「また1年生きることができた」と歳を取ることがうれしい 社会人1年目で発症した悪性リンパ腫
GONさん シンガーソングライター
会社に入って間もなくの19歳のとき、突然、悪性リンパ腫を発症したGONさん。つらい抗がん薬治療中に出会った人々との交流がこころの支えになった。
寛解して、自分も同じ病で悩んでいる人たちに、なにか貢献出来ることはないかと模索していたとき、友人の一言が人生を決めた。
19歳のとき右首にできた腫れ
現在、音楽ユニット「BUBBLE POST」(ばぶる ぽすと)で、maigoさんと男女デュオとして活動するGONさん(30歳)。高校卒業後、警備会社の営業マンとして働いていた2014年10月、悪性リンパ腫を発症した。GONさんが19歳のときだ。
「初めは、右首に蚊に刺されたような少しプクッとした腫れができたのです。当時、付き合っていた彼女からも『首が腫れてるよ』と言われたりしていました」
しかし、別に痛くも痒くもなかったので、そのまま1カ月くらい放っておいたが、自分でも首の腫れが大きくなったな、と感じ始めていた頃のこと。
取引先の方から、「仕事はいいから。会社に戻って上司に報告して、すぐ病院に行きなさい」と促された。
会社を早退し、郡山の総合病院を受診する。エコーを使って首の腫れの診察を受けた後、医師から「なんかいいものではないようだ」と言われた。その日は土曜日だったので、改めて月曜日に血液検査、MRI、鼻から内視鏡を入れ腫れている細胞を採取する生検などを行なった。
告げられた病名は悪性リンパ腫
検査結果を聞きに、1週間後病院を訪れたGONさんに、告げられた病名は高齢者に多い悪性リンパ腫だった。悪性リンパ腫は、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫に大きく分けられるがGONさんは非ホジキンリンパ腫の中のびまん性大細胞性B細胞リンパ腫(DLBCL)だということもわかった。
びまん性大細胞性B細胞リンパ腫とは、白血球の一種であるリンパ球のうち、Bリンパ球ががん化することで発症する。悪性リンパ腫のなかで日本人に最も多い。
症状としては首や腋の下、足の付け根など病変があるリンパ節に腫れやしこりがあらわれ、多くの場合は痛みを伴わない。進行すると発熱、体重減少、大量の寝汗といった症状があらわれることがある。月単位で進行するアグレッシブ型だが、薬物療法の効果も期待できるといわれている。
「痒くも痛くもなかったので、まさか悪性リンパ腫だなんて思ってもみませんでした。ただ、私の罹った病気の症状の一覧を見たとき、該当する箇所があるなと思いました。それは季節関係なくすごく寝汗をかいていたことです。朝起きると布団がビショビショになるくらい濡れていました。それは首に腫れが見つかる前からそうでしたね。これで熱があるとか、気持ちが悪いなどの症状でもあれば、自分もなにか変だなと思ったと思うんですが、体調不良というところまでは感じていませんでした」
「これで成人式に出席できない」
GONさんが医師から病名を告げられても、テレビドラマによくあるように号泣するということもなく、「あっ、がんなんですか」と、結構ケロッとしていたという。
「その頃の自分は生というものに執着がなく、いつ死んでもいい、とどこかで望んでいたところがあったような気がしています」
そして、病名を聞いて真っ先に頭に浮かんだのは成人式のことだったという。
「ああこれで成人式には出席できない、ということでした。治療が始まれば頭の毛も抜けるし、人前に恥ずかしくて出られない、と思ったことが結構大きかったですね」
GONさんは、地元会津若松で行われる成人式をすごく楽しみにしていた。地元を離れて郡山で寮生活を送っていた彼にとって、しばらく会えなかった地元の同級生たちに再会することは何よりの楽しみだったからだ。
郡山の病院の医師から、「これからの治療を郡山で行うか、それとも地元の会津若松で行うか、どちらを希望しますか」と訊ねられた。GONさんは迷わず地元の病院で治療を受けることに決めた。
2013年11月、地元の病院に転院し、抗がん薬治療が始まった。
悪性リンパ腫はそれぞれの種類で治療法が異なり、非ホジキンリンパ腫の患者に対しては、最も代表的な抗がん薬治療であるR-CHOP(アール・チョップ)療法が行われる。
この治療法はびまん性大細性B細胞リンパ腫の患者に対して行うファーストライン(初回化学療法)の治療で、リツキサン(一般名リツキシマブ)+エンドキサン(同シクロホスファミド)+アドリアシン(同ドキソルビシン)+オンコビン(同ビンクリスチン)+プレドニン(同プレドニゾロン)多剤併用療法だ。この療法を3週間を1コースとし、6コース行った。
副作用が本当にしんどかった
「当時、悪性リンパ腫は高齢者の病気だとの認識があり、病院でも僕と同じ年齢の患者さんは1人もいませんでした。主治医も僕の歳で罹るのはあまり見かけない、と言っていました。若いからがんの進行はすごく早い、でもその代わり薬の効果も物凄くあるから、絶対治療を受けて、と言われました」
しかし、副作用は相当なものだったようでGONさんはこう語る。
「抗がん薬の治療は本当に苦しかったですね。今後、再発したとしても2度とこの治療は受けたくありません。まず、どうしようもない倦怠感に襲われるんです。治療を受けると体中の皮膚という皮膚から薬の臭いが出ているのがすごくわかるんです。それは耐えられないほどの臭いです。それを嗅ぐと嘔吐してしまうほど。もちろん毛は全部抜けてしまい、生きていくうえで自分に自信がなくなりそうでしたね。あと、便秘がひどかったです。3週間便が出ないこともあり、本当にしんどかったです。もう2度と経験したくありません」
GONさんが受けた多剤併用のR-CHOP療法。
「それは1カ月に一度、薬を投与するのですが、3週間目から1週間だけ体がすごく楽になる期間があるんです。それで次の薬の投与が再開されると、また3週間はしんどい思いをしなくてはならない、その繰り返しが6カ月続きました」
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