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全身化学療法としてジェムザール+アブラキサンを用いた臨床試験が進行中

局所進行膵がん最新トピック 化学療法先行TS-1併用放射線療法に大きな期待

監修●須藤研太郎 千葉県がんセンター消化器内科主任医長
取材・文●柄川昭彦
発行:2017年8月
更新:2017年10月

  

「局所進行膵がんに対して、化学療法先行したTS-1併用放射線療法には期待が持てます」と語る
須藤研太郎さん

他のがん種と比べても治療が厳しいとされる膵がんだが、現在手術ができない局所進行例に対して新たな取り組みが行われている。それが、化学療法を先行して行い、その後局所治療としてTS-1を併用した放射線療法を行うというもの。なかには腫瘍が縮小して手術が可能になる例が出ているなど、大きな期待が寄せられている。

重要な血管に浸潤していて手術ができない

膵がんは進行の程度によって、「切除可能例」「局所進行例」「遠隔転移例」という3つの段階に分けることができる(図1)。

遠隔転移例は、肝臓、肺、腹膜など、膵臓から離れた臓器に転移がある場合。局所進行例は、そうした転移は起きていないが、膵臓の周囲にある大きな血管にがんが浸潤(しんじゅん)していて、切除手術の対象とならない膵がんである。そして、遠隔転移も重要な血管への浸潤もない場合が、切除可能例ということになる。

この3つの進行段階の膵がんについて、千葉県がんセンター消化器内科主任医長の須藤研太郎さんは、次のように説明する。

「膵がんが見つかった時点で、遠隔転移があるケースが50~60%、局所進行例が20~30%程度あります。切除手術が可能な膵がんは、全体の10~20%程度です」

『膵癌診療ガイドライン』では、この3つの段階に対して、次のような治療が推奨されている(図2)。切除可能例に対しては、切除手術と再発予防のための補助療法を組み合わせる。遠隔転移例に対しては、全身療法である化学療法が選択される。そして、局所進行例に対しては、化学放射線療法か化学療法のどちらかを行うことになっている。

「化学放射線療法は、化学療法と放射線療法を同時に行う治療法です。局所進行例に対して、化学放射線療法がいいのか、化学療法がいいのか、結論は出ていません。ガイドラインでも両者が併記されているのが現状です」

図1 進行別膵がん
図2 『膵癌診療ガイドライン』に基づく治療方針

TS-1を用いた化学放射線療法

膵がんの化学療法では、従来はジェムザールかTS-1が単剤で使用されていた。

「この2つの薬は、効果がそれなりに期待できるのに加え、副作用のマネージメントがしやすいのが特徴です。これに加え、最近は、ジェムザールとアブラキサンの2剤併用療法と、FOLFIRINOXという4剤併用療法が、遠隔転移例の標準治療として行われるようになっています。FOLFIRINOXは効果が高いと言われていますが、副作用も強いので、この治療を受けられる人はかなり限られます。この2つの併用療法のどちらが良いかは、比較試験が行われていないので、わかっていません」

これらの併用療法は、基本的には遠隔転移例に対して有効性が認められている治療法である。局所進行例に対しては、データとしてはあまりないのだが、遠隔転移例と同様に効果が期待できるだろうと考えられており、積極的に行われるケースが多いという。

一方、化学放射線療法には、放射線療法とTS-1を組み合わせる方法と、ジェムザールを組み合わせる方法がある。

「当院で行っているのは、TS-1と放射線療法の組み合わせです。TS-1+放射線療法とジェムザール+放射線療法を比較した臨床試験はありませんが、ジェムザールと放射線療法の組み合わせは、副作用が強く出る傾向があります。そのため、投与量を減らすなどの工夫を行っている施設が多いようです。その点、TS-1は放射線との併用でも、通常の1日量を投与できます」

ジェムザール=一般名ゲムシタビン TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム アブラキサン=一般名ナブパクリタキセル FOLFIRINOX=5-FU(一般名フルオロウラシル)+エルプラット(一般名オキサリプラチン)+イリノテカン(商品名カンプト/トポテシン)+レボホリナートカルシウム(商品名アイソボリンなど)を組み合わせた4剤併用療法

TS-1併用放射線療法で見えてきた課題

2011年、須藤さんたちは、34例の切除不能な局所進行膵がん患者を対象に、TS-1を併用した放射線療法の第Ⅱ相試験の結果を論文に発表している。

治療の流れは、放射線療法として1回に1.8Gy(グレイ)を28回、計50.4Gyを照射する。1週間に5回照射するので、照射期間は5週半に及ぶ。TS-1の内服は、2週連日投与し、1週休薬というサイクルを2回繰り返す。

そして、この治療を行っても、がんが消失することはないので、その後もTS-1による維持療法を基本的には腫瘍が増悪するまで継続するという流れだ。

「この第Ⅱ相試験を行ったところ、がんの縮小を示す奏効割合は41%、生存期間中央値は16.8カ月と、比較的良好な成績でした。治療を受けた患者さんの中には、5年以上の長期生存の方もおられます」

ただしその一方で、半分以上の症例で、最終的には遠隔転移が出てきてしまうことも明らかになった。そこで、それを改善するための治療方法が考え出されたという。

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