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西洋型の食事は、大腸がんを再発させやすい

監修:石川秀樹 健保連大阪中央病院消化器科部長
取材・文:増山育子
発行:2007年12月
更新:2013年9月

  

大腸がんの食事常識のウソ。食物繊維の摂りすぎは、大腸がんを促進するかもしれない

石川秀樹さん 健保連大阪中央病院
消化器科部長の
石川秀樹さん

がんのなかでも、大腸がんは、食事と関係が深いと言われてきた。

ところが、今まで大腸がんにならないようにするための食事の研究は多くされてきたが、大腸がんになった人がどんな食事を摂ったらいいのかについては、まだよく分かっていない部分が多い。

しかし、最近、食物繊維や乳酸菌などの研究により少しずつ解明されつつある。

再発よりも、新しいがんに注意

大腸がんは、切除が可能なものならば治癒率は75パーセントを超える、治りやすいがんだ。早期に発見・手術できれば、再発をそれほど恐れることはない。

ただ、大腸がんの手術をしても大腸の大半は残っているわけだから、そこに新しいがんができるという懸念はある。

「大腸がんの治療をした人は、再発しなくても、新しい場所に、新たな大腸がんができる可能性が普通の人より2.01倍も高い」と、健保連大阪中央病院消化器科部長の石川秀樹さんは注意を促す。

「1度大腸がんになった人は、再発の心配のない早期のがんでも安心せずに、新しいがん予防のために、がんになりにくい食事をこころがけるといいでしょう」

ステージ3の結腸がん患者の食事と再発

[結腸がんと脂肪摂取量の関係]
図:結腸がんと脂肪摂取量の関係
[西洋型食事は大腸がんを再発させやすい]
イラスト:西洋型食事

「がんになりやすい食事」「なりにくい食事」という情報は溢れるほどありますが、再発を防ぐ食事となると、ほとんど見当たらないのが現状だ。

そんななか、2007年8月にアメリカの内科学会誌で、結腸がんでステージ3の人たちの食事と再発について調べた研究結果が発表された。

これによると、ステージ3の結腸がん患者1009人の食事内容を「西洋型の食事」(精製された穀物、赤味肉、高脂肪乳製品、フライドポテト、デザートの摂取量が多い)と「節度ある食事」(果物、野菜、鶏肉、魚の摂取量が多い)という2パターンに分けて5年間調査してみると、もっとも典型的な西洋型の食事の人は、節度ある食事の人とくらべて再発しやすい、という結果だった。

大腸がんはがんのなかでも食生活との関係が深いことが知られており、とくに肉類が大腸がんの危険因子であることは確実だ。

この論文から石川さんは「ステージ3という、進行して再発の危険のあるがんになった人では、大腸がんの発生を促進するような西洋型の食事をしていると、再発もしやすいということがいえます。再発も、新しくできるがんも防ぐためには、どちらも西洋食は控えめがいいということです」と指摘している。

日本の食卓、「和食」は合格点

赤身肉を控える

[大腸がんには伝統的な和食がよい]
イラスト:大腸がんには伝統的な和食がよい
豚肉・牛肉1に対して魚2を基本にした和食

「お肉メインの食事は改善していく必要がありますが、和食は世界的に見てかなり良い食事です。今の和食を中心に少しだけ気をつければいいのです」

具体的に見てみると、まず「赤身肉」(レッドミール)を適量にします(摂取の目安は1日80グラム)。赤身肉というのは「霜降りではない安価な肉」のことではなく、豚牛羊のこと。メインのおかずに好まれる肉類だが、鶏肉または魚を中心に食べることが良策。「豚肉・牛肉1に対して魚を2」を基本に考える。

炭水化物

穀類、イモ類、豆類はしっかり食べる。

お米や小麦は、玄米やふすまの入っているものを食材の1つとして加えるのも良い。

緑黄色野菜に限らず野菜全般を

[野菜と果物に含まれるがん予防が期待される物質]

カロテノイド ジチオシオ
アスコルビン酸 グルコシノデート/インドール
トコフェロール フィチン酸
セレン イソフラボン
葉酸 クマリン
食物繊維

野菜はこれまでは「食物繊維が多いからいい」と考えられていた。しかし昨今、大腸がんと食物繊維は思っていたほど関係がない可能性が出てきた。最近は野菜に含まれる抗酸化物質やがんの抑制物質などが注目されている。

野菜が大腸がんのリスクを下げることはよく知られているが、気をつけたいのは「たくさん食べたら食べるほど効果が上がるというわけではない」ということだ。

「野菜をまったく食べないと大腸がんのリスクがアップします。2日間くらいまったく野菜を食べない人は、ぜひ野菜を食べてほしいのですが、普通に和食を食べている人は、献立にたいてい野菜が入っているので、そのうえにさらに野菜を食べても大腸がん予防にはなりません」

野菜というと、ほうれん草や人参など色の濃い野菜が望ましいと思いがちだが、白菜やネギなど色の淡い野菜も含めて、全体的に食事に取り入れるのがいいようだ。

植物性脂を避ける必要はない

動物性の脂はともかく、植物性の脂まで神経質に控える必要はない、と石川さんは言います。

「リノール酸がよくないというイメージが強く、殊更に避けているという人がおられますが、リノール酸は必須脂肪酸であり、体に必要ですから、極端に減らすのはよくありません」

オリーブ油は大腸がんに関しては決して悪くなく、オリーブ油を使うイタリア料理は貝や魚、野菜のメニューも多いので、取り入れるのも一案。

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