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外来化学療法:ポイントは自己管理! 治療と副作用への理解が外来化学療法成功へのカギ

監修●朴 成和 聖マリアンナ医科大学腫瘍内科教授
取材・文●伊波達也
発行:2013年6月
更新:2019年10月

  

「パターンを知ることで、不安感は払拭できます」と朴 成和さん

がんの化学療法は、医療の進歩や患者さんの意識変化など、さまざまな要因から外来治療で行われることが多くなっている。大腸がんでも同様だ。ただ、外来化学療法を受けるにあたり、患者さんが注意しなければならない点がある。

外来化学療法は患者さんのQOL向上にメリット

■表1 外来化学療法のポイント

治療の目的・効果
治療のスケジュール
副作用の特徴
急変時の対応
精神的ケアの対応

がんのなかでも、急速に患者数が増えている大腸がん。その大腸がんに対する化学療法は目覚ましく進歩している。分子標的薬が処方できるようになり、多剤併用療法による薬物のさまざまな組み合わせ(レジメン)の選択肢が増えたことにより、術後の治癒率は向上し、切除不能な進行・再発がんの場合の延命効果も向上している。

そんな化学療法は、昨今、入院せずに受けられる外来化学療法が主流になっている(表1)。

「現在、手術後の補助化学療法、切除不能・進行再発がんの患者さんのいずれについても、ほとんどの患者さんに対して外来化学療法を実施しています。とくに、術後の補助化学療法を受ける患者さんは体力的に元気な方が多いです。入院が必要なほどの重篤な副作用が出る人は、20人に1人以下ですので、外来で十分に対応できます。一方、切除不能・進行再発がんの患者さんの場合でも、できるだけ普段に近い時間を少しでも長く送るためには、外来化学療法は適しています。延命のみならず患者さんのQOL(生活の質)の点からも、自宅からの通院で治療を受けるほうが患者さんにとってはよいからです」

そう話すのは、聖マリアンナ医科大学腫瘍内科教授で同大学病院腫瘍センター長の朴成和さんだ。朴さんらは、腫瘍センターという抗がん薬治療の専門家チームとして化学療法に従事している。

そこで、患者自身がどのような点に留意すればいいかを、アドバイスしてもらった。

「一番大切なのは自己管理です。自己管理は治療を決めるところから始まります。そして治療中の生活、副作用対策などについてきちんと把握し、対応していくことが大切です。そして、いかに円滑に治療を進めながら日常生活を送っていくかを考えてください」

チーム医療を実践する施設での治療がおすすめ

■写真2 聖マリアンナ医科大学病院の外来化学療法室療法室のある腫瘍センター内にがん相談支援センターもある

治療に先立って、患者さんが考えるべきことは、最適な治療を安心して受けられる施設を選ぶことだ。

「診療体制が整っている施設とは、化学療法について専門的な知識を持った人が、職種を越え集結してチーム医療を実践しているところです。外来化学療法室のような形で、1カ所に多種職からなる診療チームが配備されているのが理想的です」

これは、治療前の準備から治療が終わるまでの流れのなかで、起こりうるあらゆる事態に迅速に対応できるためだという。

同腫瘍センターの場合、約30ベッドが用意され、化学療法を導入する際には、担当医の説明以外に薬剤師からの説明がある。治療における必要事項、副作用の自己管理などについては看護師も入り、それから治療が始まる(写真2)。

「私たちはCDTM(共同薬物治療管理)というシステムを実践しています。これは特定の薬剤や副作用に対して、対処法についてのプロトコル(治療計画書)を決めて、薬剤師が先に診察して、副作用管理に必要な代行処方までしてそれを申し送りするシステムです。当院では今のところ臨床試験として導入しています。たとえば、アービタックスやベクティビックスの副作用である皮疹に対して、予防から悪化したときの対応についてまで、プロトコルを作って、薬剤師が患者さんに対する最初の指導から毎回の診察を行い、必要な処方をし、私たち医師は診察時にそれをチェックし、最後に看護師が自己ケアを指導するという流れです」

これはほんの1例だが、外来化学療法は、医師以外の医療スタッフも積極的に診療現場に関わり、患者さんを支援するチーム医療が大切だ。これにより、きめ細かな副作用対策が可能となる。しかし、実情はチーム医療とは名ばかりで医師からの上意下達の場合も多い。普段からチーム全体が知識や価値観を共有して、信頼関係のもとにチーム医療を実践することが重要だ。

アービタックス=一般名セツキシマブ ベクティビックス=一般名パニツムマブ

医師の説明を理解納得し、前向きに受けるべき

次に、治療を決めるために必要な情報収集だ。化学療法を受けるにあたっては、治療に対する説明をよく理解して、治療を受けるべきかどうかを判断すべきだ。

「受ける治療は最善の治療(標準治療)か」「治療、治療効果、副作用について理解できたか」「急変した場合の対応は万全か」「精神的・社会的支援はあるか」などの項目について確認しておきたい。

「補助化学療法の患者さんの場合は、化学療法を受けることに躊躇する人が初回の説明では3~4割はいます。手術でがんを取り切ったといわれると、補助化学療法の意義がわからない患者さんもいます。ですから、その点について医師の説明をじっくり聞いてください。再発率を下げ、生存率を延ばすという科学的根拠が世界で認められている治療です。

ただ、医療側は治癒率の向上や効果を第1に考えておすすめしているので、副作用などを含めて提案された治療を受けるかどうかを決めるのは患者さん本人です。説明に納得して前向きな気持ちで治療に臨むことが望まれます」

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