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渡辺亨チームが医療サポートする:肺がん編

取材・文:林義人
発行:2004年4月
更新:2019年7月

  

サポート医師・山本信之
サポート医師・山本信之
静岡県立静岡がんセンター
呼吸器内科部長

やまもと のぶゆき
1962年和歌山県生まれ。
89年和歌山県立医科大学卒。
92年国立がん研究センターレジデント、
97年近畿大学医学部第4内科(現腫瘍内科)助手、
99年同講師を経て、
02年静岡県立静岡がんセンター呼吸器内科部長。
モットーは「チーム医療」。

3B期の進行肺がん、通院しながら化学療法を受けたい

(ここに登場する患者さんの例は複数の患者さんの実例を織り交ぜた仮想のケースで、仮名にしています)

胸部X線撮影でカゲが

2002年秋、東京・八王子に住む会社役員笠本尚さん(仮名・54歳)は、カラ咳が目立つようになっていた。また、時々左わき腹に痛みを感じている。そして、痰を吐いたとき、血が混じっていることに気がついた(*1肺がんの症状)。

笠本さんは学生時代からタバコを吸ってきたが、現在はマイルドセブンを1日約10本吸う程度で、ヘビースモーカーとはいえない(*2喫煙習慣との関連)。がん検診は、50歳のときに八王子市が行う「節目検診」で、妻に熱心に勧められて、胃がん、大腸がん、肺がんの検診を受けていたが、いずれも異常は発見されていなかった。

その後も毎年がん検診の案内が届き、妻は、「年に1回はがん検診を受けたほうがいいわよ」と口うるさく言う。が、笠本さんは、「アメリカでは肺がん検診が無効だとわかったんだ。検診などあてにならないよ」と、重い腰を上げようとはしなかったのである(*3肺がん検診の有効性)。

しかし、夫が咳こむ姿をよく目にするようになっていた妻は、「やっぱり病院で検査してもらわなければ、だめよ」と、一段と厳しい口調になった。笠本さん本人もわき腹の痛みがキーンとはっきりとしたものに変わってきたことから、不安が急に拡大する。

笠本さんは以前、節目検診を受けたことのある病院の内科を訪れた。ここで痰の検査と胸部X線撮影を受ける。検査の結果、A医師はこう告げた。

「胸に腫瘍のカゲが見られます。おそらく肺がんだと思います。診断の確定と治療は、胸部外科のある専門病院で受けたほうがいいでしょう。紹介状を書きましょう」

予想できないことではなかったが、笠本さんは雷に打たれたようなショックに襲われた。


診断の確定 すでに胸水も見られた

[肺がんの種類]
グラフ:肺がんの種類

確定診断*4)を受けるために笠本さんは、病院に3泊4日の検査入院をする。初日は再度のレントゲン撮影やCTによる検査を受けた。また、気管支鏡を用いて肺組織を採取する病理組織学的検査を受け、腫瘍マーカー検査のために採血された(*5肺がんの病理組織学的分類)。

さらに翌々日、笠本さんはがんの進行状態を見極めるために、骨シンチグラフィ、頭部MRIなどの検査を受けた。これらの検査の結果、B医師は笠本さんにこう告げている。

「がんは左肺の肺門部にあり、すでに直径7センチの大きさになっています。他臓器への転移はないようですが、リンパ節にも転移があり、肺の中にも2カ所の転移があって、胸水も貯まっています。かなり厳しい状態です」

笠本さんは、事態が深刻であることを改めて思い知らされたのである。わき腹の痛みは、がん細胞が胸膜を圧迫したために起こっていたことを教えられた。

1時間以上かけて、B医師はていねいに説明していった。肺がんは進行度から1期、2期、3A期、3B期、4期と分類されるが、笠本さんは「3B期の進行がん」と診断された。

手術ができるがんではない

次にB医師は治療法について説明した。肺がん治療の基本である切除手術*6)に関してB医師はこう話している。

「あなたの進行状態では、すでに胸水の中にがん細胞が認められており、手術は効果がありません。また、放射線治療*7)も、胸水にがん細胞がある場合には適応とはなりません。もっとも適切な治療は化学療法であると思われます」

手術ががん治療の決め手であると思っていた笠本さんは、ここで改めてがっくりとしたのである。それでも、「何か他に方法があるのではないか」と食い下がり、笠本さんはB医師にこんな相談をしてみた。

レーザーや重粒子線、陽子線などを利用した治療法*8)があるということを聞いたことがありますが、こちらの可能性はどうでしょうか?」

治療法の選択

笠本さんは、自分の状況の厳しさを思い知らされる中で、「これから何年生きられるかがはっきりしないということなら」と、ここで考えが浮かんだ。B医師にこんな要望を出している。

「今は、やりかけの仕事をしながら、毎日をできるだけ有意義に過ごしたいと思います。通院で化学療法を受ける*9)ことはできないでしょうか?」

B医師はこう答えた。

「うちでは、化学療法は入院で受けてもらっています。しかし、外来で化学療法をしている病院の呼吸器内科の先生を知っていますから、ご紹介しましょう」

こうして笠本さんは、またも転院することになったのである。

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