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手術が第1選択。でも化学療法も少なくない
増えている子宮体がん 副作用の少ない化学療法に期待が集まる

監修:加藤久盛 神奈川県立がんセンター婦人科医長同センター手術部長 神奈川産科婦人科医会当理事
取材・文:池内加寿子
発行:2012年2月
更新:2013年4月

  

加藤久盛さん
子宮体がんの化学療法として
TC療法を提案する
加藤久盛さん

あらゆる年齢層で増えている子宮体がん。治療は手術が基本だが、化学療法が行われるケースも約4割あるといわれる。
『子宮体がん治療ガイドライン2009年版』に沿って、子宮体がんの治療の流れと化学療法の現状について解説してもらった。

子宮体がんは、子宮内膜に発生

[子宮頸がんと子宮体がんの年間推移]
子宮頸がんと子宮体がんの年間推移

出典:日本産科婦人科学会、1983-2007年

子宮体がんは、子宮体部の内膜に発生するがんで、子宮頸がんとは異なる。

「以前は子宮頸がんが多かった日本でも、子宮体がんが年々増えています。全国的な流れで1期を除けば、子宮体がんと頸がんの比率はほぼ同じか、子宮体がんが上回ってきています」

こう説明するのは、神奈川県立がんセンター婦人科医長の加藤久盛さんだ。子宮体がんは50~60代の閉経後の女性に多いと言われるが、最近では、若い女性も少なくないという。

子宮体がんの多くは、女性ホルモンが関係するエストロゲン依存性のタイプであり、閉経が遅い、妊娠や出産経験が少ないなどがリスクになる。このほか、肥満、高血圧、糖尿病も、子宮体がんのリスクとされる。

初期症状は、不正出血、茶色の帯下などで、自覚症状で発見される。閉経後の不正出血など、異変に気づいたら早く婦人科へ受診することが大切だ。

「子宮体がんの5年生存率は当センターの場合、1期で95パーセント以上、2期で92.3パーセント、3期で70パーセント、4期で25パーセントです。1~2期であれば比較的経過もよいので、早期発見、早期治療が重要です」(加藤さん。以下同)

治療の基本は手術

[子宮体がんの広がり方と病期の区分]
子宮体がんの広がり方と病期の区分

子宮体がんは、子宮内膜から筋層、子宮頸部、腟方向に進展する。卵管、卵巣、骨盤リンパ節、腹腔などに転移しやすい。進行すると、膀胱や直腸、肺などに転移することもある

   子宮体がんが疑われたらまず、内診、細胞診、病理組織検査、超音波・CT・MRI等の画像検査などを行い、病期を推定し、治療法を選択することになる。

「子宮内膜異型増殖症という前がん状態でも、従来は0期に分類されていました。がんが子宮体部にとどまっていれば1期、子宮頸部に浸潤があれば2期、卵巣・卵管や腟壁に広がっていたり、リンパ節に転移で3期になります。そして、膀胱、腸粘膜への浸潤や、他臓器に遠隔転移があれば4期となります」

子宮体がんの第1治療は、手術が基本となる。「子宮内膜異型増殖症(0期)でも、実際に手術してみるとがんを伴うケースもあるので、妊娠を望まない場合は子宮を摘出することをお勧めします」

がんの組織型と分化度も、予後に関わる因子であり、治療法選択のポイントになる。組織型では、比較的予後のよい類内膜腺がんが8割を占めるが、それ以外の漿液性腺がん、明細胞がん、粘液性腺がんなど特殊なタイプは転移のリスクが高い。類内膜腺がんは、がん細胞の分化度から、高分化型(G1)、中分化型(G2)、低分化型(G3)に分けられ、分化度が低いほど、悪性度が高くなる。推定ステージとこれらの要素により、術式が選択される。

1期の手術は単純子宮全摘出術が基本

[1・2期における治療の流れ(出典:子宮体がん治療ガイドライン)]
1・2期における治療の流れ

子宮体がんの手術は、子宮を摘出する3つの術式「単純子宮全摘出術」「準広汎子宮全摘出術」「広汎子宮全摘出術」のいずれかと、「付属器摘出」、「骨盤リンパ節(+傍大動脈リンパ節)郭清」を組み合わせて選択される。

1期は「単純子宮全摘出術」+「両側付属器の摘出」が基本術式として推奨される。だが医療機関により、周囲の組織を含めてやや広く切除する「準広汎子宮全摘出術」が選択されることもある。

「単純子宮全摘出術は子宮全体を摘出するシンプルな術式で、排尿障害などの合併症が少ないのが利点です。当がんセンターでは、再発しやすい腟壁の一部を含めて切除します。1a期までは通常、リンパ節郭清は省略します。一方、1期でも再発リスクの高い組織型や低分化型のがん、または筋層まで浸潤している1b~1c期以降はリンパ節に転移しやすいので、骨盤リンパ節、またはこれに加えて傍大動脈リンパ節まで郭清することもあります」

早期のがんでも卵巣を摘出するのはなぜか。

「術前の検査ではわからない微小な転移が1期で5パーセント、2期では10パーセントあるので、再発を防ぐのが目的です」

2期以降の手術は医療機関によって異なる

[3・4期における治療の流れ(出典:子宮体がん治療ガイドライン)]
3・4期における治療の流れ

2期に対する術式は、「子宮頸部間質に浸潤があれば、広汎子宮全摘出術または準広汎子宮全摘出術が望ましい」とされているが、専門家でも意見が分かれ、各医療機関に任されているのが実情だ。

「広汎子宮全摘出術は、子宮を支える基靭帯を含めて骨盤近くまで大きく切除するため、排尿障害を起こすことが多いのです。単純子宮全摘出術にとどめて、患者さんのコンディションがよい状態で、化学療法に移行するほうがよいとする意見もあります」

3期、4期では、術後に化学療法が追加されることが多い。「進行したがんでは、転移の可能性があるので、手術で負担をかけないように、基本術式の単純子宮全摘出術+両側付属器摘出と骨盤リンパ節郭清を行い、全身治療の化学療法に持ち込むのが最近の主流になっています。4期でも子宮摘出手術をするのは、子宮からの出血を止めるためです。また、がんを減らすことで、化学療法が効きやすくなることも期待できます」


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