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最新標準治療 肺がん編 がんの進行具合を十分に考慮した上で、正しい治療の選択を

監修:中川健 癌研有明病院副院長・呼吸器外科部長
取材・文:「がんサポート」編集部
発行:2006年4月
更新:2013年9月

  

2期までは手術、3期は放射線化学療法、4期は化学療法が中心

中川健さん
癌研有明病院副院長の
中川健さん

肺がんは最も厳しいがんの1つです。それだけに、正しい治療の選択をし、最善の治療を受ける必要があります。

正しい治療を選択するためには、ご自分のがんがどの程度進行しているのか。

まずそれをきちんと把握することから始まります。

検査

悔いのない治療を受けるために

写真:肺がんの肉眼所見

直径10mmの肺がんの肉眼所見。白っぽいところががん

CT写真

CTで発見された小さな肺がんの薄切りCT像

悔いのない治療、よりよい治療、より正しい治療を受けたいと誰しもが思います。しかし、そのためには、まずは、自分の肺にできた病変が本当にがんなのか、そしてどんながんなのかを知らなくてはいけません。本当にがんか、どんながんかであるかを知るためには、正しい検査を受け、正しい診断を仰ぐことから始める必要があります。

検診で肺に異常が出たとか、あるいは咳の出方がおかしい、胸が少々苦しいなど、自覚症状が出たとかすれば、人はその原因を調べに病院へ足を運びます。

病院では、まず、外来での診察が行われます。問診に始まり、視診、触診、聴診、血液検査が行われ、引き続き胸部X線検査と胸部CT検査で画像的に病変を確認するなどが行われます。喫煙者の場合は、これにさらに喀痰細胞診が加わります。喀痰細胞診検査をするかどうかの基準は、喫煙指数が500~600以上あるかどうかです。喫煙指数は、1日の喫煙本数×年数です。

しかし、これだけ多くの検査をしても、病変がどうやらがんらしいとわかったとしても、本当にがんかどうかはまだわかりません。がんかどうかを確定するためには、細胞もしくはそのかたまりである組織を採ってきてそれを顕微鏡で調べる必要があるのです。その確定診断用の検査には、気管支鏡検査、CTガイド下経皮針生検・細胞診、外科的生検(開胸肺生検)の3つがあります。

胸腔鏡を用いた肺生検

気管支鏡検査は、のどから気管支に細い内視鏡を入れ、病巣を確認しながら細胞を採って調べる検査です。CTガイド下経皮針生検・細胞診は、CTで病巣を確認しながら皮膚の上から針を刺し病巣の細胞や組織を採ってくる検査です。この検査は、肺を覆っている胸膜に外から穴をあけるので、そこから空気が漏れて、気胸という合併症が起こる可能性が10パーセントほどあります。そのため、入院の必要な検査です。

癌研有明病院副院長で呼吸器外科部長の中川健さんは、こう言います。

「気管支鏡検査とCTガイド下経皮針生検・細胞診で大体95パーセント以上はがんかどうか確定できます。しかし、それでも確定しない場合は、開胸肺生検をする必要があります。ただ、以前は大きく胸を開いたものですが、最近は胸腔鏡でできるようになったので切る範囲が小さく、負担が少なくてすむようになりました」

ただし、病巣が非常に採りにくい場所にある場合は、開胸手術でも肺葉切除までしなければならないこともあります。肺は、右が3つ、左が2つの葉に分かれており、その葉の単位まで取ったが、がんでなかったという場合もまれにあります。その場合は患者さんにとっては「取られ損」ということになりますが、これはもちろん、事前にインフォームド・コンセントをして、患者さんの同意を得た上でなければできないことです。

多くの知恵の集積、キャンサーボード

写真:キャンサーボード

癌研有明病院で行われているキャンサーボードの一幕

こうしてがんが確認されれば、次いで重要なのは、がんの進行度(病期)、つまりがんが周囲にどのくらい広がっているかを見出すことです。病期がどの段階かによって治療法がそれぞれ異なってくるからです。肺がんの場合、がんが飛んでいく臓器は肺をはじめ、脳、骨、肝臓、副腎が多いので、それらの臓器にがんが転移していないかどうかを調べる必要があります。それには、肺には胸部CT、脳には脳MRI、骨には骨シンチグラフィ、肝臓・副腎には上腹部造影CT、腹部超音波などの検査が必要です。また、最近は、PET(ポジトロン・エミッション・トモグラフィ)という新しいハイテク診断装置が普及してきていますが、この検査をすれば、前者の上腹部造影CTや腹部超音波、骨シンチの検査を省略できます。

そしてこのような検査データをすべて検討して初めてがんが確定し、がんの進行具合が決まることになるわけですが、これが1人の医師で決定されるわけではありません。

「治療法はがんの確定診断、病期診断によって決定されますので、非常に重要です。1人の医師では診断能力に限界もあればミスもあり得るので、できるだけ正確を期すために、癌研有明病院では、キャンサーボードといって、内科医、外科医、放射線診断医、放射線治療医、病理医など、関係する医師がみな毎週一堂に集まり、患者さんの検査データを検討します。3時間ぐらいかけて喧々諤々議論して初めて決定されるのです」(中川さん)

病期別治療の基本的考え方

重要なので重ねて言いますが、治療法は、病期によって異なります。病期は、1~4期に分類され、さらに1~3期は、軽いものはA、重いものはBに細分化されています。その病期別の治療法の基本的な考え方を、中川さんはこう言います。

「1期は、がんが肺内にとどまっているもので、基本は手術です。2期では、原発巣と同じ側の肺門リンパ節に転移している場合ですが、それ以上には広がっていないので、やはり手術の適応です。3期は、遠くの臓器にまで転移はしていないが、隣接臓器に浸潤したり、縦隔リンパ節に転移したりしているので、この場合は、抗がん剤、放射線、手術も含めた集学的治療になります。そして4期は、遠くの臓器に転移しているので全身的な治療をする必要があり、化学療法が中心となります」

縦隔とは、左右の肺と肺に挟まれた部分で、前後は胸骨から脊柱までをいい、心臓や気管、大血管、神経など重要な器官があり、この部分にあるリンパ節を縦隔リンパ節と言います。

[非小細胞肺がんの標準治療]
図:非小細胞肺がんの標準治療

[肺がんの病期分類]

腫瘍の大きさ TX Tis T1 T2 T3 T4
リンパ節転移
遠隔転移
N0 潜伏がん 0期 1A期 1B期 2B期 3B期
N1 2A期 2B期 3A期
N2 3A期
N3 3B期
M1 4期
Tis=上皮内がん
腫瘍の
大きさ
TX 細胞診のみ陽性
T1 腫瘍の最大径≦3cm
T2 腫瘍の最大径>3cm、主気管支への進展が気管分岐部から≧2cm、
臓側胸膜への浸潤、部分的な無気肺
T3 胸壁・横隔膜・心膜・縦隔胸膜への浸潤、
主気管支への進展が気管分岐部から<2cm、1側全肺の無気肺
T4 縦隔・心臓・大血管・気管分岐部・気管・食道・椎骨への浸潤、
同一肺葉内に存在する腫瘍結節、悪性胸水
リンパ節
転移
N1 同側気管支周囲、同側肺門
N2 同側縦隔、気管分岐部
N3 対側縦隔または対側肺門、斜角筋前または鎖骨上窩
遠隔転移 M1 遠隔転移、複数の肺葉の腫瘍結節
(出典/『肺癌取扱い規約』(日本肺癌学会編)より)

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