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悪性度の高いスキルス胃がんにもこれだけ武器が出てきた!
分子標的治療薬の研究が進み、スキルス胃がん治療に光が見えてきた

監修:八代正和 大阪市立大学大学院医学研究科准教授
取材・文:増山育子
(2009年4月)

八代正和さん
大阪市立大学大学院
医学研究科准教授の
八代正和さん

スキルス胃がんというと、その「タチの悪さ」で一際恐れられる胃がんだ。

これまでの治療成績では、手術をしても術後の5年生存率は10~20%であった。しかし、現在、分子標的治療薬の臨床試験が 進んだり、新薬候補となる物質が見出されるなど「手の施しようがなかった」状況から脱却しつつある。


スキルス胃がんと一般の胃がんの違い

胃がん全体の約10%を占めるスキルス胃がんは、胃がんの中でも悪性度が高く、早期の発見が難しいといわれる。がん細胞が粘膜の下に潜るように広がりながら増えていくため、表面の病変が小さいためだ。

「X線や内視鏡検査による胃表面の形状観察では一見、正常の胃と区別がつきにくく、また、がん細胞が粘膜の下にいるので粘膜を採取して顕微鏡で観察しても、がん細胞が見つからないこともあります」と大阪市立大学大学院医学研究科准教授の八代正和さんは言う。

難しいとはいえ、胃全体が縮み上がるような形になるので同じ施設で検査を受けて前回の画像と注意深く比較すれば、早期に見つけることが不可能というわけではない。

また、難しい点は、他の胃がんと比べて進行が早く、診断されたときには約半数の患者に腹膜転移などの遠隔転移が見られることだ。これは肉眼的分類では4型と定義されている胃がんにほぼ相当する。一般の胃がんが見つかるくらいの大きさ(1センチ程度)になるまで数年から10年かかるのに対し、前年の検診ではなにもなかったのに、翌年進行して発見されたというケースもある。

スキルス胃がんでは、腹膜播種と呼ばれる特徴的な転移が高い割合で起こる。

がんの転移は血液やリンパ液の流れに乗って他の臓器に広がっていくケースが多いが、スキルス胃がんの場合、がん細胞が胃壁の外側に突き進んでお腹の中にこぼれ落ち、腹腔内の臓器を覆っている腹膜にくっついて散らばっていく。

「お腹の中に落ちたがんが種だとしたら、腹膜という土壌で種を撒いたように広がっていくのが腹膜播種です。お腹の中の広い範囲に小さな転移がたくさん起こるため、手術ができないことが多いのです」(八代さん)

腹膜播種があると、腹膜に炎症を起こし、症状として腹水がたまったり、腸閉塞を起こしたりするようになる。発見も治療も難渋する、やっかいながんだ。

近年、胃がん全体の死亡率は減少しているが、スキルス胃がんに関しては5年生存率が10~20%程度という。

[スキルス胃がんが進展していく過程]
図:スキルス胃がんが進展していく過程

スキルス胃がんの治療も第1選択は手術

スキルス胃がんの治療は、標準的な治療方法が確立されていないため、胃がん治療のガイドラインに準じて選択されることが多い。胃がんのもっとも有効な治療手段は外科手術である。

進行がんでは胃切除と2群までのリンパ節郭清が標準的手術とされており、スキルス胃がんも基本的には手術が第1選択だ。

スキルス胃がんの手術は、腹膜播種があるかないかが大きなポイント。八代さんは「腹膜播種などの遠隔転移がなければ、術式は胃切除(胃全摘術が多い)および2群までのリンパ節郭清で、術後の補助化学療法を加えるのが現時点で考えられる最良の治療法」と話す。しかし、たとえ手術可能と判断しても、結果的に完全にがんが取りきれたと考えられる手術は半数程度にすぎないという厳しさだ。

八代さんは「術前に判断していた病期よりも進んでいて、予定していた術式の変更を余儀なくされることもあり、最近20年間のスキルス胃がん手術症例の推移を見ると、予後に明らかな改善は見られません。つまり、スキルス胃がんの手術レベルはほぼ限界に達していることがうかがえるのです」と指摘する。

だからといって打つ手がないわけではない。「根治を目指した手術後に、TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)を使った抗がん剤治療を行うと、再発が少なくなるというデータが出ました。再発の可能性がより高いと思われる場合は、シスプラチン(商品名ランダブリプラチンなど)を加えます」(八代さん)というように、化学療法に希望が見出せるようにもなってきた。

手術不能の場合でも化学療法が有効

腹膜転移がある場合、手術で根治が望めないため、抗がん剤を用いた化学療法となる。その中心となる薬剤がTS-1だ。

「手術が可能な場合でも、手術前に抗がん剤でまずがんを縮小させて、がんの取り残しを少なくし、術後再発の予防を目的とする術前補助化学療法があります。そこでTS-1を服用することが多いです」(八代さん)

八代さんによると、スキルス胃がんのみを対象として投与を行った臨床試験はないものの、TS-1は未分化がん(細胞起源が形態学的に把握できないもの)に高い奏効率を示し、腹膜転移例に対しても有効とのデータがある。さらに、TS-1にシスプラチンを併用する方法では、より高い奏効率が報告されているという。

シスプラチンを併用するかどうかについては患者の体力等を考慮して判断される。TS-1とシスプラチンの併用療法は、1日2回TS-1の内服と、シスプラチンの点滴というコース。TS-1は4週間飲んで2週間休薬という飲み方が推奨されているが、飲み方や量を変える方法もある。ただ、TS-1は内服薬なので、腸閉塞などで飲めなかったり、腎機能低下のため、シスプラチンが使えないこともあり、そのような例ではタキサン系の抗がん剤に変更する。


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