療機関は徐々に増えていて、全国で52施設(2023年11月現在)となっています。キムリアを使える施設は最も多くて47施設。2次治療のCAR-T細胞療法ができる施設は、ブレヤンジで25施設、イエスカルタで7施設です(図3)。

「2次治療でCAR-Tができる施設が非常に少ないのが問題です。ブレアンジは25施設ありますが、始まったばかりで供給が十分ではありません。イエスカルタは、治療できるのが全国で7施設しかありません。こうした理由で、2次治療のCAR-T細胞療法は実際にはなかなか受けられない、というのが現状です。ただ、治療できる施設は、今後どんどん増えていくだろうと思います」

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