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CVポート&ポンプを駆使した抗がん剤治療の長所と短所
「ながら」化学療法を受ける新時代の生き方

監修:三嶋秀行 国立病院機構大阪医療センター外科医長
取材・文:柄川昭彦
発行:2007年9月
更新:2013年4月

  
三嶋秀行さん 国立病院機構大阪医療センター
外科医長の
三嶋秀行さん

大腸がんの治療といえば、昔は手術しかなかった。しかし、ここ数年で大腸がんの治療は抗がん剤の飛躍により大きく変わってきた。とりわけ抗がん剤を持続的に注入するCVポートとポンプを導入することによって、患者さんは入院による治療から解放され、普通の日常生活を送りながら治療を受けられることになった。


治療の選択肢が広がった大腸がんの化学療法

大腸がんの化学療法が、ここ数年で大きく変わってきた。次々と新たな併用療法が登場し、わが国のガイドラインでも、進行再発がんに対して、FOLFOXやFOLFIRIといった新しい多剤併用療法が標準治療とされている。また、今年に入って、分子標的薬のアバスチン(一般名ベバシズマブ)が承認され、ますます治療の選択肢が広がった。FOLFOXやFOLFIRIとの併用が可能になり、併用することで、さらに生存期間を延長することができるようになったのである。

「大きく変わるきっかけになったのは、5-FU(一般名フルオロウラシル)の持続投与を取り入れたFOLFOXとFOLFIRIという治療法が開発されたことです」

と、大腸がんの化学療法に詳しい大阪医療センター外科医長の三島秀行さんは言う。

FOLFOXは、5-FUの急速静注+持続投与に、レボホリナートとエルプラット(一般名オキサリプラチン)を加えた多剤併用療法。FOLFIRIは、5-FUの急速静注+持続投与に、レボホリナートとカンプトまたはトポテシン(一般名イリノテカン)を加えた多剤併用療法だ。

持続投与するための画期的な方法も開発され、小型のポンプを持ち運ぶことにより、家庭で抗がん剤の持続投与ができるようになった。こうして、普通に生活しながら、仕事をしながらの「ながら」化学療法が可能になったわけだ。

[mFOLFOX6の投与スケジュール]
図:mFOLFOX6の投与スケジュール

[FOLFIRIの投与スケジュール]
図:FOLFIRIの投与スケジュール

5-FUの持続静注が大きな効果をもたらした

FOLFOXとFOLFIRIは、共に5-FUを大量短期間持続静注するのが特徴だ。FOLFOXには、いろいろな投与方法があるが、どれも5-FUを「急速+持続投与」することになっている。現在よく行われているのは、46時間持続投与する方法で、多くは外来で行われている。FOLFIRIでも、5-FUは急速投与と46時間の持続投与を行うことになっている。

この持続投与によって大きな効果がもたらされたのだが、持続投与はどうして効果的だったのだろうか。

「5-FUは代謝拮抗剤といって、代謝を止める薬なので、高濃度で長く効かせるほうが効果的なのです。持続投与だと副作用が出にくいので、2週間のうちの46時間だと今までの常識では考えられないほどの量を投与することができます。それが大量短期間持続投与で効果があった大きな理由と考えます」

日常生活を送りながら5-FUの持続投与

46時間持続投与が必要なFOLFOXやFOLFIRIを外来で行うには、特殊な機器が必要になる。薬を少しずつ送り込むためのポンプと、ポンプから送られてくる薬を静脈に送り込むために皮下に埋め込むCV(Central Venous)ポート(リザーバー)だ。標準治療を支えるための新しい医療機器だ。

ポンプは携帯型の小型ポンプで、ゴム製のバルーン(風船)の中に薬液を入れるようになっている。バルーンがしぼむ力を利用して、薬液を一定の速度で体内に注入する仕組みだ。バルーンのしぼむ力を利用するため、バッテリーは必要ない。注入時間の誤差はあるが、プラスマイナス10パーセント程度。充填された薬剤は取り出すことができないため、薬が不正に変更されたりする危険性は低い。

CVポートは皮下に埋め込む親指の頭大の円柱状の器具。中央部にシリコンゴムでできた容器があり、体外から針を刺して、この容器に薬剤を注入する。ここから細いカテーテルが出ていて、上大静脈に薬液が送られるようになっている。

写真:皮下埋め込み型のCVポート

抗がん剤を注入する皮下埋め込み型のCVポート。CVポートとポンプはこのように設置される。特別なケアの必要性はないという

CVポートは、前胸部か上腕部の皮下に埋め込む。基本となるのは前胸部で、鎖骨の下から中心静脈にカテーテルを差し込むことになる。この方法だと、気胸や血胸などの合併症を起こす危険性があるし、第1肋骨と鎖骨でカテーテルが断裂する危険性もある。ただし、これらの危険性は、血管穿刺時にエコーを使って外側から挿入することで、減少させることが可能だ。

上腕に埋め込んだ場合には、カテーテルが長いので、血栓ができる可能性が少し高くなる。また、片手しか使えないため、自分で抜針しにくいという欠点がある。ただし、気胸、血胸、カテーテルの断裂などの危険性はほとんどない。

「針を刺すときに胸部を露出したくないという患者さんは、上腕部に埋め込めばいいでしょう。半そでシャツを着るときに見えるのがいやだという患者さんなら、前胸部にすればいいのです。美容的な観点や、患者さんのライフスタイルを考慮することが可能です」

CVポートの埋め込みは、入院で行う医療機関もあれば外来で行うところもある。大阪医療センターでは、外来で行っている。

写真:皮下埋め込み型のCVポート

抗がん剤を注入する皮下埋め込み型のCVポート。皮膚の上に設置した状態

写真:抗がん剤を少量ずつ送り出すポンプ

抗がん剤を少量ずつ送り出すポンプ。中にゴム製のバルーンがあり、この中に抗がん剤を入れる

写真:皮下埋め込み型のCVポート。皮下に埋め込んで内部から見た状態

皮下埋め込み型のCVポート。皮下に埋め込んで内部から見た状態


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