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肺がんの基礎知識 自分の肺がんのタイプを理解する 肺がん丸わかり基礎

編集●「がんサポート」編集部
発行:2016年3月
更新:2018年11月

  

肺がんは大腸がんに次いで2番目に罹患数の多いがん。そして死亡数では全てのがん種の中で最も多い。呼吸器ということで他の臓器にはない独特な症状があり、それに応じた治療、管理も必要となる。肺がんの特徴、診断、治療について基本的な情報をまとめた。

肺の仕組みを教えて!

図1 肺の構造とがんの発生部位

肺は、外界の空気を扱う〝貿易港〟です。呼吸によって空気を吸い込み、その空気から酸素を体内に取り込み、その代わりに二酸化炭素を体外に吐き出す役割を持っています。

口や鼻から入った空気は、咽頭、喉頭を経て気管を通り、左右の肺に分かれたあと、気管支という左右の管に分かれて肺に入ります。そしてさらに細分化して最後には酸素と二酸化炭素の交換を行う肺胞にたどり着きます。

肺胞は小さな袋のようなもので、その数は成人で2億~7億個ともいわれています。肺胞の周りには毛細血管があって、酸素と二酸化炭素の交換を行っています(図1)。

肺がんとは?

肺がんとは、肺の気管、気管支、肺胞の細胞ががん化してしまったものです。進行するにつれて周りの組織を破壊しながら増殖し、血流やリンパの流れを介して全身に広がります。

肺がんは喫煙との関係が非常に深いことが長く指摘されていますが、たばこを吸わない人でも発症することがあります。

肺がんは増えているの?

肺がんは日本人のがんによる死亡原因のトップで、今後も増加する傾向にあります。国立がん研究センターが2015年4月に公表した2015年の予測では、肺がん罹患数は約13万4,000人で、大腸がんの約13万6,000人に次いで2番目です。そして死亡数となると約7万7,000人で、大腸がんの約5万1,000人を大きく引き離して1番となっていました。すべてのがん死亡数が約37万人だけに、およそ2割を占めていることになります。

経年変化でみると、罹患数、死亡数ともに右肩上がりで増えていますが(図2)、これにはグラフだけでは分からない背景があります。

図2 がんの動向(罹患数、死亡数の年次推移:男女計)

(国立がん研究センターがん対策情報センター)

肺がんの増加は、肺がんになるリスクが上がったからではなく、人口全体の高齢化が原因なのです。罹患率、死亡率ともに40歳代後半から増加し始め、高齢ほど高くなります。

肺がんになりやすい人は?

肺がんは、肺の細胞の遺伝子が変異することで発生します。変異の原因には様々なことが考えられますが、代表的なものが喫煙と受動喫煙です。

ただ、欧米よりは喫煙が原因となる率は低いというデータがあります。国立がん研究センターによると、欧米では喫煙者の肺がんリスクは非喫煙者の20倍以上とされていますが、日本人を対象とした研究では男性で4.8倍、女性で3.9倍という結果でした。欧米では、肺がんの発生原因の90%がたばことされていますが、日本では男性で69%、女性では20%程度と推計されています。

一方で、受動喫煙があると、罹患率が20~30%程度高くなると推計されています。

肺がんの症状は?

治りにくい咳、血痰、胸痛、呼吸時のゼーゼーという音、息切れ、声のかれなどがあります。とはいえ、これらの症状が出たからといってすぐに肺がんというわけではありません。他の病気の症状であることも多くあります。

一方で症状がほとんどない場合も多く、早期発見には継続的な検診が大切になります。喫煙歴のある40歳以上の人はとくに注意が必要となります。

肺がんの検査と診断を教えて!

(1)通常検査

肺がんの検査法として効果が認められているのは、「胸部X線検査」と喫煙者が対象となる「喀痰細胞診」です。「喀痰細胞診」は単独では行わず、X線検査と合わせて行われます。喫煙者として検査対象となるのは、喫煙指数(1日の本数×年数)が400以上の人です。

(2)精密検査

胸部X線検査の約3%、喀痰細胞診の約1%で「精密検査が必要」という判定が出ます。精密検査では、病変が疑わしい部位をCT(コンピュータ断層撮影)で詳しく診ます。気管支鏡検査というのもあり、気管支鏡を口から気管支に挿入して、病変が疑われた部位を直接観察します。必要に応じてCTガイド下によって細胞を直接採る検査(生検)や、十分な組織が採取できなかった場合や、胸水が溜まっている場合などに行う胸腔鏡を挿入しての検査もあります。

確定診断がついたら、MRI(磁気共鳴画像)、骨シンチグラフィ、PET(陽電子放射断層撮影)などによりさらに詳しく調べ、病期も確定します(図3)。

図3 肺がんの診断と治療法の決定

(3)遺伝子検査

がん細胞の遺伝子にどのような異常(変異)が起きているのかを調べる検査です。特定のがん遺伝子に効果のある薬(分子標的薬)を使うことができるかどうか調べるために行います。

どのように進行を判断するの?

がんの進行度は、がんの大きさと浸潤の程度を示すT因子、リンパ節転移を示すN因子、遠隔転移を示すM因子をそれぞれ分析し、組み合わせることによって判断されます。これをTNM分類といいます。

転移がみられないときはⅠ(I)期、限られたリンパ節のみに転移があるものはⅡ(II)期、がんのある同じ肺の縦隔に転移があるものはⅢ(III)A期、反対側に転移したり食道や気管にがんの浸潤が認められるものはⅢ(III)B期、肝臓や骨などに転移した場合はⅣ(IV)期となります(表4)。

表4 肺がんの病期

(国立がん研究センターHPより、一部改変)

播種=がんが直接広がるのではなく、ばらまかれたように広がること
悪性胸水=胸水の中にがん細胞がみられること

「組織型」って何?

肺がんは組織型により4つに分類されます。まず、小細胞がんと非小細胞がんの2つに大きく分けられます。小細胞肺がんは、肺がんの約15~20%を占め、増殖が速く、脳・リンパ節・骨などに転移しやすい悪性度の高いがんですが、非小細胞肺がんよりも抗がん薬や放射線治療の効果が得られやすいという特徴もあります。

非小細胞肺がんは、さらに腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんに分けられます。発生しやすい部位、進行速度、症状などはそれぞれ異なり、手術を中心とした治療が選択されます(表5、図6)。

表5 肺がんの分類

(国立がん研究センターHPより)
図6 組織型別、臨床病期別にみた肺がんの治療方針(TNM分類改訂後 [2010年1月]の治療方針)

遺伝子型について教えてください

非小細胞肺がんのうち、扁平上皮がんでないものはさらに、遺伝子変異の違いにより分類できます。現在はEGFR遺伝子とALK遺伝子の変異がわかっています。それぞれに特化した分子標的薬が次々に開発され、治療成績が上がっています。肺がんにみられる遺伝子変異はほかにもあり、MET、RET、ROS1などの遺伝子について研究が進められています。

治療はどのように行われますか?

●外科療法(手術)

がんの場所や広がりによって、がんが含まれている肺葉の切除(肺葉切除)、片側の肺全ての切除(片肺全摘)が選択されます。体力がない人や肺の機能が悪い人、腫瘍が小さい人などは肺葉の一部のみを切除することもあります(縮小手術)。また、ほとんどの手術でリンパ節を切除します(リンパ節郭清)。

●放射線療法

X線を体の外から照射してがん細胞を攻撃する治療法です。根治的放射線療法は、非小細胞がんの場合手術のできないⅠ(I)期からⅢ(III)A期、Ⅲ(III)B期が対象となり、小細胞がんの場合は限局型が対象となります。

保険適用のIMRT(強度変調放射線治療)、保険適用外(先進医療A)の重粒子線治療という精度や強度を増した放射線治療法もあります。化学療法と同時に行うこともあります。

●化学療法

化学療法は抗がん薬により、広い範囲のがん細胞を攻撃する治療法です。小細胞肺がんは非小細胞肺がんに比べて化学療法の効果が高いため、抗がん薬が治療の中心となります。

非小細胞肺がんでは病期に応じて手術や放射線治療と組み合わせて、あるいは単独で用いられます。また、非小細胞肺がんに対する分子標的薬としてEGFR阻害薬、ALK阻害薬、および血管新生阻害薬があります(図7)。

図7 進行非小細胞肺がんの治療選択アルゴリズム

ゲフィチニブ=商品名イレッサ エルロチニブ=商品名タルセバ アファチニブ=商品名ジオトリフ クリゾチニブ=商品名ザーコリ アレクチニブ=商品名アレセンサ ベバシズマブ=商品名アバスチン

肺がんの予後はどれくらい厳しいの?

他のがんに比べて厳しいと言えます。今年(2016年)1月に国立がん研究センターが公表したがん種別の10年生存率では、全がん種の平均が58.2%だったのに対し、肺がんは33.2%でした(5年生存率は39.5%)。病期別ではⅠ(I)期が69.3%、Ⅱ(II)期が31.4%、Ⅲ(III)期が16.1%、Ⅳ(IV)期は3.7%でした。統計では手術を行った場合の10年生存率も出しており、肺がんは57.8%でした。

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