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CAR-T療法、二重特性抗体療法、さらにその先へ 進歩が続く多発性骨髄腫の最新治療

監修●石田禎夫 日本赤十字社医療センター血液内科部長/骨髄腫アミロイドーシスセンター長
取材・文●柄川昭彦
発行:2024年5月
更新:2024年5月

  

「初発時に強力に抑え込むため4剤併用を使うのは、世界的な流れになっています。もう1つは、再発・難治性多発性骨髄腫治療のCAR-T療法や二重特異性抗体療法を、初発で使えるようにしようという流れです」と語る石田さん

多発性骨髄腫の治療が急速に進歩し続けています。2022年にCAR-T療法が承認され、2024年3月には二重特異性抗体療法のエルレフィオが承認されました。免疫調節薬、プロテアソーム阻害薬、抗体薬という3系統の薬を使い切った再発・難治性多発性骨髄腫の患者さんに対し、優れた効果の治療を提供できるようになったのです。進歩が続く多発性骨髄腫の最新治療について日本赤十字社医療センター血液内科部長の石田禎夫さんに解説してもらいました。

まず使うのは免疫調節薬・プロテアソーム阻害薬・抗体薬

多発性骨髄腫(MM)の最新治療について解説してもらう前に、これまでの治療の歴史について、日本赤十字社医療センター血液内科部長で骨髄腫アミロイドーシスセンター長を務める石田禎夫さんに教えてもらいました。

「治療が急速に進歩するようになったのは、日本では2006年にベルケイド(一般名ボルテゾミブ)が承認されてからです。それまではアルケラン(一般名メルファラン)とステロイド薬のプレドニン(一般名プレドニゾロン)という飲み薬の併用療法(MP療法)だけ。1960年代から行われていた治療ですが、その頃の多発性骨髄腫の患者さんの生存期間は3年程度でした。ベルケイド以降、新規薬剤が次々と登場し、治療成績も改善していきました」(図1)

登場してきた新規薬剤は、免疫調節薬プロテアソーム阻害薬抗体薬という3系統に分類できます。免疫調節薬には、サリドマイド、レブラミド(一般名レナリドミド)、ポマリスト(一般名ポマリドミド)があります。

プロテアソーム阻害薬には、ベルケイド、カイプロリス(一般名カルフィルゾミブ)、ニンラーロ(一般名イキサゾミブ)があります。

抗体薬には、ダラザレックス(一般名ダラツムマブ)、エムプリシティ(一般名エロツズマブ)、サークリサ(一般名イサツキシマブ)があります。

免疫調節薬やプロテアソーム阻害薬に分類されたものは、同じ作用機序を持つため、それぞれまったく違う薬というわけではないため、1つの薬が効かなくなると、次に使う場合の同じ系統の薬も効かないということがあります。また、ダラザレックスとサークリサは標的とする抗原がCD38と同一であり、類似した作用機序を持っています。

「現在は新規薬剤2種類にデキサメタゾンを加えた3剤併用が、初発の標準治療となっています。1次治療で新規薬剤を2種類使い、再発したら2次治療でも新規薬剤2種類とデキサメタゾンの3剤併用療法を行うことが多いです。それが効かなくなったら、3次治療でも同じように3剤併用療法を行うことが多いです。ガイドラインには薬の組み合わせが何通りも出ていて、いかにもたくさんの治療法があるように思えますが、実際は1次治療から3次治療まで行うと、次に使う薬があまり残っていない、という状況になってしまうのが普通なのです」

数年前までは、この後に行う有効な治療法がありませんでした。3系統の薬が効かなくなった患者さんは予後(よご)が悪く、そこからの生存期間は1年未満という報告もあったほどです。

「CAR-T療法」と「二重特性抗体療法」が使えるようになった

そのような状況が変わったのは、2022年にCAR-T療法のアベクマ(一般名イデカブタゲン ビクルユーセル)が多発性骨髄腫の治療薬として承認されてからでした。CAR-T療法は、患者さんの体から取り出したT細胞に、腫瘍細胞の標的に結合する抗体の遺伝子と、T細胞を活性化させる遺伝子を入れ、それを増殖させたCAR-T細胞を患者さんの体に戻す治療法です。

アベクマの場合、標的は腫瘍細胞の表面に発現するBCMA(B細胞成熟抗原)です。体に入ったCAR-T細胞は、腫瘍細胞のBCMAに結合し、活性化されたT細胞が腫瘍細胞を攻撃します。

前治療が3レジメン以上で、3系統の新規薬剤の治療歴がある再発・難治性多発性骨髄腫の患者さんを対象とした臨床試験で、アベクマは81%という優れた奏効率を残しました。

「2022年1月に承認されたときは、3レジメン以上の治療歴がある患者さんが対象でした。しかし、2023年12月からは、前治療が2レジメンの患者さんにも使えるようになりました。適応が拡大され、1つ早い段階から使えるようになったわけです」

ただ、CAR-T療法には問題がないわけではありません。患者さんから採取したリンパ球を米国に送り、出来上がったCAR-T細胞が送り返されてきてから投与するため、リンパ球を採取してから実際に投与するまでに2カ月くらいかかってしまうのです(図2)。

「進行がゆっくりならいいのですが、進行の速い患者さんですと、その2カ月で病状が進んでしまうこともあります。そういう患者さんには、二重特異性抗体療法(BsAb)が行えるようになってきました」

再発・難治性多発性骨髄腫の新しい治療法として、CAR-T療法と並んで期待されているのが二重特異性抗体療法。2024年3月にはエルレフィオ(一般名エルラナタマブ)が承認され、治療で使えるようになっています。

二重特異性抗体のエルレフィオは、BCMAとCD3という2つの標的を持っている抗体です。皮下投与されて血中に入ると、片方の腕で腫瘍細胞に発現しているBCMAと結合し、もう一方の腕でCD3を発現しているT細胞と結合します。それにより、抗体として腫瘍細胞を攻撃するだけでなく、結合したT細胞にも腫瘍細胞を攻撃してもらうのです。

エルレフィオによる二重特異性抗体療法が行えるようになり、多発性骨髄腫の治療はまた1歩前進したことになります(図3)。

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