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骨転移の基礎知識 定期的な検査で症状の悪化を防ぐ

乳がん骨転移は段階的な治療のリレーで対応

監修●川井 章 国立がん研究センター中央病院希少がんセンター長/骨軟部腫瘍・リハビリテーション科外来医長
取材・文●伊波達也
発行:2015年4月
更新:2015年7月

  

「骨転移には、早期発見と適切な治療でQOLを保つことが大切です」と話す川井 章さん

乳がんは骨に転移しやすい。そのため多くの乳がん患者さんは、腰痛、膝痛などがあると、骨転移を疑って不安になりがちだ。骨転移とはどんな症状なのか、受診の目安は何か、骨粗鬆症との違いは何かなど、腫瘍専門の整形外科医に伺った。

がん患者の骨転移が増えている

図1 がん骨転移の原発巣別の頻度

全国骨腫瘍登録(2012)(日本整形外科学会/国立がん研究センター)2006~2012年の間に全国から登録されたがん骨転移6,493例の原発巣別の頻度

あらゆるがんは、昨今、がんの3大治療(手術・薬物療法・放射線)の進歩によって、生命予後が改善されてきている。しかし、その一方で生存期間の延長による他臓器への転移が増加しているという現状がある。中でも骨への転移は多く、がん種別では肺がん、乳がん、腎がん、前立腺がんなどに骨転移が多く見られる(図1)。

「乳がんの患者さんは、がん患者さんの中でも比較的元気な方が多く、PS(パフォーマンス・ステータス=全身状態)が良好な時期に骨転移が起こることが多い。QOL(生活の質)を保って過ごしていただくためには、骨転移に対する適切な診断と治療を受けることが大切です」

そう指摘するのは、国立がん研究センター中央病院稀少がんセンター長で、骨軟部腫瘍・リハビリテーション科外来医長の川井 章さんだ。川井さんは、骨軟部腫瘍、肉腫など、整形外科分野のがん治療を行う一方で、がん専門病院の性格上、あらゆるがんの骨転移症例の診断・治療にも数多く関わっている。

骨粗鬆症か骨転移か、不安なときは整形外科医も受診を

写真2 骨転移の種類

骨転移には、溶骨型と造骨型の2つのタイプがある。溶骨型とは、がんの転移部分の骨が欠損して、抜けたようになる状態だ。当然骨は弱くなり、痛みが生じたり、骨折しやすくなる。一方、造骨型は、がん細胞の何らかの因子によって、骨の形成が促進され硬くなる状態だ。また、溶骨型と造骨型が混合したように見える混合型というのもある。多くのがん骨転移は溶骨型だが、乳がんと前立腺がんは造骨型や混合型も多く見られるという(写真2)。

「乳がん骨転移の場合、最初から混合型の骨転移として見つかる場合もありますが、最初は溶骨型でも、ホルモン療法や化学療法、放射線療法などの治療によって腫瘍が死滅した結果、そこに骨が形成されて造骨型になることもあります」

では、どのようなタイミングで骨転移を疑って受診すればいいのだろう。とくに高齢の乳がん患者さんの場合は、骨粗鬆症の人も多く、区別がつけにくい。

「一般的に乳がんの骨転移が見られるのは、通常の骨粗鬆症による圧迫骨折が生じる年齢よりは、10~20歳ぐらい若い方が多いとされています。また、骨粗鬆症による痛みは、徐々に骨粗鬆症が進んでいた患者さんが、尻もちをついたとか、急な動きをしたとか、ちょっとしたエピソードによって急に腰が痛くなったというような経過が多い。これに対して、骨転移の痛みは、背中(脊椎)が数カ月の間にだんだん痛くなってきた、座っていると徐々に痛みが増悪する、1~2週間の安静によっても痛みが軽快しない、などの特徴がみられます」

おかしいと感じる痛みなどの症状が出たら、できるだけ早めに主治医に相談したほうがよい。とはいうものの、MRIなどの画像により診断しても、約8割の正診率ともいわれるため、コルセットや安静などの治療によっても軽快しない痛みが続く場合には、数カ月後に再検査を受けるなどの慎重な対応が勧められる。

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