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ジェムザールとTS-1の併用など、新たな治療法に光明が
治療が難しい「再発膵がん」の最新治療

監修:中森正二 国立病院機構大阪医療センター統括診療部長
取材・文:塚田真紀子
発行:2009年5月
更新:2019年7月

  
中森正二さん
国立病院機構大阪医療センター
統括診療部長の
中森正二さん

見つかった時には、すでに転移していた――。がんの中でも最も治療が難しいとされる膵がん。
早期発見が難しく、さらには再発率も高いというのが大きな特徴だ。現在、再発した膵がんに対しては、抗がん剤による治療が中心。
ただここにきて、抗がん剤とワクチンとを併用した新たな治療方法の開発も始まっている。再発膵がんの最新治療を紹介する。


手術ができれば8割の人は約1年生きられる

膵がんは、他のがんと比べて、治りにくい病気です。それがはっきりとわかるデータがあります。

このデータは、1年間に各がんにかかった人(罹患数)と死亡数とを比べています。

[年間罹患数(2001年)と死亡数(2005年)]

  順位 罹患数(A) 死亡数(B) B/A(%)
1 肺がん 70,619 62,061 88%
2 胃がん 107,726 50,307 47%
3 大腸がん 100,137 41,097 41%
4 肝がん 40,472 34,265 85%
5 膵臓がん 20,667 22,926 111%
国立がん研究センター がん対策情報センター がん情報サービスより

それぞれの年代が異なるので少し正確でないところもありますが、膵がんの罹患者数に占める死亡数は100パーセントを超えており、他のがんよりも圧倒的に高いことがわかります。さまざまな治療にもかかわらず、罹患者数とほぼ同数が膵がんで亡くなっているのです。つまり膵がんになった人は何年間かのうちに、だいたい亡くなっている。それが、膵がんという病気です。

なぜこれほど亡くなる方が多いかと言えば、当然のことながら、膵がんが見つかりにくいがんだからです。ほとんどの人は転移のある4a期や4b期で見つかります。

膵がんの唯一の根治的な治療法は手術ですが、膵がんが見つかった時点で、根治手術(目に見えるがんの部分をすべて取り去ることができる手術)を受けられる人は、全体の2~3割でしかありません。

残念ながら、膵がんを早期に見つける方法はありません。膵管が拡張していたり、膵臓に小嚢胞ができていたりする、ハイリスクの人たちを長期間、腹部エコー(超音波)検査でずっと経過観察していても、膵がんを発見した時には、4期で発見されることがほとんどであると報告されています。

また、膵がんの診断のきっかけとして、糖尿病が急に悪化した場合に、検査で膵がんが見つかることはありますので、できるだけ膵がんの専門家のいる施設で検査を受けることが大切です。

膵がんの治療方針は日本膵臓学会の治療ガイドラインで決まっています。ステージ(病期)によって治療法が異なるのは、他のがんと同じです。

1~3期は手術が可能です。そして、がんが膵臓周辺の血管にまで広がっている4a期でも、根治手術できる場合はあります。がんの浸潤している血管が門脈だけであれば、がん周辺の臓器やリンパ節とともに門脈の一部を切り取る根治手術ができます。

手術ができれば、8割程度の人は1年は生きられます。現在、根治手術の1~2カ月後に、補助療法として、抗がん剤治療を行うことが一般的になっています。

[膵がんの診療ガイドライン]
図:膵がんの診療ガイドライン

3年以内に9割が再発する

膵がんでは、手術した人のほぼ半数以上が1年以内に再発します。3年以内には9割近くが再発します。

日本膵臓学会の調査によると、手術できた膵がんのうち、約80パーセントを占める4期(4a、4b期)の人の5年生存率は10パーセントぐらいです。最近は、4期の中でも進行の程度がひどい場合は手術しないことも多く根治手術の割合が高くなり、また、再発後の抗がん剤の効果も向上してきたためか、手術した人全体の5年生存率は2~3割と少し成績がよくなっています。ただし、ほとんどの人でがんが再発します。1期でさえ、5年生存率は約53パーセントにとどまります。

[膵管がん切除例の予後(膵がん登録2007:1991~2000年登録例)]

ステージ 5年生存率
ステージ 1 (n=78:  2.2%) 52.50%
ステージ 2 (n=125: 3.5%) 46.20%
ステージ 3 (n=666: 18.3%) 27.70%
ステージ 4a(n=1249: 35%) 11.30%
ステージ 4b(n=1493: 41%) 4.20%

術後に再発した方の平均的な生存期間に関してはいくつかのデータがありますが、抗がん剤などの治療の効果がない場合は、再発がわかってからだいたい3~6カ月と言われています。

膵がんの特徴は、他のがんにくらべて、1~3期で再発する人が多いことです。そもそも手術した範囲で、がんが取りきれていれば治るはずです。根治手術したのに再発する人は、もともと遠隔転移のある4b期なのです。手術で取った範囲外に、目に見えないがんの浸潤や転移が存在していて、それが増殖してくるわけです。

乳がんや胃がんで早期だと言われる1センチのがんが、膵がんでは1~2ミリのがんに相当するのかもしれません。がんの進行度は、単に腫瘍の大きさだけでは測れません。

再発した人で長生きできるのは、きっちりとした手術を受けて、手術した部分からの局所再発のない人に多く見られます。抗がん剤にも反応しやすい傾向があります。一方、局所の再発があると、痛みがあったり、ご飯が食べられなくなったりと、全身状態が悪くなります。

ですから、きちんとした手術を受けられる施設を選ぶことが肝心です。年間20~30例以上の手術していることが、1つの目安です。

術後は、再発を見逃さないために、定期的な診察と、腫瘍マーカーや画像による検査を続けていきます。ただし、術後の再発を早期に発見したことで、生存率がよくなったというデータはありません。

再発は、局所や肝臓、腹膜に重複して起こることがほとんどです。そのため、再手術や放射線療法の適応になる人は極めて少なく、ほとんどの人にとって、抗がん剤治療しか選択肢はありません。

現在、切除不能な膵がんに対して、抗がん剤治療を行ったほうが、明らかに生存率が上がることから、再発した人の場合にも、抗がん剤治療の効果は期待できます。


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