ALK融合遺伝子をもつ非小細胞肺がんに高い治療効果をもつ分子標的薬
ザーコリ(一般名:クリゾチニブ)/アレセンサ(一般名:アレクチニブ)肺がんのALK阻害薬
承認:2012年3月
効能・効果:ALK融合
遺伝子陽性の切除不能な
進行・再発の非小細胞
肺がん
承認:2014年7月
効能・効果:ALK融合
遺伝子陽性の切除不能な
進行・再発の非小細胞
肺がん
非小細胞肺がん(NSCLC)の治療は、分子標的薬の登場で大きく進歩しました。ALK阻害薬は、非小細胞肺がんの約5%を占めるALK融合遺伝子をもつ肺がんに対し、高い治療効果を発揮します。2012年に認可されたザーコリに続き、14年には第2世代薬のアレセンサも登場。従来の化学療法とALK阻害薬をどう組み合わせていくかの検討が進められています。
どんな薬?――非小細胞肺がんのALK阻害薬
◎ALK阻害薬の作用
分子標的薬のALK阻害薬は、ALK融合遺伝子をもつ(ALK融合遺伝子陽性)非小細胞肺がんの治療に使われています。ALK融合遺伝子をもつのは、非小細胞肺がん全体の5%程度と言われています。
ALK融合遺伝子とは、細胞の増殖に関係しているALK遺伝子と、他の遺伝子の一部が融合してできた特殊な遺伝子です(図1)。この遺伝子から産生されるタンパクは、常時ALKが活性して、そのシグナルが、発がんやがん細胞の増殖を進めます。ALK阻害薬は、ALKを標的に、そのシグナルを阻害することでがんの増殖を抑えます。
ALK融合遺伝子は2007年に発見され、この遺伝子の働きを阻害すれば、治療効果が期待できることが明らかになりました。そのとき、海外ですでに*ザーコリの開発が進められていて、この薬剤がALK融合遺伝子の働きを抑える働きをもつことがわかっていました。そこで、ALK融合遺伝子をもつ肺がんの患者さんを対象にして、臨床試験が行われたのです。
結果は素晴らしいものでした。化学療法をすでに行い、それが効かなくなった患者さんが対象でしたが、約70%という高い奏効率(がんが画像上、半分以下に縮小した患者さんの割合)が得られたのです。
ザーコリは、この第Ⅰ、Ⅱ相試験の結果によって承認されました(表2)。2012年のことです。ALK融合遺伝子の発見から、わずか5年という早さでした。
さらに、第Ⅲ相試験の結果、これまでの化学療法と比較しても効果が高いことが報告されています。
◎ザーコリは2次治療で有効
まず報告されたのは、PROFILE1007という試験の結果です。この試験は、1次治療で通常の化学療法を行った患者さんが対象になっています。2次治療で、ザーコリによる治療を行う群と、通常の化学療法を行う群を比較したのです。
結果は大きな差がつきました。無増悪生存期間(PFS=がんが進行するまでの期間)中央値は、化学療法群が3.0カ月だったのに対し、ザーコリ群は7.7カ月と、大幅に延長していました。まさに劇的な効果でした。この臨床試験によって、2次治療におけるザーコリの有効性が証明されたのです。
◎ザーコリは1次治療でも有効
もう1つの第Ⅲ相試験は、昨年(2014年)結果が報告されたPROFILE2014試験です。この試験の対象となったのは、まだ治療を受けていない患者さんです。1次治療として、ザーコリによる治療を行った場合と、通常の化学療法を行った場合を比較しています。
その結果、無増悪生存期間中央値は、化学療法が7.0カ月だったのに対し、ザーコリ群は10.9カ月と、やはり大幅に延長していました。この臨床試験の結果によって、ザーコリは1次治療で使用しても、優れた効果が期待できることが明らかになったのです。
◎第2世代薬のアレセンサが登場
ザーコリに続く第2世代のALK阻害薬も、すでに開発されています。日本で開発された*アレセンサで、昨年7月に承認されました。
アレセンサもALK融合遺伝子を標的とする分子標的薬です。ザーコリは、ALK融合遺伝子だけでなく、いくつかの他の標的分子も抑える働きをしています。一方、アレセンサはALK融合遺伝子に対し、より特異的に、より強力に作用します。他の標的分子にはあまり作用しないため、副作用が少なくなると考えられています。
アレセンサは、AF-001JPという第Ⅰ、Ⅱ相試験の結果によって承認されています。すでに化学療法(ザーコリを含まない)を受け、それが効かなくなった患者さんが対象です。結果は、奏効率は93.5%、無増悪生存期間の中央値は27.7カ月でした。まさに驚くほどのデータが得られたのです。
ただし、既治療例におけるザーコリと、1次治療におけるザーコリとを比較試験する第Ⅲ相試験は現在進行中で、まだ結果は出ていません。
*ザーコリ=一般名クリゾチニブ *アレセンサ=一般名アレクチニブ
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