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『膵癌診療ガイドライン』のポイントをわかりやすく読み解く 最難関のがん。化学療法の進歩で大きく変わった

監修●田中雅夫 九州大学大学院臨床・腫瘍外科学教授
取材・文●町口 充
発行:2008年5月
更新:2019年7月

  
田中雅夫さん
九州大学大学院
臨床・腫瘍外科学教授の
田中雅夫さん

膵がんの治療の基本は、『膵癌診療ガイドライン』に記されている。ガイドラインは、エビデンス(科学的根拠)を基に、効果が証明された、その時点でベストの検査と治療が紹介されている。ただ、『膵癌診療ガイドライン』は医師向けにしか発行されていない。そこで、それを患者さん向けにわかりやすく解説してみた。

2006年に初版が発行された

膵がん診療の指針となる『膵癌診療ガイドライン』の初版が刊行されたのは、2006年のことだった。日本膵臓学会に膵癌診療ガイドライン作成小委員会が作られ、委員長の田中雅夫さん(九州大学大学院臨床・腫瘍外科学教授)を中心に、2004年から作成作業がスタートした。他のがんの診療ガイドラインと同様、EBM(エビデンス・ベースド・メディシン=科学的根拠に基づく医療)の手法を用いて、国内外の研究結果に基づいた診療指針が提供されている。

作成に当たった田中さんは、このガイドラインについて次のように述べている。

「すでに他のがんの診療ガイドラインが何種類も出ていましたから、それらのよいところを参考にしながら編集を進めました。新しいものほどわかりやすくなっていますからね。このガイドラインは医療者を対象にしていますが、一般向けのガイドラインが不要だと考えていたわけではありません。財力的にも、人員的にも、余裕がなかったというのが、医療者向けだけになった理由です」

将来的には一般向けが出る可能性もありそうだ。ただ、医療者向けしかない現在、ガイドラインの内容を理解するには、わかりやすく解説してもらう必要があるだろう。

無作為化比較試験が少なく根拠はまだ不十分

『膵癌診療ガイドライン』とその中身

『膵癌診療ガイドライン』とその中身。グレードAの推奨を受けたものは少ない

まず、『膵癌診療ガイドライン』の大まかな構造について説明しておこう。

巻頭に「序~膵癌診療ガイドラインについて」があり、次に「膵癌診断のアルゴリズム」と「膵癌治療のアルゴリズム」が入る。ここで、診断と治療が、それぞれどのような流れで行われるかが明示されている。

そして、次がガイドラインの中心ともいえる「診療ガイドライン」で、CQ(クリニカル・クエスチョン=臨床上の疑問)を設定し、それぞれに回答する形で、診断や治療に関する指針が提示されている。各CQに対して、「推奨」「エビデンス」「明日への提言」「引用文献」といった項目が並ぶ構成だ。

「推奨」には、どのような診断や治療が推奨されるか(あるいは推奨されないか)が記述され、それぞれにグレード(推奨度)がつけられている。A~Dのグレードは、次のような内容を意味している。

A……行うよう強く勧められる。

B……行うよう勧められる。

C……行うよう勧めるだけの根拠が明確でない。

D……行わないよう勧められる。

「エビデンス」には、推奨する(あるいは推奨しない)理由が、根拠となる研究を明らかにしながら解説されている。

「明日への提言」は、この診療ガイドラインの大きな特徴だ。「RCT=無作為化比較試験(臨床試験)はないが、今後につながりそうな試みや、作成委員の個人的な意見などを”明日への提言”として挿入した」と序には書かれている。

田中さんによれば、膵がんの診療に関する無作為化比較試験は、まだ数が少なく十分な結果が出ていないという。EBMを重視すると言っても、無作為化比較試験で明らかになっている内容だけでは、現実的な診療指針を提供できない部分もある。そこで、「明日への提言」として、まだ根拠が明確になっていない内容も加えてあるのだ。EBMに固執して「使えないガイドライン」を作るのではなく、柔軟な対応で「使えるガイドライン」になっている。この点は評価されるべきだろう。


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