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リンパ節のサンプリングで免疫機能を温存 肺がんの胸腔鏡手術&リンパ節温存

監修:木村秀樹 千葉県がんセンター呼吸器科部長
取材・文:高田昌彦
発行:2006年5月
更新:2013年9月

  

胸部3カ所に穴を開けモニターを見ながら手術。術後の痛みが少なく入院期間も短い

木村秀樹さん
千葉県がんセンター
呼吸器科部長の
木村秀樹さん

内視鏡技術が発達し、傷口が小さくて患者に負担の少ない手術が盛んに行われるようになってきた。

肺がんの治療で行われる胸腔鏡手術もそのひとつだ。

従来の開胸手術に比べると、痛みは少なく回復も早い。

手術を受けるならなるべく負担の少ない手術方法にしてほしいと誰もが思う。

肺がんの胸腔鏡手術の実際について、千葉県がんセンター呼吸器科部長の木村秀樹さんに聞いた。

自動縫合機の発明で急速に発展

写真:胸腔鏡手術

胸腔鏡手術はモニター画面を見ながら3人で行う。中央が木村さん

図:胸腔鏡手術

胸腔鏡手術では胸に小さな穴を開けて器具を入れ、テレビモニターで体内の様子を確認しながら手術を行う

写真:胸腔鏡手術

胸に3つの穴を開け機器を挿入する。上が胸腔鏡カメラ、白い機械が自動縫合機、下は鉗子

「肺がんが見つかって、手術を受けられる人はラッキーなんですよ」と木村さんは言う。肺がんの場合は、病理組織型が「小細胞がん」か「非小細胞がん」かによって治療法が分かれる。小細胞がんは進行が早く転移も起こしやすいので、手術の対象にはならない。抗がん剤と放射線の併用療法が標準治療となっている。

非小細胞がんで、他臓器に転移のない2期程度までが手術の対象になる。だから手術を受けられる人は、治る可能性の高い肺がん患者だということができる。治癒が望めないほど進行した肺がんをたくさん診てきた臨床医としては、手術できる肺がん患者はラッキーな人に見えるのだろう。さらに早期の1a期の肺がんであれば、胸腔鏡手術が受けられる可能性もある。

胸腔鏡とは、先端に小型のビデオカメラを装着した棒状の機器だ。胸部の皮膚を切開して、肋骨と肋骨の間から挿入し、肺の中の様子を外部のモニター画像に映しだす。先端についているライトで明るく照らし、画面を何10倍にも拡大できるので、病巣を詳細に観察できる。

胸腔鏡手術では胸部の3カ所に穴を開ける。1つの穴から胸腔鏡を挿入し、2つ目の穴には自動縫合機という手術器具を、3つ目の穴には鉗子を入れる。手術は3人で行う。1人がカメラを操作し、1人はモニター画像を見ながら自動縫合機を操作して切除と縫合を行い、もう1人が同じく画像を見ながら鉗子で肺を引っ張ったり持ち上げたりしてサポートする。動脈や静脈、気管支を切り、肺と肺の間の葉間も切って、病巣のある肺葉を体外に取り出す。3人の術者の絶妙な連携が求められる。直接臓器に触れる従来の開胸手術に比べ、より高度な技術が必要になる。

胸腔鏡手術は、自動縫合機が発明されて急速に発展したそうだ。自動縫合機とは、手術部位を切ると同時に自動的に縫ってしまうことができる革命的な手術用具だ。

開胸手術では10~12センチぐらい切り開くが、胸腔鏡手術の場合は5~6センチと約半分の傷口ですむ。切り取った組織を取り出さなければならないので、ある程度の大きさは必要なのだ。

対象は3つの条件を満たす肺がんのみ

写真:取り出した肺がん組織
取り出した肺がん組織

木村さんは胸腔鏡手術について次のように考えている。

「この手術法は10年ほど前から始まりましたが、どこでも行われる一般的な手術になったのはこの5年ぐらいのことです。この5年間で大体の治療方式、切除方式が固まってきました。胸腔鏡手術と普通の開胸手術との違いは、患部まで手が入るかどうかという点にあります。胸の内部に手が入るのが普通の開胸手術。手を入れないで行うのが胸腔鏡手術です」

開胸手術でも自動縫合機が使われるようになって、以前ほど大きくは切らなくなったそうだ。開胸手術というと、肋骨を切断する古いイメージを持っていたが、そのような手術はもう行われていないという。

千葉県がんセンターでは、肺がんの手術は年間150例(転移性肺がんも含む)ぐらいある。胸腔鏡手術はそのうちの50例弱である。転移性肺がんについては、骨肉腫や軟部肉腫などが肺に多発的に転移したものについては適応とはならないが、大腸がんや頭頸部がんなどが肺に転移したもので、単発性の小さいものは適応となる。 胸腔鏡手術の適応は、次の3つの条件をクリアーした症例のみとしている。

  • 腫瘍の大きさが2センチ以下
  • 腫瘍マーカー陰性
  • リンパ節の腫大がない

CT検診で早期の肺がんが見つかる

肺がんは早期発見が難しいがんである。2センチ以下で見つかることは、かつてはほとんどなかったそうだ。

自覚症状はまったくないし、胸部X線写真では2センチに達しない小さながんはなかなか見つけられない。しかしCTの登場により診断技術が目覚しく進歩した。

「いまは肺がんのCT検診が盛んになってきていますので、5ミリ大でも見つかるのです。非小細胞がんの中でも、腺がんの早期のものがよく見つかります。扁平上皮がんは大きくなるのが速いので、小さいうちに見つかることはあまりありません。どちらかというと、非喫煙者や女性が胸腔鏡手術の対象になることが多いです。症状が出てきて苦しくなってから来られた方は、胸腔鏡手術は難しいですね」と木村さんは言う。

そのほかには、大腸や頭頸部など他の臓器から肺に転移した、転移性の肺がんが胸腔鏡手術の対象となる。


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