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転移がなく、腫瘍が3センチ以下なら5年生存率は80パーセントのデータも
体への負担が軽く、繰り返し治療できる肺がんラジオ波治療

監修:金澤 右 岡山大学医学部放射線科教授
取材・文:祢津加奈子 医療ジャーナリスト
発行:2009年1月
更新:2013年4月

  
金澤右さん
岡山大学医学部
放射線科教授の
金澤右さん

ラジオ波治療は、体に対する侵襲が少なく、臓器の損傷を最低限にとどめて繰り返し治療ができるのが大きな利点。すでに早期の肝がんでは標準治療の1つとして認められていますが、最近では他のがんでも有望な局所治療法として期待されています。

中でも、早くから肺がん治療への応用を研究してきたのが、岡山大学医学部放射線科教授の金澤右さんです。世界でも最多の治療例を持つ金澤さんに、最新の肺がんのラジオ波治療の動向について聞きました。

1つの施設では最も多い治療数

[図1 岡山大学で行われたラジオ波治療の例]
図1 岡山大学で行われたラジオ波治療の例

金澤右さんが、肺がんのラジオ波治療を開始したのは、2001年6月のことでした。

「2000年にアメリカのデュプイという医師が肺がんに対してラジオ波治療を行ったという報告が発表されたのがきっかけです。私たちは、毎日CTガイド下に針生検を行っていますから、技術的にはすぐできると思ったのです」

放射線科の医師は、毎日のようにがんの病巣をCTで見ながら、針を刺して組織をとる針生検という作業を行っています。ラジオ波治療も、基本的にはそれと同じ。CTで確認しながら病巣に針を刺し、ラジオ波で病巣を焼き、壊死させる方法です。当時の胸部外科の教授がデュプイの講演を聞いて関心を持ったこともあって、2001年には肺がんのラジオ波治療が始まったのです。

以来、現在(2008年9月現在)までに岡山大学では389例、病巣の数でいうと1068個の肺がんにラジオ波治療を行っています。うち原発性の肺がんが4分の1で、残りを大腸や腎臓など、他の臓器からの転移性肺がんが占めています。世界でも、1つの施設では最も多い治療数です。がんの大きさは平均17ミリ弱で、平均年齢は64歳。最高齢は94歳の男性です(図1参照)。

体への負担が少ないのが大きな利点

この男性は、原発性肺がんで左肺の下のほうに直径15センチの肺がんが発見されました。金澤さんは、「肺の機能的には大きな問題は無かったのですが、年齢的に心肺機能への負担を考えると手術はちょっと厳しい。そして、高齢者の場合、入院期間が長くなると、あっという間に心身の機能が低下し、日常生活が難しいほど認知症が悪化したり、歩けなくなることが珍しくないのです」と、ラジオ波治療が選択された理由を説明しています。

これでわかるように、ラジオ波治療は何といっても体への負担が少ないのが大きな利点です。肺は、肋骨で保護された臓器です。通常、開胸手術で肺がんを切除する場合には、肋骨を1本折って肺の切除が行われます。胸郭の中をいじるため、術後の痛みが残り、そのために肺炎を起こすこともしばしばです。しかし、ラジオ波の場合は少し太めの針を病巣に刺すだけなので、基本的には局所麻酔で治療可能です。肺に対する損傷は最小限にとどめ、万が一再発した場合にも何度でも治療を繰り返すことができます。

問題は、その治療効果ですが、現在では「ラジオ波治療の適応も、はっきりしてきました」と金澤さんは語っています。

細胞は50度以上になると壊死する性質を利用

ラジオ波治療は、細胞が熱に弱く、50度以上になると壊死するという性質を利用したものです。

ラジオ波は、マイクロ波より少し波長の長い高周波(480キロヘルツ)ですが、やはり電子レンジと同じ要領で、通電することにより原子のイオンを振動させてその摩擦熱で加熱します。当初、電極針として使われたのは直径2ミリ弱のクールチップ・ニードルという針でした。これをCT画像でモニターしながら、肺がんの病巣に刺し、発電機で発生させたラジオ波を電極針から左右の太股に貼った対極板に流します。すると、直径3センチの範囲で球状に組織が加温されます。

ここで、重要なのが組織を60度以上に加熱して確実に壊死させることです。ただし、100度以上になると組織が沸騰して、泡が発生するため、ラジオ波がうまく伝わらなくなり、組織の温度を維持することが難しくなります。

そこで、針先に冷却水を還流させ、100度以上に温度を上げず、かつ確実に組織を60度以上に加熱するように工夫されたのが、クールチップ・ニードルでした。

改良された展開針で再発率も低下

しかし、現在はさらに改良したレヴィーンという展開針が電極針として使われています。これは、組織に刺したあと内包してある針が傘のように開くのがミソ。「クールチップ・ニードルでは確かに焼けたと思ったのに、再発する例がありました。端のほうが焼き切れていなかったのですね。その点、展開針は腫瘍を包み込むように加熱して端までしっかり焼くことができます。実際に再発率も低いので、これに変わってきています」と金澤さんは話しています。

展開針には、冷却装置は付いていませんが、ロールオフといってラジオ波電流に対する腫瘍内の抵抗が上がりすぎると自然に切れる仕組みになっています。このロールオフが2度起こるぐらいを目安に治療が行われます。

「肺がんが胸膜に近いと、加熱したときに胸膜が刺激されて痛みが生じるので硬膜外麻酔で行われますが、ふつうは局所麻酔」で行われるそうです。手術時間は個人差がありますが、入退室まで含めて片肺のがん3つぐらいで2~3時間というところだそうです。

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