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分子標的薬を含む新薬の登場で生存期間は2倍に
よりよい生活を目指して進行大腸がんの分子標的治療

監修:朴 成和 聖マリアンナ医科大学腫瘍内科教授
取材・文:柄川昭彦
発行:2012年2月
更新:2013年4月

  
朴成和さん 化学療法の専門家である
聖マリアンナ医科大学の
朴成和さん

アバスチン、アービタックス、ベクティビックス。この3種類が、大腸がん治療の分子標的薬だ。
従来の抗がん剤治療に併用することで、切除不能進行大腸がんの生存期間を延ばしている。
治療方法が確立するなか、これらの分子標的薬がそれぞれの患者さんの治療にどのようにかかわるのか整理してみよう。

3種の分子標的薬が使えて生存期間が延長

[分子標的薬治療の効果(全生存率)]
(KRAS野生型に対するセツキシマブ使用の1例)

分子標的薬治療の効果(全生存率)

(CRYSTAL試験とOPUS試験の統合解析より一部改変)

現在、わが国で大腸がんの治療に使用できる分子標的薬は3種類ある。2007年にアバスチン()が承認されたのを皮切りに、08年にはアービタックス()、10年にはベクティビックス()が承認されている。この状況について、聖マリアンナ医科大学教授の朴成和さんは次のように説明する。

「かつてはドラッグ・ラグ()の問題が指摘されていましたが、ベクティビックスが承認された時点で海外に追いつきました。現時点では、ドラッグラグはなく、日本でも世界標準の薬を使える状況になっています」

大腸がんの化学療法は、今世紀に入り急速に進歩してきた。90年代までは5-FU()による治療が行われていたが、手術できない大腸がんの場合、生存期間中央値()は12カ月ほどだった。

「その後、FOLFOX療法()、FOLFIRI療法()、XELOX療法()が登場することで、生存期間は大幅に延び、さらに分子標的薬の登場で、生存期間中央値は24カ月に達しています。生存期間が2倍になったというのは、大きな進歩ですね」

アバスチン=一般名ベバシズマブ
アービタックス=一般名セツキシマブ
ベクティビックス=一般名パニツムマブ
5-FU=一般名フルオロウラシル
ドラッグラグ=新薬の承認に時間がかかり、海外で承認・使用されている薬が、治療に使えるようになるまでに遅延が生じること
生存期間中央値=生存している人を長い順に並べてちょうど真ん中にいる人の生存期間のこと
FOLFOX療法=フルオロウラシル+ホリナートカルシウム+オキサリプラチン
FOLFIRI療法=フルオロウラシル+ホリナートカルシウム+イリノテカン
XELOX療法=オキサリプラチン+カペシタビン

血管新生を抑えることでがんの増殖や転移を防ぐ

[大腸がんの分子標的薬の作用パターン]

抗EGFR抗体薬 血管新生阻害薬
セツキシマブ
パニツムマブ
ベバシズマブ
上皮細胞増殖因子(EGF)の受容体に結合し、がん細胞の増殖を促進するシグナルが出ないようにする。KRAS遺伝子に変異のないKRAS野生型の人にのみ使える がんが増殖するための血管新生を促す血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に結合・無力化し、がん細胞の血管新生を抑える。また、がん組織の血管を正常化する作用もある
抗EGFR抗体薬 血管新生阻害薬

アバスチンは、血管新生阻害薬というタイプの分子標的薬である。がんは増殖するのに豊富な栄養を必要とするため、がん細胞周辺に新たな血管がつくられる(新生血管)。アバスチンは血管内皮細胞増殖因子(VEGF)に結合し、これを無力化することで血管新生を抑える。

「血管新生を抑えるのに加え、がん組織の血管を正常化する作用もあります。これによってがんの組織内圧が下がり、抗がん剤が行き渡りやすくなるとも言われています」

アバスチンは、従来の抗がん剤と併用することで効果が高まるため、併用で使われる薬となっている。

副作用としては、出血、消化管穿孔、血栓症、高血圧、たんぱく尿などがある。重篤な副作用が起こる可能性は低く、数パーセント以下であり、消化管穿孔などは1~2パーセントだという。ただし、こうした副作用が起こる危険性があることを、患者さんが知っておくことは大切だ。

「血栓症が起きやすくなるため、過去に心筋梗塞や脳梗塞を経験した患者さんには、原則としてアバスチンは使いません」

このように例外もあるが、基本的にアバスチンは幅広い患者さんに使われている。

よく似た働きをする2つの分子標的薬

アービタックスとベクティビックスは、よく似た働きをする。どちらも上皮細胞増殖因子の受容体(EGFR)に結合し、その因子から増殖を促進するシグナルが出ないようにする。

それによって、がんの増殖を抑えるわけだ。

「この2つはどちらも抗体薬ですが、アービタックスはキメラ抗体、ベクティビックスは完全ヒト抗体という違いがあります」

人工的に作り出した抗体薬は、マウス由来たんぱく質の割合によって、数種に分けられる。アービタックスは、マウス由来たんぱく質を含んでいる(キメラ抗体)が、ベクティビックスは、すべてがヒト由来たんぱく質(ヒト抗体)なのだ。

マウス由来たんぱく質が多いと、体に入ったときにアレルギー反応が起こることがある。それを防ぐため、アービタックスを投与するときには、アレルギー反応を抑える薬を先に投与する必要がある。

「アービタックスとベクティビックスの効果については、両者を比較する臨床試験が現在進行中です。

いずれ結果が出ますが、現在のところ差は明らかになっていません。違いがあるのは、アービタックスが毎週投与で、アレルギーを防ぐ前投薬が必要なのに対し、ベクティビックスは2週ごとの投与で、前投薬も不要だという点でしょう」


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