がんになるポリープ、ならないポリープ
ポリープは病理検査で判断 がんになる危険性があっても早期治療が有効
大腸の臓器的な特徴に、ポリープががんになる可能性があることが挙げられる。胃などではほとんどないことだ。そして、すべての大腸ポリープに、がんになる危険性があるわけではなく、がんとは無縁のポリープもある。ポリープの良性・悪性の区別から治療までをレポートする。
ポリープとは一般的に 命に差し支えないものをさす
「ポリープは自覚症状がないときに見つかることが多いのですが、ポリープの段階ならばがんの可能性があっても治ります」大腸がんやポリープに詳しい東京慈恵会医科大学葛飾医療センター副院長の吉田和彦さんは早期治療の有効性を強調する。
大腸ポリープとは、「イボのような突起性の病変」の総称で、狭義で使い分けられることの多い「ポリープ」には「早期がん」も含まれる。早期より進行したがんは潰瘍状態になるのでポリープとは言わない。ポリープの種類から見てみよう(図1)。
ポリープは、大きく「腫瘍」と「腫瘍以外」に分類される。腫瘍は早期のがんと、がんではないが、がんになる危険性のある腺腫に分けられる。がんは「悪性の腫瘍」で、腺腫は「良性の腫瘍」とされる。
腫瘍以外のポリープには過形成によるポリープなどがある。これらはがん化の可能性はほとんどない。吉田さんは、「ポリープというと、過形成から早期のがんまで含まれます。ポリープはキノコのような形をしているものを指します。進行がんは大腸の壁に深く入り込んで潰瘍になりますが、ポリープの段階なら、悪性でがんがあっても突起の先だけです。粘膜の内にがんがとどまっている場合には転移しないので、100%治ります。しかし、粘膜下層1,000μm以上に深く浸潤している場合には、リンパ節転移の可能性が生じるので、周囲のリンパ節を含めた腸管の切除が必要になります。腺腫の一部はがん化する危険性がありますが、過形成など腫瘍以外のポリープががんになることはほぼありません。つまり、ポリープは、一般的には命には差し支えのないものをさすと言えます」と解説する(図2)。
図2 ポリープの進行とがんの模式図
便潜血を見逃さずに 2次検診もきちんと
次に、発見・診断の過程を見る。
企業や自治体などで行わる便検査が最初のきっかけになることが多い。「便潜血反応で見つかります。がんやポリープがあると、便が通り過ぎるときに擦れて出血し、陽性反応が出ます」
検査方法は、便にスティックを刺して便を付着させて採取する方法を2日行うことが一般的。1回でも陽性なら、2次検診として大腸内視鏡による検査を受けるというのが通常の流れだ。「痔のある方は、便潜血陽性でも痔のせいだと思い込んで次の検査を受けない方もいますが、痔の出血だけでなく、大腸からの出血が混じっていることもありえます。きちんと調べることを勧めています。逆に潜血があってもすぐにがんということにはなりません。『確かめてみましょう』というスタンスです」
2次検診は、以前はバリウムを注入してのX線検査が主流だったが、今は大腸内視鏡検査がそれにとって代わった。内視鏡検査ではカメラで直接腸管を診るとともに、ポリープがあった場合には診断のために病変部の組織を採取することが多い。
検査の負担も軽減 大腸内視鏡検査
内視鏡検査というと、検査を受ける側の肉体的な負担がしばしば指摘されるが、事前に腸を空にする処置法も進化しつつあるという。「検査前の準備も以前はたいへんで、2Lくらいの高張水を飲んでいましたが、1.5Lほどでも十分な洗浄が可能になりました。苦痛を伴うとされる内視鏡を肛門から入れての検査も麻酔で眠っている間に行われます」
内視鏡検査で採取された組織は病理検査に回される。「組織を取って顕微鏡で見る病理検査をすると、はっきりとポリープの種類が判別できます」。核の異型が強いか、構造異型があるかどうか……など専門的な知見に基づき診断される(図3)。
一方、ポリープでは、自覚症状がなく見つかるケースが多いが、病態が進むと症状が現れ始める。その時点で医療機関を訪れるケースもある。「大腸は約2mあります。S状結腸、直腸といった肛門に近い部分は、便を溜める機能があるので、そちらにがんがあると、出血したり、細くなったりといった直接目に見える変化に気づくことがあります。しかしそれよりも小腸側は症状が出にくい。しこりや便秘が症状として生じ得ますが、そういうときは進行大腸がんが存在する場合があります」
同じカテゴリーの最新記事
- 「積極的ポリープ摘除術」で大腸全摘の回避を目指す! 代表的な遺伝性大腸がん——リンチ症候群と家族性大腸腺腫症
- 切除可能な直腸がん試験結果に世界が注目も 日本の標準治療は「手術」で変わりなし
- ビタミンDの驚くべき効果がわかってきた 消化管がん手術後の再発・死亡リスクを大幅に減少
- 世界最大規模の画期的研究の一部解析結果が発表 大腸がんの術後補助療法の必要性をctDNAで判断する
- 初めての前向き試験で抗EGFR抗体薬の信頼性が確実に! 進化を続ける切除不能・進行再発大腸がんの薬物療法
- 遺伝子変異と左右どちら側にがんがあるかが、薬剤選択の鍵を握る! 大腸がん薬物療法最前線
- 化学放射線と全身化学療法を術前に行うTNT療法が話題 進行下部直腸がん 手術しないで完治の可能性も!
- 肛門温存の期待高まる最新手術 下部直腸がんTaTME(経肛門的直腸間膜切除術)とは
- 大腸のAI内視鏡画像診断が進化中! 大腸がん診断がより確実に
- 患者さんによりやさしいロボット手術も登場 新しくなった大腸がんの手術と薬物療法