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臨床試験以上に治療効果が上がっているオプジーボ 再発・転移の頭頸部がんにキイトルーダが承認間近!

監修●岡野 晋 国立がん研究センター東病院頭頸部内科医長
取材・文●菊池亜希子
発行:2019年10月
更新:2019年10月

  

「免疫チェックポイント阻害薬は、再発・転移性頭頸部がんのキードラッグ。どの患者さんに、どのタイミングで使うかが重要です」と語る岡野 晋さん

再発・転移性頭頸部がんに対する免疫チェックポイント阻害薬オプジーボ(一般名ニボルマブ)が2017年3月に承認されてから2年半。臨床現場では、第Ⅲ相試験の結果以上の効果が出ているという。近々、2つ目の免疫チェックポイント阻害薬キイトルーダ(同ペムブロリズマブ)も承認される見込み。再発・転移頭頸部がんの最新治療について、国立がん研究センター東病院頭頸部内科医長の岡野晋さんに伺った。

早期発見が難しい頭頸部がん

顔面から頸部まで、つまり脳の下側から鎖骨までの範囲を「頭頸部」といい、鼻、口、喉(のど)、上顎(あご)、下顎、耳などに生じるがんを「頭頸部がん」と総称する。

頭頸部がんは、大腸がんや胃がんに比べて発生頻度は少なく、全てのがんの5%程度の希少がん。数としては少ないものの、頭頸部には呼吸や食事といった生命維持に直結する機能、発声や聴覚など生きていく上で大切な機能が集中しており、その障害はQOL(生活の質)にダイレクトに影響する。

一方で、早期段階では症状に乏しく発見が難しい。がんとわかったときにはステージⅢ以降の進行がんであるケースが多く、その割合は60%を超えるという。

「早期には、軽い喉の痛みや違和感といった風邪と間違うほどの症状しかありません。喉が痛くて内科を受診しても、医師が舌圧子(ぜつあつし)で舌を下げて見える範囲は中咽頭の一部と限られている上、肉眼ではほとんど見分けがつきません。耳鼻科で鼻からカメラを入れて診察すれば早期での発見率はかなり上がりますが、がんを診慣れていないと、専門医でも見落としてしまうほどわかりにくいのです」と話すのは、国立がん研究センター東病院頭頸部内科医長の岡野晋さん。

進行がんとわかったら、速やかに手術もしくは化学放射線療法を受けることが第1選択肢だ。加えて、再発や微小転移を防ぐために化学療法や放射線治療を受けることがある。しかし、それでも再発、もしくは遠隔転移を免れないこともある(図1)。

再発・遠隔転移に登場した救世主とは

再発・転移の頭頸部がんは、 シスプラチン(商品名ブリプラチン/ランダ)、5-FU(一般名フルオロウラシル)、アービタックス(同セツキシマブ)を組み合わせた3剤併用療法が標準治療だ。そこに2017年3月、免疫チェックポイント阻害薬として初めてオプジーボ(同ニボルマブ)が承認された。

承認から2年半、オプジーボは再発・転移性頭頸部がん治療にどのような変化をもたらしたのだろうか。

昨年(2018年)、プラチナ抵抗性の再発または転移性の頭頸部がん患者を対象に、オプジーボと化学療法[アービタックス、タキソテール(一般名ドセタキセル)、メソトレキセート(同メトトレキサート)]を比較した第Ⅲ相試験(CheckMate141試験)の2年追跡調査の結果が発表された。それによると、全生存期間(OS)の中央値は、オプジーボ群7.7カ月、化学療法群5.1カ月。2年生存率は、オプジーボ群16.9%、化学療法群6.0%。さらに、オプジーボ投与を受けた患者の死亡リスクが32%低減していることが明らかになった。

2年追跡調査の意義は大きく、再発・転移性頭頸部がんにおいて、オプジーボの効果が維持されていることが裏付けられたわけだ。この結果を受け、臨床現場での手応えについて岡野さんは次のように述べた。

「実際には、CheckMate141試験結果以上の手応えを感じています。医療者側の知識が増えたことや、オプジーボを使い慣れてきたこともありますが、免疫チェックポイント阻害薬の副作用が、従来の抗がん薬と比べて格段に少ないことも手応えの理由です。皮膚毒性がなく、体力が落ちない。患者さんたちは日常生活を送りながら外来に通い、治療しています。ただ、投与した患者さんの1割強には重篤な副作用が出るので、この1割に当たってしまうとつらいのは確かです。しかし、副作用が出る人は効果も高いことがデータとして報告されているので、副作用が出てしまったら、その副作用対策をしっかりしていくことで、よい結果に繋がることも珍しくないのです」

2017年の承認から現在に至るまで、岡野さんはおよそ100人の患者にオプジーボによる治療を施してきたそうだ。その中の約1割強の患者は、重篤な副作用を発現している。

「ひどい副作用が出て入院治療し、副作用に対応しながら治療を続けた結果、がんがすべて消えた患者さんが3人ほどいます。現在は何もしないで様子を見ている状態、つまり完全奏効(CR)です。重篤な副作用もなく完全奏効まで行った人も入れると5人ほど。そこまで行かなくとも、2~3割程度の患者さんで腫瘍が縮小するなどの奏効を見せています」

オプジーボは、再発もしくは遠隔転移し、かつ、プラチナ製剤に効き目を示さなくなったときに投与できる薬。つまり、それは非常に厳しい病状といえるだろう。そんな中、2~3割の奏効率、中には完全奏効に持ち込めるケースまで出てきたことは驚きに値する。患者本人の喜びは筆舌に尽くしがたい(画像2)。

2つ目の免疫チェックポイント阻害薬の承認が見えてきた!

さらに今年6月の米国臨床腫瘍学会(ASCO2019)で新たな動きがあった。再発・転移性頭頸部がんの1次治療として「キイトルーダ(一般名ペムブロリズマブ)+化学療法」が、現在の標準治療である「アービタックス+化学療法」に比べて、全患者において生存期間を延長するとの試験結果が発表されたのだ。

KEYNOTE-048試験は、全身療法歴のない再発・転移性頭頸部がん患者を対象に、キイトルーダ単独群(301人)、キイトルーダ+化学療法群(281人)、アービタックス+化学療法群(300人)の3群に分けて行われた。その際、︎CPS値がバイオマーカーとして評価項目に加えられた。CPS20以上とCPS1以上を評価項目とし、全患者の生存期間と奏効率を解析したのだ。

ちなみにCPSとは、腫瘍細胞とその周辺細胞のPD-L1発現率の値。その値が高いほど、免疫抑制を解除することで免疫系ががん細胞をより攻撃すると推測できる。つまり免疫チェックポイント阻害薬の効果が高いことが予測されるわけだ。他のバイオマーカーとしては腫瘍細胞のみのPD-L1発現率を見るTPSがあり、がん腫によって使い分けるそうだ。

生存期間中央値の結果は、CPS20以上では「キイトルーダ+化学療法群」14.7カ月、「アービタックス+化学療法群」11.0カ月。CPS1以上でも「キイトルーダ+化学療法群」13.6カ月、「アービタックス+化学療法群」10.4カ月。すべてにおいて「キイトルーダ+化学療法群」の生存期間が標準治療群を上回った。

奏効率(ORR)は、CPS20以上で「キイトルーダ+化学療法群」42.9%、「アービタックス+化学療法群」38.2%。CPS1以上で「キイトルーダ+化学療法群」36.4%、「アービタックス+化学療法群」35.7%。奏効期間の中央値は、CPS20以上で「キイトルーダ+化学療法群」7.1カ月、「アービタックス+化学療法群」4.2カ月。CPS1以上で「キイトルーダ+化学療法群」6.7カ月、「アービタックス+化学療法群」4.3カ月だった。

これらの数値から「キイトルーダ+化学療法群」は「アービタックス+化学療法群」に比べて、CPS20以上、CPS1以上、さらにはCPS値に限らず全患者において生存期間を有意に延長することが明らかになった。一方、「キイトルーダ単剤群」は「アービタックス+化学療法群」に比べて、CPS20以上、CPS1以上の患者では生存期間を延長したが、全患者では非劣性を示すに留まった。

「この結果を受けて、近々、キイトルーダが、再発・転移性頭頸部がんの1次治療薬として承認される見込みです」と岡野さん。現在使える唯一の免疫チェックポイント阻害薬オプジーボは、たとえ再発・転移性頭頸部がんでも、プラチナ製剤を投与し、かつ効果を示さなかった場合との制約付きだった。そんな中、1次治療から使用できるキイトルーダが登場すれば、再発・転移性頭頸部がんの治療の幅が飛躍的に広がることは間違いない。

CPS(Combined Positive Score)=PD-L1陽性細胞数(腫瘍細胞と、その周辺のリンパ球およびマクロファージ)を総腫瘍細胞数で割り、100を乗じた数値

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