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エビデンスが確立した胆道がんの標準治療

ジェムザール(一般名ゲムシタビン)/ブリプラチン・ランダ(一般名:シスプラチン)胆道がんのGC療法

監修●林 和彦 東京女子医科大学がんセンター長/化学療法・緩和ケア科教授
取材・文●柄川昭彦
発行:2015年7月
更新:2019年7月

  

一般名:ゲムシタビン
承認:1999年
適応:非小細胞肺がん、
膵がん、胆道がん、
尿路上皮がん、手術不能
または、再発乳がん、
化学療法後に増悪した
卵巣がん、再発または、
難治性の悪性リンパ腫

一般名:シスプラチン
承認:1983年
適応:睾丸腫瘍、
膀胱がん、前立腺がん、
腎盂・尿管腫瘍、
卵巣がん、頭頸部がん、
非小細胞肺がん、
食道がん、子宮頸がん、
神経芽細胞腫、胃がん、
小細胞肺がん、
悪性胸膜中皮腫、
胆道がん、そのほか

胆道がんの化学療法では、有効な治療法が僅かしかありません。標準治療は、ジェムザールとシスプラチンを併用するGC療法。GC療法は肺がんの治療でも用いられますが、胆道がんのGC療法はシスプラチンの投与量が少なく、それを分割投与するのが特徴。そのため副作用が軽く、無理なく継続することができます。この併用療法以外に、TS-1も治療薬として承認されています。
現在、ジェムザールとTS-1を併用するGS療法を、GC療法と比較する臨床試験が進行中です。

どんな薬をつかう治療?――GC療法

切除手術ができない胆道がんの化学療法で、標準治療とされているのはGC療法です。「G」はジェムザール、「C」はシスプラチンの略号で、この2剤を併用します。

かつて胆道がんに対する有効な化学療法はありませんでしたが、2006年にジェムザールが承認され、2008年にはTS-1が承認されています。ただ、TS-1は胆道がんには日本のみに承認されている抗がん薬なので、欧米では単剤で標準治療となっているジェムザールとの併用療法の臨床試験が進められました。そうして登場してきたのが、GC療法だったのです。

GC療法の有効性を証明したのは、海外で行われたABC-02試験という大規模臨床試験でした。410人の対象者を、「ジェムザール単独群(G単独群)」と「ジェムザール+シスプラチン併用群(GC併用群)」に割り付けて比較しています。

その結果、全生存期間(OS)は、G単独群が8.1カ月、GC併用群が11.7カ月でした(図1)。ジェムザール単独療法に比べ、生存期間を3.6カ月延長したことで、GC療法が標準治療となったわけです。

その後、日本でBT-22試験という同様の比較試験が行われています。対象者は84人と多くありませんが、全生存期間はG単独群が7.7カ月、GC併用群が11.2カ月でした。ABC-02試験と同じような結果が出たのです。

図1 GC療法の効果(生存期間中央値)

ジェムザール=一般名ゲムシタビン シスプラチン=商品名ブリプラチン・ランダ TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

投与方法

GC療法の抗がん薬投与量は、ジェムザールが1,000㎎/㎡、シスプラチンが25㎎/㎡です。これらを3週サイクルの1週目(第1日)と2週目(第8日)に点滴で投与し、3週目(第15日)は休みます。これを繰り返していくのです(図2)。

図2 GC療法の投与法

胆道がんに対するGC療法は、シスプラチンの投与量が少ないのが特徴です。GC療法は、非小細胞肺がん(NSCLC)の治療でも、3週サイクルで行われています。その治療では、ジェムザールの投与量は同じですが、シスプラチンは1週目に80㎎/㎡投与し、2週目、3週目が休みになります。

非小細胞肺がんのGC療法に比べると、胆道がんのGC療法は、シスプラチンの量が少なく、さらに2回に分けるので、比較的楽な治療だといえます。通常、通院で治療を受けられます。

知っておきたい! 副作用と対策

表3 吐き気・嘔吐が生じた際の対処

シスプラチンの投与量が少ないこともあり、激しい副作用が現れることはほとんどありません。それでも、吐き気、疲労感、食欲不振、骨髄抑制などが起きることがあります。吐き気に対しては制吐薬で対処できるので、症状がある場合には医師に伝えることが大切です(表3)。

投与2週目頃から骨髄抑制が現れることがあります。
重症化することは少ないですが、発熱した場合には、感染が起きていることも考えられるので、すぐに医師に伝えます。

期待されるGS療法

胆道がんの化学療法では、TS-1も使用することができます。TS-1は経口剤(内服薬)なので、点滴を受けるために通院する必要がありません。その利便性のよさが特徴の1つだといえます。

TS-1を単独で用いる場合には、4週間連日投与し、2週間休薬する6週サイクルが基本です。ただし、この投与スケジュールだと、副作用で続けられない患者さんがかなりいると考えられます。膵がんの臨床試験では、「2週投薬・1週休薬の連日投与」でも、「4週投薬・2週休薬の隔日投与」でも効果が劣らないことが証明されています。

GC療法とGS療法(ジェムザール+TS-1併用療法)を比較する臨床試験が、現在進められています。GS療法の投与スケジュールは、やはり3週間サイクルです。ジェムザールはGC療法の場合と同じで、
1週目(第1日)と2週目(第8日)に、1,000㎎/㎡を点滴で投与します。TS-1は、2週間連日服用し、3週目は休薬となります(図4)。患者さんの体表面積に応じた1日量60~100㎎を、朝夜の食後2回に分けて服用します。

図4 GS療法の投与法(2週投薬・1週休薬の場合)

開発が進められる新薬

胆道がんには有効な化学療法が少ないため、新薬の開発が期待されています。

現在、注目されているのは、国立がん研究センターで開発が進められている分子標的薬「SGFR阻害薬」です。SGFRという遺伝子変異をもつ胆道がんに効くと考えられ、現在、第Ⅰ相試験が行われています。

免疫療法にも期待がもてるかもしれません。東京女子医科大学の消化器外科では、以前から免疫療法の研究を続けていますが、肝内胆管がんの手術後の再発予防に、免疫療法が有効だったというデータが出ています。

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