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手術の世界標準は「肺葉切除」。それよりも小さな切除でも安心か、現在臨床試験中
どこまで進んでいるか、肺がんの縮小手術

監修:鈴木健司 順天堂大学医学部付属順天堂医院呼吸器外科教授
取材・文:黒木要
発行:2010年6月
更新:2013年4月

  
鈴木健司さん 順天堂大学医学部付属
順天堂医院呼吸器外科教授の
鈴木健司さん

現在、肺がんの手術は「肺葉切除」が国際的な標準治療となっている。
最近は、さらに切除範囲を小さくした縮小手術の技術が進歩し、患者さんの手術負担が軽減されている。
この縮小手術は、どんなメリットがあるのだろうか。

入院期間が短縮し早期の社会復帰も可能に

肺がんの治癒を目指す中心的な治療法は、手術です。治癒を目指す手術が可能なのは、肺がん全体の80パーセントを占める非小細胞がんでいえば、がんが肺の外に広がっていないものがもっともよい適応とされているが、近くのリンパ節への転移が認められる場合でも、その場所や個数によっては可能です。がんの広がり具合の指標である病期(ステージ)でいえば1~2期と3期の一部が該当します。

現在、この手術で世界標準となっているのは葉切除です。葉は解剖学的な単位で、右肺は上葉、中葉、下葉の3葉に、左肺は上葉、下葉の2葉に分かれています。

「がんが含まれている葉を丸ごと摘出するのが葉切除で、仮に原発巣の周辺に検査画像や肉眼で見えない微小ながんが存在していても、取り残さないというメリットがあります」

こう解説するのは順天堂大学医学部付属順天堂医院呼吸器外科教授の鈴木健司さんです。鈴木さんによると、肺がんの手術は1930年代に肺を全部切り取る肺摘除術から始まり、60年代に肺葉切除が考案され、70年代には標準手術となりました。

[肺の葉切除(左)]
図:肺の葉切除(左)

肺の葉切除は1960年代に考案され、70年代より標準治療となっている (Cahan et al. J Thorac Surg 1960;39:555)

最近では、さらに解剖学的にはるかに狭い単位で切除する「区域切除」、もっと小さく切除する「部分切除」(楔状切除)が多く行われるようになっているそうです。

「区域切除とは右肺では10に、左肺では8に分かれている『区域』という単位で、がんを取り除く方法です。部分切除とはがんを中心にして楔形に切除する方法で、文字通りがんをくり抜くように切り取る方法です。いずれも肺の切除範囲が葉切除よりずっと小さいので、患者さんの身体的な負担が軽減すると考えられています」

その具体的なメリットについては、手術を担当する施設や医師の技術格差、また大きさや個数などのがんの状態、患者さんの体力や健康状態にも左右されるので、鈴木さんの口調は慎重になりますが、たとえば入院期間の短縮が想定されます。葉切除では体力や健康に問題のない人であれば6~10日ほどを要するのが普通です。縮小手術ではこれより数日間の短縮が、また仕事への復帰など社会復帰の期間の短縮も充分に期待できるといってよいようです。

また葉切除によって呼吸機能の低下も余儀なくされるおそれがあります。

肺がんの手術では、肺の一部を切除するので、手術後はその部分が負っていた呼吸機能が低下するのはやむを得ません。呼吸機能の1つの目安としては肺の体積があります。左右の肺の体積を100パーセントとすると、一般に右肺の上葉は20パーセント、中葉は10パーセント、下葉は30パーセント、左肺の上葉は20パーセント、下葉は20パーセントの割合だとされています。

「どの葉を切除するかによって、残されるおおよその体積が計算できます。通常は70パーセント以上、もっとも大きい切除でも50パーセントを残すのが切除の目安です」

日常生活でいうと、肺の体積の70パーセントが残ると、多少息切れはするものの、駅の階段を駆け上がることもできるそうです。

これが肺の体積が50パーセントになるとかなりきつくなるといいます。手術前の呼吸機能がもともと低い高齢者や持病のある患者さんでは、数10~数百メートルの歩行でも、ひと休みしなければならないようになることもあるそうです。

縮小手術をするとそれはどうなるのでしょうか。

「区域切除を行うことで葉切除より呼吸機能の低下を大幅に防ぐことができる可能性があります。それは患者さんの肺機能や切除部位、つまりがんがどの肺葉に存在するかによります。一方同じ縮小切除でも楔状切除の場合は手術の負担も呼吸機能の低下も、大幅に軽減されます。しかし後に触れるようにこの楔状切除を適応できる患者さんは限られます」

[図 肺の切除方法]
図:肺の切除方法

右肺を10、左肺を9に分けた区域でがんを取り除く「区域切除」や、がんを中心にして楔形に切除する「部分切除」は、肺の切除範囲が葉切除より小さく、患者さんの身体的負担が軽減される

高齢者や超早期がんの患者が当面の適応

[縮小手術が対象となる肺がん]

(1)合併症がある場合
呼吸機能が低い人
持病がある人
高齢者
(2)早期肺がん
すりガラス状陰影が認められる

では、どんな肺がんに縮小手術が適応になるのでしょうか。

第1に考えられるのは、葉切除後の呼吸機能の低下により、手術後のQOL(生活の質)に大きな不安が生じる患者さんです。先ほど述べた体力のない高齢者や、若くても持病があって体力のないような人たちです。

「葉切除は手術の方式が洗練され、手術後の体調管理も発達してきた現在、80歳代でも体力があれば充分に可能ですが、元来呼吸機能が低い人や持病がある人では回避することがしばしばでした。そういった人たちでも縮小手術なら受けられる人がかなりいます」

2番目のよい適応は極めて早期のがんの一部です。詳しくは後述します。

標準手術ではわが国の場合、葉切除に併せて近隣のリンパ節も系統的に切除します。数珠つながりになっているリンパ節を切除するのです。仮にがんがそこに転移していてもそれ以上の広がりを防ぐのと、切除したリンパ節を顕微鏡で調べることでどこまでがんが広がっているかを見るのが目的です。つまり、診断的な意味があるというわけで、これによって病期が変更になり、治療方針が変わる場合もないではありません。

縮小手術の区域切除ではこの系統的なリンパ節郭清(切除)はせず、切除するとしても個数が少なくなります。部分切除ではいっさい切除しません。

「したがって縮小手術はリンパ節への転移がないという症例を選んで行わなければなりません。肺がんではたとえ1期の早期がんでもリンパ節に転移しているものが20パーセントほどあり、画像検査でそれを全部見つけるのは難しいのですが、最近は、ほぼ100パーセントに近い確率でリンパ節転移のないものがわかるようになってきました」

鈴木さんがいうその肺がんとは、従来の胸部エックス線検査の精度では見つからなかったもので、低線量のヘリカルCTを導入した検診のみで発見できる小さながんです。

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