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新たに2つの選択肢が登場 再発・進行胃がん治療の化学療法 推奨の1次治療:SP療法(TS-1+シスプラチン)/同等の新1次治療:SOX療法(TS-1+エルプラット)/新たな2次治療:サイラムザ+タキソール併用療法

監修●陳 勁松 がん研有明病院消化器化学療法科副部長
取材・文●星野美穂
発行:2015年9月
更新:2020年3月

  

切除不能な再発・進行胃がんの治療は、「化学療法が第一に考慮されるべき治療法である」と、胃癌治療ガイドラインでは記されています。がんを縮小して、がんの進行に伴う様々な症状を抑え、より良い時間をより長く過ごすことが、再発・進行胃がんの治療の目標ですが、最近の治療薬の開発進歩によって、がんを小さくする効果が、より高くなってきました。今年(2015年)6月には、従来の標準治療に加えて、新しい分子標的薬も登場しています。

SP療法――切除不能な再発・進行胃がんの標準治療

TS-1とプラチナ製剤のシスプラチンを併用する「SP療法」は、再発・進行胃がんに最初に用いられる標準治療として、「胃癌治療ガイドライン」で推奨されています。

SP療法は、2007年に発表された「SPRIT試験」の結果において、全生存期間(OS)中央値が13カ月を示し、再発・進行胃がんの全生存期間中央値が1年を超えた初めての治療法として評価されました。

一方、シスプラチンによる腎臓へのダメージを減らすため、シスプラチンの点滴前後には1,000mLから2,000mLの輸液を点滴する必要があり、そのために点滴時間が長くなるというデメリットがあります。点滴時間が長いため、治療期間中に入院が必要です(図1)。

図1 SP療法の治療方法

また、シスプラチンは吐き気や食欲不振などの消化器毒性が強く、制吐薬による支持療法を行っても、一定のQOL(生活の質)低下は避けられません。併存症をもつ患者さんの場合など、状態により様々な選択肢が考慮されてきました(図2)。

図2 進行・再発胃がんの化学療法(がん有明病院)

は状態により選択される治療

TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ

SOX療法――SP療法と効果が同等で 利便性が高い治療法

SOX療法は、SP療法のシスプラチンをエルプラットに置き換えた治療法です。つまり、TS-1とエルプラットの併用になります。

効果はSP療法とほぼ同等であることが、臨床試験の結果から確認されています。

予測される効果として、同じ治療をした10人のうち5~6人でがんの縮小が期待できます。縮小により、食欲不振や痛みなど、がんによる様々な症状が改善します。

ただし、がんを完全に治すことは困難です。がんが縮小しても再び大きくなることも多く、効果の持続時間には個人差があります。

●投与方法

1コース21日間です。

エルプラットは、3週間ごとに点滴で投与し、TS-1は14日間、1日2回内服したあと、約7日間休薬します。

SOX療法は外来治療が可能な治療法ですが、副作用などの反応をみるために初回のみ入院で行うこともあります。(図3)

図3 SOX療法の治療方法

●知っておきたい!副作用と対策

◆食欲不振・吐き気

吐き気止め(制吐薬)の点滴を行いますが、頓服の吐き気止めを処方してもらい、吐き気が起こった場合は我慢せずに薬を服用します。

◆手足のしびれ(末梢神経障害)

エルプラットを長く使っていると手や足の先にピリピリとしたしびれが起きることがあります。

これは、エルプラットに特徴的な末梢神経障害という症状で、我慢を続けるとボタンが留められない、箸でものがつまめないなど日常生活に支障を来すほどひどくなる場合もあります。一旦休薬すれば元に戻ることも多いので、手足のしびれがひどくなってきたら無理をせず、エルプラットを休薬して、TS-1のみを続行します。

冷たいものに触るとしびれがひどくなるため、手を洗うときはお湯で洗う、飲み物は夏でも冷えたものは飲まないなどの注意が必要です。

しびれは、患者さん本人にしかわからない主観的な症状ですから、薬の減量や中止などにより副作用をコントロールし治療を長く続けていくためにも、自分の状態を主治医に包み隠さず伝えることが大切です。

◆アナフィラキシーショック

5%以下と非常にまれではありますが、複数回治療した後、エルプラットの投与中にアナフィラキシーショックが起きることがあります。これは急性で重篤に至る過敏反応です。点滴中に、アレルギー症状(息苦しい、咳、くしゃみがでる、じん麻疹がでる、血圧低下による倦怠感)などが発現したら、すぐにナースコールする必要があります。対処法は、ステロイド薬などの注射です。

◆外来治療での注意点

再発・進行胃がんの治療が、SP療法からSOX療法に移ってきたことで、患者さんが入院することなく、外来での通院治療を続けられるようになってきました。ただし、医療機関へ行く頻度は3週間に1回となり、入院治療と比べて医療関係者とかかわる時間も減っています。

家庭で過ごす間、どんなことに注意すべきか、どのような症状が出たらすぐに医師に相談すべきかをあらかじめ聞いておき、自身が注意を払う必要があります。

治療を長く続けていく上で、体調の不良や副作用はより早く発見し、対処していくことが大切です。

エルプラット=一般名オキサリプラチン ロイコボリン=一般名ホリナート ハーセプチン=一般名トラスツズマブ タキソテール=一般名ドセタキセル アブラキサン=一般名ナブパクリタキセル イリノテカン=商品名カンプト/トポテシン

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