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患者のためのがんの薬事典

ベルケイド(一般名:ボルテゾミブ)多発性骨髄腫の1次治療薬

監修●竹迫直樹 独立行政法人国立病院機構 災害医療センター血液内科部長
取材・文●伊波達也
発行:2015年2月
更新:2015年9月

  

多発性骨髄腫(MM)の治療は、1980年以前はMP療法しか選択肢がありませんでしたが、80年代に抗がん薬を用いたVAD療法が出現、90年代には自家末梢血幹細胞移植が登場しました。ベルケイドは、2006年に登場した分子標的薬で、その効果の高さから、現在唯一 1次治療の標準治療となっています。

どんな薬?――ベルケイド

◎ベルケイドの作用

多発性骨髄腫(MM)の治療において、ベルケイドは現在、1次治療に標準的に使用されている分子標的薬です。

ベルケイドは、プロテアソームという酵素を阻害する作用をもちます。プロテアソームは細胞分裂を促す役割をもちますが、ベルケイドがプロテアソームに結合してその働きをブロックすることで、特に多発性骨髄腫細胞の増殖に関与するNF-κβという転写因子を抑制します。

◎ベルケイドの利点

従来の薬と比較しての治療における利点は、骨を強くすることです。多発性骨髄腫では病気が進行すると骨が弱くなって痛みが出ますが、ベルケイドには、骨を強くする薬の1つであるゾメタと一緒に使うと、さらに骨症状が改善し、QOL(生活の質)が良くなります。

もう1つの利点は、腎機能が低下している人でも治療に使える薬であることです。多発性骨髄腫の人は、Mタンパクという不完全な抗体が作られ、血液中にあふれると血管内で詰まったり、2~3割の人は腎機能障害を起こす場合がありますが、ベルケイドは腎機能が低下していても薬を減らす必要がありません。

◎治療の対象と方法

表1 ベルケイドを用いた主な治療法

65歳(場合によっては70歳)以下の自家末梢血幹細胞移植を行う人の場合には、ベルケイドに加えて、ステロイド系抗炎症薬であるデカドロン、および従来の治療薬であるアルキル化剤など、3剤を併用すると成績が向上します(表1)。若い人の場合には、アルキル化剤の代わりにアドリアシンやエンドキサンを使います。ベルケイドは幹細胞採取にあまり影響を及ぼさない薬であるため、自家末梢血幹細胞移植の前に行う初期治療の薬として使いやすいのです。

自家末梢血幹細胞移植を実施しない高齢者などの場合は、VMP療法を行います。これは、多発性骨髄腫治療初の標準治療であったMP療法とベルケイドを組み合わせた治療法で、「VISTA試験」という国際的な比較試験の結果により、MP療法に代わり標準治療として実施されるようになりました。

MP療法=アルケラン+プレドニン併用療法 VAD療法=オンコビン(一般名ビンクリスチン)+アドリアシン+デカドロンの3剤併用療法 ベルケイド=一般名ボルテゾミブ ゾメタ=一般名ゾレドロン酸 デカドロン=一般名デキサメタゾン アドリアシン=一般名ドキソルビシン エンドキサン=一般名シクロホスファミド VMP療法=ベルケイド+アルケラン(一般名メルファラン)+プレドニンの3剤併用療法

ベルケイドの投与方法

ここでは、自家末梢血幹細胞移植を実施しない場合の標準的な治療であるVMP療法の投与方法の1例を説明します。

1サイクルが5週間の治療です(図2)。ベルケイドは、1日目と4日目の週2回投与を4週間繰り返し、5週目は休薬します。

MP療法は1週目のみ1日目から4日連続で行います。これを4サイクル続けます。

5サイクル目からは、ベルケイドを週1回1日目のみに投与し、MP療法はそれまでと同様に続けます。そして9サイクルで治療を終了します。

ベルケイドは副作用が強いため、患者さんによっては、最初からベルケイドの投与を週1回にして、約1年間(9サイクル)治療する場合があります。

図2 VMP療法の1例

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