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代表的な2つの標準治療と動向を紹介

子宮頸がんの化学療法 同時化学放射線療法(シスプラチン+放射線療法)/抗がん薬単独治療(シスプラチン+タキソール療法)

監修●尾松公平 がん研有明病院婦人科
取材・文●星野美穂
発行:2015年10月
更新:2016年1月

  

子宮頸がんの治療は手術が主体だと思われがちですが、実は子宮頸がんのうち手術のみで治療の完結が見込めるのは、がんが子宮頸部の表面だけに存在しわずかに浸潤を認めるⅠ(I)A期の場合のみです。それ以外では、摘出臓器の病理組織診断の結果、再発リスクが大きいと判断されると、放射線療法、もしくは放射線療法と抗がん薬の併用治療が行われます。子宮頸がんを病期別にみると、手術だけの治療よりも、同時化学放射線療法を行う割合のほうが多いです。また、進行・再発子宮頸がんの治療では、放射線療法が主体であり、抗がん薬治療は放射線療法の治療効果を増幅させるために行うという位置づけにあります。

子宮頸がんでの化学療法の位置づけ

表1 子宮頸がん治療における抗がん薬の位置づけ

子宮頸がんで抗がん薬を使用する場合としては、手術前に腫瘍を小さくする目的などで行われる「術前化学療法(ネオアジュバント療法)」、手術後に再発予防を目的として実施される「術後補助化学療法(アジュバント療法)」、そして、放射線療法と同時並行して行う「同時化学放射線療法(CCRT)」、Ⅳ(IV)B期・再発した患者さんへの「抗がん薬単独による治療」があります。

このうち、子宮頸がんの標準治療として確立しているのは、CCRTとⅣ(IV)B期・再発時の抗がん薬単独治療だけです。術前化学療法と術後補助化学療法は、現段階では標準治療と見なされていません。これらの治療を行う場合は、まだその効果が確認されていない治療法であると認識した上で、臨床試験として行われるべき治療法です(表1)。

どんな治療?❶――同時化学放射線療法(CCRT)

Ⅰ(I)B2期~Ⅳ(IV)A期での標準治療です(表2)。

表2 病期分類による治療法

子宮やリンパ節などに放射線を照射する放射線療法と同時に、化学療法を行います。放射線療法単独よりも化学療法を上乗せすることで、治療効果が増大することがわかっています。この治療は、子宮頸がんの根治を目指して行います。

使用される抗がん薬は、プラチナ製剤であるシスプラチンを含むレジメンが推奨されています。代表的なレジメンとしては、シスプラチン単剤や、シスプラチンと5-FUの併用などがあります。この2つのレジメンでは、長期的な予後に差はないものの、シスプラチン+5-FUのほうが血液毒性の副作用の頻度が有意に高いため、日本ではシスプラチン単剤が標準治療のレジメンとしてよく用いられています。

●投与方法

シスプラチンは、週1回、体面積当たり40mgを投与します(図3)。

図3 シスプラチンの投与スケジュール(同時化学放射線療法の場合)

放射線療法は、体外から骨盤内のリンパ節や子宮に照射を行う体外照射と、子宮や腟内から照射する小線源治療を併用して行います。外照射は1回/日、週5回、1.8~2.0Gy(グレイ)/回で、骨盤に50Gy程度の照射を行います。

日本では、病期や腫瘍の大きさに応じて、30~40Gyの骨盤照射に加え、残りの10~20Gyは、膀胱や直腸の線量を低くするために、骨盤部の中央を遮蔽します。小線源治療は、中央遮蔽期間中から1回/週で開始し、計3~4回行います。

●センチネルリンパ節生検の可能性

子宮頸がんのガイドラインでは、Ⅰ(I)B2期~Ⅱ(II)A期では、「手術またはCCRT」が標準治療として推奨されています。

実際、手術をすればすべて取れるであろうと思われていたがんが、手術をして患部を直接確認してみたら、がんが大きかった、周りの臓器にまで及んでいた(傍子宮または腟組織浸潤を認める)、血管やリンパ管の中にまでがんが入っていた(間質浸潤が深かった、脈管侵襲が認められた)ということは少なくありません。この場合、再発リスクが高いということで、CCRTを行うことになります。

もし、術前にハイリスクだということがわかっていれば、手術を行わず、CCRTだけで治療ができます。米国では、Ⅰ(I)B2期~Ⅱ(II)A期の患者さんにはセンチネルリンパ節生検を行い、それで陽性ならば手術は行わずにCCRTを行うことになります。

一方、日本では子宮頸がんのセンチネルリンパ節生検は保険適用されておらず、実施している施設はほとんどありません。

そのため、手術してがんを直接確認するまでは、実際の腫瘍の広がりはわかりません。手術は大きな意味での検査と言えます。

子宮頸がんにセンチネルリンパ節生検を行うことで、患者さんの負担をどれだけ減らせるか、予後にどのくらいの影響があるかは、これからの検討を待たなくてはなりません。しかし、それにより手術という患者さんの負担が減らせる可能性があるならば、より早い導入を期待したいところです。

FIGO=国際産科婦人科学会 シスプラチン=商品名ブリプラチン/ランダ 5-FU=一般名フルオロウラシル

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