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胃がんを克服し、俳優はもちろん民話の語り部としても存在感を増す真夏 竜さん(66歳) 覚悟を決めたことで、病気を受け入れることができました

取材・文●吉田健城
撮影●「がんサポート」編集部
(2016年8月)

まなつ りゅう
1950年、神奈川県生まれ。1974年、TBS『ウルトラマンレオ』の主演・おおとりゲン役でデビュー。同作の主題歌も担当し、大人から子どもまで脚光を浴びる。それ以降も、テレビ、映画、舞台に多数出演。現在は、俳優業のみならず、ナレーター、声優などの分野でも活躍している。がん闘病を機に、以前から行いたかったという「民話語り」を開始。文化庁から「芸術家派遣事業 協力芸術家」に認定され、国内はもとより海外でも民話語りの講演を行っている

「覚悟を決めることで、死への恐怖もなくなり、病気を受け入れることができました」。そう話すのは、『ウルトラマンレオ』の主役で知られる俳優の真夏 竜さん。真夏さんは12年前、進行期の胃がんと診断。余命半年との宣告を受けるほど、事態はかなり深刻なものだった。

発見のきっかけは腹部の激痛

ウルトラシリーズは誰もが知る国民的子ども番組である。このシリーズの7番目に登場したのが『ウルトラマンレオ』で、普段はスポーツセンターのインストラクターをしている「おおとりゲン」の役に抜擢されたのが、真夏 竜さんだった。

『ウルトラマンレオ』で1年間主役を張った後は、『破れ傘刀舟悪人狩り』『武蔵坊弁慶』『キッズ・ウォー』『春が来た』など様々なジャンルのテレビドラマにレギュラー出演。その一方で存在感のある悪役として『大岡越前』『水戸黄門』等の人気時代劇にも度々登場し、ときには守備範囲の広さを発揮して、アニメの声優やバラエティ番組のナレーションを手がけている。

その真夏さんが胃がんと診断されたのは2004年秋のことである。

真夏さんの場合、胃がんが見つかるまでの経緯が通常とかなり異なる。胃がんは通常痛みを伴わないため、健康診断や人間ドックで見つかるケースが多いが、真夏さんの場合は激しい腹痛が発見のきっかけになったのである。

痛みをこらえて千秋楽まで舞台に

「腹痛が出るようになったのは2004年秋に入ったころです。10月に所属事務所が主催する舞台公演があったので、その1カ月位前から稽古が始まったのですが、調子は最悪でした」

舞台には万全の体調で臨みたいので、真夏さんは近くの内科クリニックを訪ねて診てもらった。応対した医師の見立ては「胃炎」。飲み薬を処方されたので、早速服用したが効果はなく、痛みは増すばかりだった。しかし舞台公演の本番が始まっていたので、真夏さんは痛みをこらえて千秋楽まで舞台に上がった。

「痛みが出始めたころは、胃の中の粘膜をツンツンと指で突かれるような感じだったんですが、どんどんひどくなって舞台公演が始まるころには胃の中の粘膜を強くつねられるような感じになりました。千秋楽には胃の粘膜をペンチで挟まれるような痛さになり、立っていることができませんでした。ですから、自分の中では、これは単なる胃炎ではないのでは、と思っていました」

舞台公演が終了するとすぐに真夏さんは、知り合いに紹介された総合病院を訪ね、消化器内科の医師の診察と各種検査を受けた。診察をした医師は、胃がんの可能性が高いことを伝えた上で、かなり深刻な状態であり、このまま即入院したほうがいいと言った。

「がんは、ある程度想定していたので『ああ、そうですか』という感じで、淡々と受け止めることができました。ただこのままこの病院に入院したら、もう二度と帰ってこられなくなるような気がしてきて……、結局無理やり帰宅しました」

その病院にあまり好感が持てなかった真夏さんは、翌日、神奈川県内にある総合病院を訪ね、医師の診察と各種検査を受けた。ここでも胃に腫瘍があり、すでに進行期に入っている可能性が高いことが知らされ、緊急を要するのでなるべく早く入院して治療することを勧められた。

今度の病院は、前の病院に比べて雰囲気がよく、自分との相性も良さそうだったので、真夏さんはここでなら入院してもいいと思ったが、1つ大きなネックがあった。家から通うのには遠すぎることだった。そのため、結局病院探しは振出に戻ってしまった。

篠田三郎さんの紹介で行き着いた最良の医療

〝覚悟〟を決めることで、がんという病を受け入れることができたという真夏さん。「抗がん薬や放射線による治療よりも、そういった〝覚悟〟を持つことのほうが、僕自身、がんに効くような気がします」と話している

緊急を要するものの、なかなか自分に合う病院が見つからない――。壁に突き当たった状況を打開してくれたのは、兄貴分のような存在である俳優の篠田三郎さんだった。

真夏さんは『ウルトラマンレオ』の主役、篠田さんはその1つ前のシリーズ『ウルトラマンタロウ』の主役という関係で、肝胆相照らす仲であり、奥さん同士も仲が良かった。そのころ、篠田三郎さんは舞台の仕事で名古屋にいたが、奥さんから真夏さんが胃がんになったという知らせを受け、すぐに知り合いの医師がいる都内の大学病院を真夏さんに紹介した。

「うちの家内が篠田さんの奥さんと電話で話しているとき『ご主人はお変わりない?』って聞かれて、『実は……こうなの』という話になったようなんです。それを聞いた篠田さんの奥さんはびっくりして、名古屋にいる篠田さんに連絡を取ってくれたんです」

真夏さんは日を置かずに奥さんと一緒に、篠田さんに紹介してもらった都内にある大学病院を訪ねた。すると、正面玄関を入ったところに、なんと篠田三郎さんが待ち構えていたという。

「感激しました。いくら古い付き合いでも、ここまでしてくれる人は、そうはいませんから」

大学病院でひと通り診察をした後、病院の医師は真夏さんにこう約束した。

「うちでベストのチームを組んで治療に当たります」

それを聞いた真夏さんは、「ここでなら全幅の信頼を置いて治療を任せられる」と、その大学病院で治療を受けることを決めた。

奥さんだけに伝えられた余命宣告

大学病院で改めて各種の検査を受けた真夏さんは、主治医になった医師から、以下の点を伝えられた。胃にできたがんは進行期に入っているため、腹腔鏡下手術で対応できるレベルではなく、開腹手術になること。ただし、詳しい進行度については、手術をしてみないとわからないこと。もし手術をしてみて、がんが胃壁の中に留まっている場合には、若干リンパ節に転移が見られたとしても、胃の3分の2と周辺のリンパ節を切除する手術で対応できること。その一方で、がんが胃壁を突き破って膵臓などの臓器に広がっている場合には、手術はできず、抗がん薬を使った治療になること、といった説明を受けた。

また、主治医からは手術ができた場合、切除した胃の代わりとして、小腸の一部を切除して「代用胃」として充てることなどの説明があったという。

「ゆくゆくは、そのほうが食事の面で楽になると言われました」

主治医はこれらのことを真夏さん夫妻に伝えたあと、奥さんだけを呼んだ。そして、もし膵臓にまでがんが広がっていた場合、状況としては非常に厳しく、来年の桜の花は見ることはできないかもしれないと伝えた。

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