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ゼローダ(一般名カペシタビン) 進行・再発の胃がん治療に、より大きな効果と副作用の軽減が期待できる

取材・文●町口 充
発行:2011年8月
更新:2020年3月

  
写真:ゼローダ(一般名カペシタビン)

乳がんや結腸・直腸がんなどの治療に使われてきたゼローダが、進行・再発胃がんの治療に使えるようになりました。3段ロケット方式でがんを狙い撃ちするという特徴を持ち、これまでの進行・再発胃がんの標準治療薬であるTS-1に比べて副作用が軽いのも特筆すべきことです。患者さんにとって新たな治療の選択肢が増えたことは、大きな朗報といえるでしょう。

正常細胞には作用せず腫瘍部分で5-FUに変わる

ゼローダ()は、そのままでは抗がん剤として働かないので骨髄や消化管などの正常組織には作用せず、腫瘍組織に達すると5-FU()という薬に変わるように工夫された、経口の抗がん剤です。

5-FUは胃がんなど消化器がんに広く用いられてきた抗がん剤。細胞が増殖するのに必要な代謝物質に似た構造を持っていて、本来の代謝物質の代わりにがん細胞に取り込まれることで細胞増殖ができないようにし、がんを死滅へと導きます。

この5-FUに改良を加え、効果を高めて副作用を少なくした薬がTS-1()です。現在、治癒切除不能な進行・再発胃がんに対しては、5-FUに代わってTS-1とシスプラチン(一般名)を併用した治療が標準的な治療法として推奨されています。

ゼローダは、腫瘍内でのみ5-FUの効果が発揮できるようになっているのが特徴。腸管から吸収され、肝臓や腫瘍を通るうちに、いわば3段ロケット方式のように3段階で次々と代謝酵素の働きによって姿を変えていき、がん組織に至り初めて抗がん作用を発揮するのです。したがって、より大きな効果と副作用の軽減が期待でき、とくに有効な治療法があまりない進行・再発がんへの応用が進んでいます。

ゼローダ=一般名カペシタビン
5-FU=一般名フルオロウラシル
TS-1=一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム

TS-1に加え新たなオプション

[進行・再発の胃がんに対するカペシタビンの効果(全生存期間)]
進行・再発の胃がんに対するカペシタビンの効果

Kang YK et al.: Ann Oncol 20, 666-673, 2009

ゼローダは、これまで日本では、手術不能または再発した乳がん、結腸がんの術後補助化学療法、治癒切除不能な進行・再発の結腸・直腸がんでの使用が認められていました。

胃がんについても「公知申請」という制度で、企業が追加承認を求めていたのに対して、今年2月、厚生労働省は治癒切除不能な進行・再発の胃がんへの使用を承認したのです。これにより、この治療法が保険適用されるようになりました。

公知申請とは、海外で広く使われている薬の場合、日本では未承認でも、医療上の必要性が評価されれば治験を行うことなく承認申請できる制度のこと。承認までに時間がかかるドラッグ・ラグ解消の方法として活用されている制度です。

アジアを含む海外で行われた第3相臨床試験では、進行胃がん患者を対象にゼローダとシスプラチンを併用した群は、点滴で投与する5-FUとシスプラチンを併用した群と比較して、無増悪生存期間()、全生存期間ともに劣らないという結果でした。

安全性の面では、手足の皮膚に障害が起こる手足症候群は、ゼローダ+シスプラチン併用群で多かったものの、好中球減少などの血液障害やおう吐、口内炎などの消化器症状は少ないとの結果でした。

現在、胃がん化学療法の日本での主役はTS-1ですが、血液障害や消化器症状などの副作用も少なくありません。これらの副作用はゼローダでは比較的軽いので、TS-1を使えなくなった患者さんに用いることも可能になります。患者さんの希望に応じた新たな治療の選択肢が増えたことは朗報といえるでしょう。

無増悪生存期間=治療後、がんが進行せず、安定した状態である期間

手足症候群に要注意。こまめなケアで予防を

ゼローダの投与方法は、ゼローダ単独ではなくプラチナ製剤と併用することになっていて、日本では今のところシスプラチンとの併用です。

[カペシタビン+シスプラチン療法の投与方法]
カペシタビン+シスプラチン療法の投与方法

まず1日目にシスプラチンを点滴投与します。その後はゼローダを朝食後と夕食後30分以内に1日2回、14日間連続投与し、その後7日間休薬します。これを1コースとして投与を繰り返します。シスプラチン投与のため2泊3日ほどの短期入院が必要となりますが、ゼローダは飲み薬なので、その後は自宅で飲むことができます。

TS-1+シスプラチン併用療法との大きな違いは、ゼローダ+シスプラチン併用の場合、ゼローダ自体の副作用が少ないことから、シスプラチンを多めに投与できる点です。

TS-1+シスプラチン併用療法でシスプラチンの投与量は体表面積1平方メートルあたり60ミリグラムまで。しかし、ゼローダ+シスプラチン療法ではシスプラチンの量を80ミリグラムまで増やすことができ、より強い効果が期待できます。

ゼローダでとくに注意すべき副作用は手足症候群です。軽度の段階では皮膚が張ったような感じになり赤みが生じますが、放置すると痛みを伴うようになり、グレード3になると皮膚に亀裂が入ったりして日常生活が困難になることもあります。

予防としては軟膏剤による手足の保湿、グレード2以上の手足症候群が発現した場合はゼローダを休薬し、ステロイド外用剤を塗るなどの対処法が一般的で、こまめにケアすると悪化しづらくなるようです。予防のため、ゼローダの投与開始とともに1日5回以上ハンドクリームを塗るなどスキンケアを実施したところ、症状が現れなかったとの報告もあります。

ところで今年3月、分子標的薬()ハーセプチン()がHER2()陽性 の切除不能な進行・再発胃がんの治療薬として承認され、ハーセプチンとゼローダとシスプラチンを併用した治療が可能となりました。今後は、この組み合わせで治療が行われることが予想されています。

分子標的薬=体内の特定の分子を標的にして狙い撃ちする薬
ハーセプチン=一般名トラスツズマブ
HER2=タンパクの1種で、細胞の増殖を促す受容体。がん細胞にHER2が多ければ、ハーセプチンによる治療の適応となる


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