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進行別 がん標準治療
手術で治癒を、放射線化学療法、抗がん剤治療でできるだけの延命を

監修:木下平 国立がんセンター東病院外科部長
古瀬純司 国立がんセンター東病院肝胆膵内科医長
取材・文:祢津加奈子 医療ジャーナリスト
発行:2005年6月
更新:2019年7月

  
木下平さん
国立がん研究センター東病院
外科部長の木下平さん
古瀬純司さん
国立がん研究センター東病院
肝胆膵内科部医長の
古瀬純司さん

膵臓がんは、がんの中でも、とりわけ治療が困難ながんとして知られています。
治療が困難な理由のひとつは早期発見の難しさにあります。特徴的な症状がないこと、検査でも見つけにくいことがその原因です。もうひとつの理由は、がんが早期のうちから浸潤、転移しやすいことです。

しかし、最近は、手術方法の改良や、放射線と抗がん剤の併用療法、抗がん剤の発展によって、かなり膵臓がんをコントロールできるようになってきています。

最も手ごわいがん

がん治療が進歩した現在、一口にがんといっても胃がんや子宮頸がんのように割合治りやすいがんと治りにくいがんが、はっきりしてきたと言えます。残念ながら、その中でも一番手ごわいがんのひとつとされているのが、膵臓がんです。

欧米に比べれば発症率は少ないとは言え、日本では年間1万8000人が膵臓がんと診断されています。そして、膵臓がんで亡くなる人も年間1万9000人以上にのぼります。

国立がん研究センター東病院肝胆膵内科医長の古瀬純司さんは、「胃がんや大腸がんでは、年間死亡者数は罹患者数の半分ぐらいです。たとえば、胃がんの場合は年間約10万人が罹患し、死亡者数は5万人。それが、膵臓がんでは罹患者数と死亡者数がほぼ同じです。ということは、さまざまな進行段階で発見されても、トータルでみると平均して診断から1年ぐらいで亡くなっているということなのです。これをみても、いかに厳しいがんかがわかると思います」とその深刻さを語っています。この20年ほどを振り返っても、治癒率にはあまり大きな変化はないといいます。

早期発見が難しい理由

早期発見例が少ないことも、その大きな原因です。膵臓がんの場合、放射線や抗がん剤による治療も行われていますが、手術でがんを取りきることが、唯一の完治への道です。ところが、膵臓がんは、正常な組織の中にしみ込むように広がっていく特徴があるため、がんと正常組織との境界がはっきりせず、検査で見つけにくいのです。また、膵臓は体の奥にあり、膵臓がんを標的として検査をしなければ、発見が難しいこともあります。特徴的な症状にも乏しく、どういう人がなりやすいかもはっきりしていません。つまり、発見時にはすでに進行していて、手術の適応にならない場合が多いのです。

実際に、国立がん研究センター東病院の場合、膵臓がんと診断されて手術可能な人は4分の1程度、肝臓や腹膜播種など遠隔転移を起こしている例が半数を占めるといいます。さらに割合早い時期から転移を起こすことも、治りにくい一因と考えられています。どの部位のがんでも、がんは早期発見が重要であることは言うまでもありませんが、とりわけ膵臓がんは、早期発見が重要ながんなのです。

しかし、その一方で手術による合併症の発現や死亡は、大きく低下しています。以前は、膵臓がんは手術による死亡も少なくありませんでした。国立がん研究センター東病院外科部長の木下平さんは、「私たちの施設では、切除した膵臓の縫合やドレーン(管)の留置をシンプルにすることで、ここ数年はほとんど手術による合併症で死亡することはなくなっています。全国的にもこうした方法をとる施設が増えています」と語っています。そういう意味では、安全に手術が行えるようになってきたのです。

一方、化学療法では膵臓がんに有効性が証明されたものはなかったのですが、1997年、従来からよく使われてきた5-FU(一般名フルオロウラシル)とジェムザール(一般名ゲムシタビン)の無作為化比較試験の結果、ジェムザールの有効性が証明されました。これによって、状況は一変。ジェムザールが膵臓がん治療の第1選択薬となっています。

[各種がんの罹患数と死亡数]
各種がんの罹患数と死亡数
[膵臓の仕組み]
膵臓の仕組み
膵臓は、十二指腸に近いほうから「膵頭部」「膵体部」「膵尾部」に分けられる。
内部は膵管が網の目のように走っており、その中心にあるのが主膵管
[膵臓の位置]
膵臓の位置
膵臓は長さ20cmほど、ピストルのような
形をした臓器。胃の後ろ側にある


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