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食道がんは経鼻内視鏡で頭頸部の検査を! 隣接する胃や頭頸部などに重複することが多い

監修●川田研郎 東京医科歯科大学消化管外科学分野講師
取材・文●伊波達也
発行:2017年10月
更新:2020年2月

  

「経鼻内視鏡の検査により少しでも多くの人が食道がんと他臓器重複がんを早期発見・早期治療により克服できることが大切です」と語る川田研郎さん

食道がんは,胃がんや大腸がんなどと比べ難治がんの1つとしてあげられる。また、胃や頭頸部などの他臓器にも重複することが多いがんでもある。そこで、重複することに注目して経鼻内視鏡で治療成果をあげてきた専門医に伺った。

周辺の他臓器にもがんが発症しやすい特徴

食道がんは、進行すると頸部、胸部、腹部の3つの領域にリンパ節転移を来すため、体の負担が非常に大きな手術が必要となり、また根治(こんち)が難しいがんの1つだ。近年は鏡視下による侵襲を抑えた手術や化学放射線療法などがあるが、食べ物を通過させる臓器という性質上、患者の予後(よご)のQOL(生活の質)に大きく関わる。

そんな食道がんのもう1つの大きな特徴が、周辺の他臓器(頭頸部、胃ほか)にもがんが発症しやすいという点だ。他臓器重複がんという。

他臓器重複がんは、食道がんと同時に発症する同時性、食道がんよりも先行して発症するもの、または食道がんの治療が終わった後から発症する異時性がある。

このうち食道がんよりも後から生じる異時性は、5~10年後に発症するケースもあるので注意が必要だ。これらのがんは食道がんに関連した転移とは異なるものだ。

「食道がんはfield cancerization(領域発生:複数の領域にまたがって広く発がんする現象を有するがん)とも呼ばれ、これには口腔から咽頭(いんとう)、喉頭(こうとう)、食道が同じ扁平上皮(へんぺいじょうひ)という上皮組織であることが大きく関わっています。扁平上皮は表面が亀の甲羅のようになっていて、安全に食べ物を胃へ送り届ける役割を担っています」

そう説明するのは、東京医科歯科大学医学部附属病院食道外科講師の川田研郎さんだ。川田さんは食道外科医だが、食道がんに対する内視鏡下治療および、他臓器重複がんの内視鏡下治療に数多く携わっている。

「2大重複がんは、胃がんと頭頸部がんです。日本人はもともと胃がんを発症する方が多いので、食道がんと胃がんの重複は多いのですが、胃は食道と異なる腺上皮です。先述したように同じ扁平上皮である頭頸部のがんが重複するケースが多く見つかっています。とくに食道のすぐ上流である下咽頭、中咽頭のがんは多いです」(川田さん)

20年ほど前、1990年代後半の川田さんらのデータでは、食道がん患者の10人に1人くらいが咽頭のがんを重複していたという。しかし近年では検査の精度が上がったことと関連症例が同院に数多く集まることもあり、食道がん患者の4割は頭頸部がんを発症し、頭頸部がん患者の4割が食道がんを発症している状況だ。

その中でも下咽頭、中咽頭、口腔底がんの患者が食道がんを重複する比率は5割を占める。また食道がんの4人に1人が下咽頭がん、10人に1人が中咽頭がんで非常に関連が深いことがわかってきた(図1)。

多飲酒の人での発症リスク高い

「1990年代では、食道がんの手術を受けて根治(こんち)したものの、後から頭頸部の進行がんが見つかって亡くなってしまうケースもありました。しかし現在では、食道がん、頭頸部がんどちらかを発症している人は、他臓器重複がんの発症を予測して検査をするべきであることは、もはや常識となっています」(同)

現在は発症していないが、将来的に食道がん、頭頸部がんを発症する危険性があるのは多飲酒の人だ。

「お酒が好きでずっと飲酒を続けている人は要注意です。日本人のタイプとしてお酒がすごく強い人、全く飲めない人、お酒を少し飲めるが赤くなる人、大きく分けると3つに分類できます。全く飲めない人は飲まないのでリスクは少ないです。お酒が強くて多量に飲む人はもちろんリスクがありますが、心配なのが飲むと赤くなる人です。これらの人は、アルコールを分解する酵素の能力が弱い遺伝子の型をもっているため、お酒に弱いのに飲みすぎると食道や頭頸部に障害を生じる危険が高いのです」

この分類により自分がハイリスクのタイプに入ると自覚する人で、とくに男性は、55歳を過ぎたら一度は検査を受けるべきだと川田さんは強調します。

「がんをごく早期で発見できて、粘膜に留まっていれば、ESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)での治療だけで根治が見込めます。

近年はがんの深さに問題がなければ、がんがぐるりと食道の筒全周にわたるような大きながんでも内視鏡での治療が可能です。ステロイドを併用するなどによって、食道狭窄(きょうさく)の後遺症を防げるようになったためです。あるいは、例えば同時性で下咽頭がんが見つかった場合には、同様に内視鏡で治療できます。また、一度粘膜がんで治療を受けた人は、定期的に内視鏡検査を受け続けることで進行がんになることを防げます」

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