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本人はもちろん、家族や周囲のサポートが重要
高齢者の肺がん治療 個々の肉体年齢に応じた治療を

監修:高橋利明 静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科医長・通院治療センター長
取材・文:伊波達也
発行:2011年11月
更新:2013年4月

  
高橋利明さん 高齢者の化学療法では家族など
周囲の人々のサポートが
重要になってくると話す
高橋利明さん

超高齢化が進む中、肺がんに罹患している高齢者の割合は必然的増えている。しかし、いわゆる”高齢者”といわれる年齢であっても、 身体的にとても元気な方が多いのも事実だ。では、高齢者の肺がんは一体どういう治療が行われるべきなのだろうか──。

肉体年齢で考慮する高齢者の肺がん治療

[年齢別に見た肺がんの死亡率推移](1965年、85年、09年)
年齢別に見た肺がんの死亡率推移

我が国のがんのなかで1番死亡者数が多い肺がん。がんの死亡者数は、超高齢化社会の到来とともに年々増えてきましたが、肺がんの死亡者数も高齢者が多くを占めています。なかでも、75歳以上の死亡率が圧倒的に高く、この40年で肺がんの死亡者数を押し上げてきた要因だといわれています。

「私たちの診療科で治療を行っている肺がん患者さんのうち、約3分の1は、75歳以上の方です。70歳以上の方を含めると約半数近くになります」

そう話すのは、静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科医長で通院治療センター長の高橋利明さんです。

同科は地域柄、都会の病院と比べても、高齢者の患者さんが多いということですが、同院の状況は現在の肺がんをめぐる状況を如実に表しています。

ところで、そもそも肺がん治療における高齢者とは、何歳以上を想定しているのでしょうか。

[静岡がんセンターにおける肺がん患者さんの年齢分布]
静岡がんセンターにおける肺がん患者さんの年齢分布

「一般的に75歳以上を高齢者と位置づけています。ただし、日常の診療においては、暦年齢を意識することよりも、むしろ、その人の健康状態がどうであるかという肉体年齢(実質的な年齢)を考慮することのほうが多いのです」

したがって、この治療ができるかどうか判断する場合にも、基本的には若年の人とあまり違いはないと高橋さんは話します。

「肺がんの治療では、手術ができるかどうかで治る確率が違いますので、まず手術が可能な病期(進行度)なのか、そして、手術ができる全身状態なのかどうかを評価します。そこから、個々の患者さんにとってふさわしい治療を選んでいくのです」

病気の進行度と、心肺機能や肝臓、腎臓などの病気の合併症の有無を調べつつ、高齢者の場合には、肉体年齢を考慮して治療を決めているそうです。

手術ができれば高齢者でも根治を目指して手術

[高齢者の病期別の主な治療方針]

病期 治療方針
1期 手術/放射線治
2期 手術/放射線治療
*術後の化学療法の適応は慎重に検討
3期 局所進行期 手術/化学放射線療法/放射線治療
*術後の化学療法の適応は慎重に検討
進行期 化学療法
4期 化学療法

では、実際の病期別にみた高齢者に対する肺がん(非小細胞肺はいがん)の治療はどのようなものなのでしょうか。

現在、病期がリンパ節転移のないステージ1の場合には、肺はい葉切除や局所切除といった手術が第1選択です。手術ができない体の状態だったり、患者さん本人が手術を受けたくなかったりする場合には、定位放射線治療や高エネルギーで腫瘍を焼き切る陽子線や重粒子線治療を行います。

「昨今では、肺の切除部分を少なくする縮小手術や、手術の傷口を小さくする胸腔鏡手術のような体の負担の少ない手術が増えていますので、手術ができる病期であれば、できるだけ高齢者の方にも手術を行っています」

腫瘍が大きく、肺門へのリンパ節転移があるステージ2の場合は、リンパ節郭清を含めた手術か、通常の放射線治療を行います。手術後、目に見えないがんをたたくために行う、補助化学療法(抗がん剤治療)は、75歳以上の高齢者に対してのデータは乏しいために、慎重に実施しているそうです。

局所進行では、放射線とパラプラチンの併用が有効な治療

[高齢者肺がんに対する併用療法の効果](海外での結果)
高齢者肺がんに対する併用療法の効果

出典:The Lancet 378:1079-1088,2011

ステージ3になると、その進行度合いによって、局所進行期と進行期に分けられます。

「手術適応がない局所進行期には、放射線治療が行われます。この場合、70代の人でも肉体年齢が若い方なら、若年者と同じ、放射線治療に抗がん剤治療〈シスプラチン()(一般名)+ ナベルビン()など〉を加える化学放射線療法を実施します」

ただし75歳以上の人や、体力的に弱っている人は、抗がん剤の腎毒性や骨髄抑制などの影響も考え、放射線治療が単独で行われるのが通常です。

さらに最近になって、新たなエビデンス(科学的根拠)も出てきました。

「2011年9月に、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)において発表された、我が国のJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)の臨床試験の結果では、腎臓や肝臓などの機能が保たれている71歳以上の高齢者で、切除不能な局所進行期の非小細胞肺がん患者さんに対して、放射線治療単独と、放射線治療にパラプラチン()少量の連日投与を加えた治療では、後者のほう、つまり放射線治療と抗がん剤治療を併用したほうが長期予後がよいことが明らかとなりました。ですので、今後はステージ3の局所進行期では、この併用療法が標準治療になると思います」

シスプラチン=商品名ランダ/ブリプラチン
ナベルビン=一般名ビノレルビン
パラプラチン=一般名カルボプラチン


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