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危険性と効果をきちんと把握して、検査と治療を受けよう
これだけは知っておきたい肺がんの基礎知識

監修:吉田純司 国立がんセンター東病院呼吸器外科医長
取材・文:柄川昭彦
発行:2010年1月
更新:2013年4月

  
吉田純司さん
国立がん研究センター東病院
呼吸器外科医長の
吉田純司さん

死亡数第1位の肺がんは、依然増え続けている。
検査法も治療法も著しい進歩をとげているが、検査や治療を受けるときには、効果だけでなく、危険が伴うことも忘れないようにしたい。
自分が受ける検査や治療は、どのような効果があり、どのような危険があるのか。事前に、しっかりと把握しておくことが大切だ。

日本の肺がんはまだ増え続ける

日本では、肺がんによる死亡者数が年々増加している。そして、各がん種の死亡者数を比較してみると、男性でも女性でも、肺がんが第1位になっているのだ(07年のデータ)。肺がんが増え続けている理由について、国立がん研究センター東病院の吉田純司さんは、次のように説明してくれた。

「肺がんの要因としてはっきりしているのは喫煙ですが、喫煙率の変動と肺がんの死亡数の変動との間には、20年程度の時間的なズレがあることがわかっています。たとえば米国では、喫煙率が下がり始めてから20年ほどたって、ようやく肺がんが減り始めました。日本では、すでに男性の喫煙率は下がり始めています。しかし、20年のタイムラグがあるとすると、肺がんはまだしばらく増え続けるだろうと考えられています」

女性に関しては、どうだろうか。女性の喫煙は、若い年代を中心に、現在でも喫煙者が増加する傾向が見られる。この人たちが、今後どれだけタバコを吸い続けるかはわからないが、女性の肺がんは、まだまだ増え続ける可能性がある。

「喫煙が肺がんに結びつくリスクは、男性より女性のほうが高いとも言われています。そうした点からも、肺がんを専門とする医師の間では、若い女性の喫煙が憂慮されています」

タバコの影響は、1日の喫煙本数と喫煙年数をかけた値が、400くらいになると危ないとされているそうだ。本数が多い人だと、喫煙年数がさほど長くなくても、肺がんの危険性が高まるのである。

扁平上皮がんが減り、腺がんが増えている

[肺がんの種類]
図:肺がんの種類

肺に発生したがんを「肺がん」と呼ぶが、肺がんは細胞の種類によって、いくつかの種類に分けることができる。

まず、「小細胞肺がん」と「非小細胞肺がん」に大別される。小細胞肺がんは、比較的小さな細胞からなり、増殖がきわめて速く、他の臓器に転移しやすい。肺がんの中で最も悪性度が高いが、抗がん剤や放射線による治療がよく効くのが特徴だ。

非小細胞肺がんは、「扁平上皮がん」「腺がん」「腺扁平上皮がん」「大細胞がん」などに分類される。

扁平上皮がんは、肺門部(気管支が肺に入ったあたり)にできることが多く、患者はほとんどが喫煙者。男性に多く、比較的転移しにくいのが特徴だ。

腺がんは、肺野部(気管支の末梢部分が広がる領域)にできることが多い。性質はバラエティに富んでいて、進行の速いものも遅いものもある。

腺扁平上皮がんは、腺がんと扁平上皮がんが混じり合ったもので悪性度は比較的高い。

大細胞がんは、あまり特徴のない大型の細胞からなる。非小細胞肺がんの中では、増殖が速く、転移もしやすい。

主な肺がんは以上のような種類だが、日本人の肺がんで最も多いのは腺がんだ。

「最近15~20年くらいで、扁平上皮がんが減り、腺がんが増えるといった変化が見られました。現在では、女性の肺がんの70~80パーセント、男性の肺がんでも60パーセントくらいは腺がんになっています」

こうした変化の原因は明らかではないが、タバコのフィルターが関係しているのではないか、と考えられている。フィルターがなかった時代は発がん物質を含む煙の粒子が大きく、粒子は肺の入り口近くの気管支に付着した。ところが、フィルタータバコの煙は粒子が小さく、肺の奥まで入っていく。こうして、かつては肺門部の扁平上皮がんが多かったが、現在は肺野部の腺がんが増えている可能性があるという。

[肺の構造]
図:肺の構造

病期は2010年に一部改訂される予定

がんの進み具合を示す病期は、1A期、1B期、2A期、2B期、3A期、3B期、4期に分類されている。これらの病期は、がんの大きさ、がんができている位置、リンパ節転移の有無、別の肺葉への転移の有無、離れた臓器への転移の有無などによって決定される。

「肺がんの進行度に関しては、2010年に国際的な分類方法が一部変わりますが、それに伴って、病期も変わることになります。たとえば、これまでは同じ肺葉の中であっても、転移があれば3B期に分類されていましたが、これが2B期に変わります。最も大きな変更が、この点です」

手術の適応となるのは、基本的に3A期までで、3B期は適応外とされている。それを考えると、この3B期から2B期への変更は大きな意味を持つ。従来なら手術の適応ではなかったがんが、手術で治せるがんへと変更になったわけだ。

がんの大きさに関しても変更がある。これまでは3センチのところに線が引かれていた。たとえば、リンパ節転移も遠隔転移もない1期の場合、がんが3センチ以下なら1A期、3センチを超えていれば1B期となる、といった具合である。

[非小細胞肺がん病期]

  がん病巣の拡がりぐあいで病気の進行を潜伏がん、0、1、2、3、4期に分類
潜伏がん がん細胞が、痰の中に見つかっているのですが、胸の中のどこに病巣があるかわからない非常に早期の段階
0期 がんは局所に見つかっていますが、気管支をおおう細胞の細胞層の一部のみにある早期の段階
1A期 がんが原発巣にとどまっており、大きさは3センチ以下で、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階
1B期 がんが原発巣にとどまっており、大きさは3センチを超え、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階
2A期 原発巣のがんの大きさは3センチ以下であり、原発巣と同じ側の肺門のリンパ節にがんの転移を認めますが、他の臓器には転移を認めない段階
2B期 原発巣のがんの大きさは3センチを超え、原発巣と同じ側の肺門のリンパ節にがんの転移を認めますが、他の臓器には転移を認めない段階です。あるいは、原発巣のがんが肺をおおっている胸膜・胸壁に直接およんでいますが、リンパ節や他の臓器に転移を認めない段階
3A期 原発巣のがんが直接胸膜・胸壁に拡がっていますが、転移は原発巣と同じ側の肺門リンパ節まで、または縦隔と呼ばれる心臓や食道のある部分のリンパ節に認められますが、他の臓器には転移を認めない段階
3B期 原発巣のがんが直接縦隔に拡がっていたり、胸膜へ転移をしたり(胸膜播種といいます)、胸水がたまっていたり、原発巣と反対側の縦隔、首のつけ根のリンパ節に転移していますが、他の臓器に転移を認めない段階
4期 原発巣の他に、肺の他の場所、脳、肝臓、骨、副腎などの臓器に転移(遠隔転移)がある場合

「新しい病期分類では、がんの大きさは、2、3、5、7センチと区切りが増え、それぞれの大きさに応じて、治療法の適応が細かく決められることになります」

分類はやや複雑になるが、それによって、現在よりも細やかな治療法の選択が可能になると考えていいだろう。

[小細胞肺がん病期]

  小細胞肺がんでは、潜伏がん、0、1、2、3、4期などの分類以外に、限局型、進展型に大別する方法も
使われています
限局型 がんは片側の肺と近くのリンパ節(縦隔のリンパ節、がんのある肺と同側の首のつけ根にある
鎖骨上リンパ節も含む)に見つかる場合
進展型 がんは肺の外に拡がり、がんの転移が身体の他の臓器にも見つかる場合、
すなわち遠隔転移のある場合

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