10センチ大の腫瘍、人工肛門……俳優業は、もうできないと思いました 希少がんGISTを乗り越え、見事復帰した俳優・相島一之さん(54歳)

取材・文●吉田健城
撮影●「がんサポート」編集部
(2016年3月)

  
あいじま かずゆき
1961年埼玉県熊谷市出身。立教大学在学中に劇団テアトルジュンヌに入団し、演劇を始める。87年に東京サンシャインボーイズに入団、その後は舞台、テレビ、映画と幅広く活躍する。病気後、2010年にはブルースバンド「相島一之&THE BLUES JUMPERS」を結成、音楽活動を開始。12年には立川志らく師匠と組んで、落語にも挑戦している

テレビドラマで一癖も二癖もある役どころを演じることの多い俳優の相島一之さんは、2008年に希少がんの1つ GIST(消化管間質腫瘍)を患っていることが判明した。見つかったときには腫瘍の大きさは10センチほどと、野球ボールの大きさまでになっていたという。

細い血便が続き、痔の名医を受診

存在感が際立っている俳優の1人に相島一之さんがいる。シリアスなものからコミカルなものまで役柄は幅広いが、小狡い冷血漢や謎めいたキャラクターを演じればピカイチ、目に焼き付くような演技を見せてくれる。

その相島さんに排便異常が見られるようになったのは、08年1月ごろのことである。

「便意を催してトイレに行っても、すぐに出ないことが多くなったのです。頑張れば何とか出すことができましたが、出てくるのは細い便で、血が付着していたので痔ではないかと思いました」

痔をきちんと治してくれる医者がいないかネットで調べたところ、新横浜に評判のいい専門医がいることがわかったので、08年3月の彼岸前に、その医師のクリニックを訪ねて診てもらった。

ひと通り診察と検査が終わったあと、医師は「相島さん、これは痔ではないです。恐らく、もっと厄介な病気だと思います」と告げ、すぐ大きな病院に行って詳しい検査を受けるよう勧めた。

野球ボール大の腫瘍が判明

その医師に紹介された総合病院でいくつか検査を受けた結果、直腸に野球ボール大(最大径10㎝)の腫瘍があることが判明した。総合病院の医師は、相島さんと同行した奥さんにそのことを伝えた上で、さらに以下の事柄を順を追って簡潔に説明した。

●これは良性ではなく、悪性腫瘍である可能性が高い

●大がかりな治療が必要になることも考えられ、最悪の場合、骨盤内全摘になる可能性もある

●私見では、肉腫である可能性が高く、GIST(消化管間質腫瘍)という病気が疑われる

●GISTであるならば、グリベックという特効薬があるので、それを使って腫瘍を縮小した上で切除するという道が開けるかもしれない

医師はこれらを話し終えたあと、「GISTは患者数が非常に少ない病気なので、GISTかどうかの判断を含めて、治療経験が豊富な施設に行かれることをお勧めします」と言って、都内のがん専門病院あての紹介状を書いてくれた。

GIST(消化管間質腫瘍)=胃、小腸、大腸などに発症する肉腫に分類される、患者数の少ない希少がん。がんが粘膜に発生するのに対し、肉腫であるGISTは粘膜下の筋層に発生する グリベック=一般名イマチニブ

ご自身の手帳をもとに、治療中のできごとを語ってくれた相島さん

グリベックでがんは縮小、手術へ

単なる「痔」だと思っていたのが、大変なことになりそうだ。もう俺はダメなんじゃないか――。漠然とした不安を抱えながら、相島さんは翌週、紹介された都内のがん専門病院を受診した。消化器外科で再度詳しい検査を受けた結果、4月11日に主治医となった医師から、GISTであることを告げられた。

告知のあとGISTという病気がどんな病気か、ひと通り説明があり、そのあと治療方針が示された。

それは、まずグリベックを使って腫瘍を小さくし、その上で腹腔鏡下手術で腫瘍を切除するというものだった。この治療方針に沿って、4月15日に1週間の予定で入院し、16日からグリベックの服用を開始した。

副作用はどうだったのだろう?

「吐き気はなかったのですが、倦怠感はありました。それと体がつりやすくなりました。困ったのは、よく目が赤く充血してしまったことです。これはちょっと仕事の支障になりました。それと顔が真っ白になって、共演者から、よく『どうしたの?』と聞かれました。『美白しているんですよ』ってはぐらかしましたけどね(笑)」

このグリベックが、相島さんには非常によく効いた。野球ボール大だった腫瘍は、検査で調べる度に、どんどん小さくなっていることが確認されたという。そしてそれに伴って、体にも変化が現れる。グリベック服用開始後、数日で以前から悩まされていた腰痛がピタリと止んだのだ。

「以前から、腰痛に悩まされていて、鍼を打ちながら仕事をしていたのですが、グリベックを始めて2日目位からそれがなくなったのです。恐らく、大きくなった腫瘍が、腰の神経を圧迫していたのだと思います」

グリベックが奏効し、種々の検査で、腫瘍が小さくなっていることが確認されたことを受け、相島さんの腹腔鏡下手術は8月に行うことが決まった。相島さんは、15日に入院、18日に手術を受けることになった。

まず初めに行われたのは、腫瘍の切除である。

腫瘍は周辺部も含めて大きく切り取られるため、長さ20㎝ほどある直腸が全部切除され、さらに肛門の筋肉も約4分の1が切除された。そのあとS状結腸が直接肛門に繋がれ、腫瘍の切除は完了した。

しかし、これで終わったわけではない。相島さんの場合、肛門は何とか残せることができたが、一時的に仮設の人工肛門を取り付ける必要があり、その作業が残っていた。手術時間は6時間を要する大がかりなものになった。

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