胃がんの基礎知識:胃がんをよく知ろう 多彩な特徴のある胃がん 適切な治療選択を
北里大学医学部消化器内科学主任教授の小泉和三郎さん
日本人のがん罹患数を見ると、最も多いのは胃がん。死亡率は肺がんに次いで2番目だ。がんの仕組みから、対処法、治療の展望までを2014年3月の日本胃癌学会総会の会長を務める北里大学の小泉和三郎さんに聞いた。
胃がんってどんな病気?
胃には、いろいろな食べ物が入ってきます。そして、食べられたものに含まれるタンパク質をバラバラにする胃液という酸性の消化液が出ています。細菌が住みついて胃粘膜を荒らすこともあります。さまざまな刺激にさらされることで、胃がんは胃の粘膜から発生します。
胃がんは症状がでにくいことが多いがんです。一番の特徴は多彩であること。進行の速いものから遅いもの、未分化がんなどいろいろあります。一方で、胃がんは消化器がんのなかで大腸がんと並んで早期にみつかれば治りやすいがんのひとつです。早く診断し、最も適切な治療方法を主治医と相談することが大切です。
ピロリ菌との関係は?
ピロリ菌が、胃がんの最も大きな原因であることは明らかになっています。若年期に感染することが多い菌です。慢性胃炎、萎縮性胃炎の原因となり、胃粘膜が萎縮して炎症が強くなると、がん化します。
ピロリ菌の除菌に対しては、これまで消化性潰瘍などには保険適用されていましたが、今年2月に初期症状である慢性胃炎に対しても保険が適用されることになりました。とても大きな進歩です。
1度除菌すると、再燃しないことがわかっています。これまでになかった、胃がんの予防の手段ができました。
進行度はどう見るの?
がんの進行度は病期(ステージ)という言葉で示します。病期により治療方法が変わります。がんが胃の壁にどれだけ深くもぐっているかという深達度とリンパ節やほかの臓器に転移があるかで決まります。
ⅠAとⅠBは早期がんとされ、治る可能性がきわめて高い病期です。
ⅢA、ⅢBは進行しているものの、まだ手術によって治る可能性があります。
Ⅳは、遠くの臓器にも転移しいていて、現在の医学では治すのが難しい病期です。
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