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患者さんにとって、より効果のある薬を使い、最大の効果を上げる
肺がんは「組織型」によって薬を使い分ける時代へ!!

監修:久保田馨 国立がんセンター中央病院肺内科医長
取材・文:町口充
発行:2009年7月
更新:2013年4月

  
久保田馨さん
国立がん研究センター中央病院
肺内科医長の
久保田馨さん

他のがんと異なり、どの組織ががんになったかによって、いくつかのタイプに分けられる肺がん。
当然タイプによってがんの性質も違い、治療法も異なってくる。
今、その肺がんの組織型によって、どの抗がん剤がより効果を示すのかがわかってきた――。

手術不能でも組織型別の化学療法で成績アップ

肺がんは早期発見が難しく、手術不能の段階で見つかることが多い上、いくつもの組織型(タイプ)に分かれているので、それによって治療法が異なるのも特徴だ。逆にいえば、それぞれの組織型に合った治療法が確立できれば、より効果の高い治療が可能となる。

近年、新規抗がん剤の開発や投与方法の研究が進み、手術不能で抗がん剤がほとんど効かないといわれたタイプにも有効な薬が登場し、その効果が証明されつつある。

抗がん剤が効きやすい小細胞肺がん

がんは同じ臓器にできたがんでも、細胞組織のどの部分ががん化するか、つまり組織型の違いによって、がんの性質が異なり、抗がん剤の効き方なども異なるので、治療法も違ってくる。

ほかのがん以上にさまざまな組織型に分かれるのが肺がんだ。まず小細胞肺がんと非小細胞肺がんの2つに分類される。後者はさらに、扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんの3つの組織型に分けられ、それぞれに合った治療方針が選択される。

小細胞肺がんは、肺がん全体の10~15パーセントほどだが、残りの85~90パーセントを占める非小細胞肺がんとは違った特徴を持つ。

非小細胞肺がんに比べて、放射線や化学療法の感受性が高く、効果が期待できるのが小細胞肺がんだ。がんが片側の肺と近くのリンパ節に留まる限局型と、遠隔転移がある進展型とに分けられるが、実際には、限局型でも発見時に目に見えないところでがんが広がっている可能性が高く、ファーストライン(初回治療)の段階から、手術ではなく化学療法が治療の主体だ。

「限局型では、プラチナ製剤であるブリプラチンもしくはランダ(一般名シスプラチン)とベプシドもしくはラステット(一般名エトポシド)の2つの抗がん剤を使った化学療法と放射線治療の同時併用療法が、世界的な標準治療になっています」と国立がん研究センター中央病院肺内科医長の久保田馨さんは語る。

進展型の小細胞肺がん2次治療にも光明

一方の進展型はすでに全身にがんが広がっている状態なので、抗がん剤による化学療法のみを行う。

「世界的には、限局型と同様にシスプラチン+エトポシドの組み合わせが標準治療となっています。

しかし、日本で行われたJCOG(日本臨床腫瘍研究グループ)による臨床試験で、シスプラチン+エトポシドの組み合わせより、シスプラチン+イリノテカン(商品名カンプトもしくはトポテシン)のほうが明らかに生存期間が長いことが証明され、日本ではこちらが標準治療となっています」

一方、セカンドラインの治療は、小細胞肺がんに対しては生存期間の延長を証明する結果はあまり得られていなかったが、最近、経口のハイカムチン(一般名ノギテカン)と症状緩和を目的とした支持療法による併用療法と、支持療法単独とを比較した第3相試験の結果、ハイカムチン群で生存期間が有意に延びるとの報告があり、セカンドライン治療の有効性が明らかになった。

[小細胞肺がんに対するシスプラチン+イリノテカンの効果]
図:小細胞肺がんに対するシスプラチン+イリノテカンの効果

出典:N Eng J Med 346:85-91,2002より一部改変

非小細胞肺がん組織型で治療も異なる

[非小細胞肺がんの治療方針]

病期 標準治療法
1期 手術+化学療法
2期 手術±化学療法
3A期 手術+化学療法
化学放射線療法
3B期
(胸水なし)
化学放射線療法
3B期・4期 化学療法;

肺がんの圧倒的多数を占める非小細胞肺がんは、進展度によって1期から4期までに分けられ、1期、2期までなら治療の基本は手術だ。進行したがんでも3A期までなら完全切除が可能と判断されれば手術適応となるが、実際には、非小細胞肺がんの6~7割は手術不能の段階で見つかっている。

胸水がたまっている3期や、遠隔転移がある4期でのファーストラインの治療法は、シスプラチンなどのプラチナ製剤と、タキソテール(一般名ドセタキセル)、ジェムザール(一般名ゲムシタビン)、ナベルビン(一般名ビノレルビン)、タキソール(一般名パクリタキセル)、イリノテカンといった、第3世代と呼ばれる薬剤のうちの1つを組み合わせた2剤併用の化学療法が標準治療となっている。

手術適応とならない3期では、シスプラチンを含む化学療法と放射線を同時に照射するのが標準治療で、根治も期待される。

化学療法での最近のトピックスは、新しい薬の登場によって組織型別の治療が進み、薬剤選択に幅が出てきたことだろう。

「非小細胞肺がんは、腺がん、扁平上皮がん、大細胞がんなどに分けられますが、今までの抗がん剤は、この組織型にはこの薬が効くというような、組織型別の有意差はあまり認められませんでした。しかし、イレッサ(一般名ゲフィチニブ)、タルセバ(一般名エルロチニブ)などの分子標的薬が出てくるようになって、組織型によって効果に違いがあることがわかってきました」と久保田さんは語る。

非扁平上皮がんアリムタが第1選択薬に!?

1700人を超える非小細胞肺がん患者を対象に、ファーストライン治療としてシスプラチンとアリムタ(一般名ペメトレキセド)の併用療法と、シスプラチンとジェムザールの併用療法とを比較する多国間第3相試験が行われた。扁平上皮がんではシスプラチン+ジェムザール療法のほうが生存期間が延びるという結果だったが、腺がん、大細胞がんなどの非扁平上皮がんではシスプラチン+アリムタ療法のほうが明らかに成績がよかった。

久保田さんはこう指摘する。

「シスプラチン+ジェムザールについてはこれまでにもいくつか比較試験があり、日本でも行われていて、非常に有効性の高いレジメン(投与法)です。ただ、それよりもシスプラチン+アリムタのほうが明らかに成績がいいというのですから、少なくとも非扁平上皮がんに関してはかなり期待が持てることになります。それにシスプラチン+アリムタのいいところは、毒性が軽いという点です。シスプラチン+ジェムザールも血液毒性は比較的軽いほうですが、それよりもさらに軽いのが特徴です」

アリムタは、開発初期のころは毒性が問題になったが、ビタミン剤(葉酸とビタミンB12)を予防投与するようになって、軽減されるようになったという。

非小細胞肺がんのセカンドラインの治療薬として、延命効果が臨床試験で証明された薬にタキソテールがある。このタキソテールとアリムタの比較試験も行われている。全体の生存期間はほぼ同様だったが、扁平上皮がんではタキソテール群で生存期間が長く、大細胞がんでは、アリムタ群でより生存期間が長く、腺がんではほぼ同様であった。ファーストライン治療での試験と同様に組織型別に成績の違いがあらわれ、血液毒性もアリムタのほうがかなり軽かった。

久保田さんによると、今後、シスプラチン+アリムタが、非扁平上皮がんのファーストラインの標準治療になっていくのではないか、という。

[扁平上皮がんを除く非小細胞肺がんのシスプラチン+アリムタの効果]
図:扁平上皮がんを除く非小細胞肺がんのシスプラチン+アリムタの効果

出典:Journal of Clinical Oncology 26:3543-3551,2008より一部改変


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