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患者のためのがんの薬事典

イムシスト(一般名:乾燥BCG 膀胱内用)
膀胱がんの内視鏡手術後の再発予防にも効果的

取材・文:柄川昭彦
発行:2011年4月
更新:2014年1月

  
写真:イムシスト(一般名 乾燥BCG 膀胱内用)

イムシストの膀胱内注入療法は、膀胱がんのほぼ8割を占める筋層非浸潤性膀胱がんの治療に効果があるとして、03年から行われてきました。内視鏡手術後の再発予防に関しては、近年実施された臨床試験により、手術後だけに行うよりも、間隔をあけながら1年半後まで続けるほうが、再発予防効果が高いことが明らかになりました。昨年8月から、この使用方法が保険で認められています。

BCG ワクチンが膀胱がんに効く

結核を予防するワクチンとして知られるBCGは、膀胱がんの治療にも使われています。膀胱内にBCGを注入する治療が、膀胱がんに有効であることがわかったのは、1970年代のこと。

日本で実際の膀胱がんの治療に使われるようになったのは、イムシスト()が登場した2003年からです。

BCGがなぜ膀胱がんの治療に有効なのか、はっきりしたことはわかっていません。ただ、免疫が関与して抗腫瘍効果を発揮していることは、間違いないようです。弱毒化した結核菌が膀胱内に入ることで、免疫細胞の働きを促し、治療効果を発揮します。したがって、膀胱がんのBCG注入療法は、免疫療法の1種とされています。

イムシストが治療対象としているのは「筋層非浸潤性膀胱がん」です。膀胱がんは、膀胱の内側を覆っている粘膜上皮に発生し、進行するとその下にある筋層にまで広がっていきます。筋層非浸潤性膀胱がんとは、筋層にまで達していないタイプのがんで、膀胱がん全体のほぼ8割を占めています。

この筋層非浸潤性膀胱がんに対しては、TURBT(経尿道的膀胱腫瘍切除術)が標準治療になっています。尿道から膀胱内に内視鏡を挿入し、その先端についた手術器具でがんを切除するのです。膀胱を温存できるのがメリットですが、再発しやすいというデメリットがあります。再発してもTURBTを行えますが、何度も再発を繰り返していると、がんが筋層にまで達してしまうことがあります。こうなると最終的に膀胱を摘出する手術が必要。それだけにTURBT後の再発予防は重要で、抗がん剤注入療法や、BCG注入療法が行われてきたのです。

[筋層非浸潤性膀胱がんのリスク分類別治療方針]

リスク 内 容 治 療
低リスク 初発、単発、3cm未満、Ta、低グレードかつ併発上皮内がんなし 抗がん剤即時単回注入
中リスク 低リスク・高リスク以外 抗がん剤あるいはBCGのいずれかを注入
高リスク T1、高グレードまたは上皮内がん
(併発上皮内がん含む)、多発性、再発性
BCG注入あるいは膀胱全摘除術
※ TURBT が基本の治療

イムシスト= 一般名 乾燥BCG膀胱内用

維持療法への使用が新たに認可された

従来、TURBT後の再発予防としては、イムシストの膀胱内注入を6~8回実施する方法が行われてきました。TURBTを行った後、治療による膀胱壁の傷が修復するまで2週間ほど待ち、そこから週に1回のペースで、6~8週連続して膀胱内注入を行うのです。このような治療法を導入療法といいます。

これに対し、TURBT後だけでなく、数カ月の間隔をあけながら、イムシストの膀胱内注入を続けていくのが維持療法です。

再発予防効果が優れているのはどちらか、従来の導入療法と今回新たに認可された維持療法を比較する臨床試験が行われました。この臨床試験における導入療法は、TURBT後に6回の膀胱内注入が行われました。一方、維持療法は、TURBT後の6回に加え、3カ月後、6カ月後、12カ月後、18カ月後にそれぞれ週1回、3週間の膀胱内注入が行われました。

その結果、3年後の無再発生存率(再発せずに生存している患者さんの割合)は、導入療法群は65.4パーセントまで低下していましたが、維持療法群は84.6パーセントでした。維持療法で、再発がかなり減らせることが分かったのです。

この試験結果により、2010年8月から、イムシストは維持療法としても使用できるようになりました。治療の継続は大変ですが、再発を繰り返し、がんが進展する可能性が高いことを考えれば、維持療法で再発を防ぐことには大きな意味があるといえます。

維持療法では、膀胱内注入を計18回行うスケジュールになっています。これを完遂するのはなかなか大変で、臨床試験でも、最後まで完全に投与できた人は4割程度でした。ただ、副作用などで治療を休むことがあっても、約7割の人が18カ月目まで治療を行っています。スケジュール通りに治療ができなくても、18カ月後まで治療を継続することには、それなりの意味があると考えられています。

[維持療法は再発予防に有効]
図:維持療法は再発予防に有効

導入療法だけだとある程度その後の再発が起こるが、維持療法を行うことで、それをかなり減らせることがわかった

副作用を軽減するために治療後に水分を多く取る

イムシストは、尿道から挿入したカテーテル(治療用の細い管)を使い、膀胱内に直接薬を注入します。点滴で投与する薬に比べ、患者さんにとっては、身体的にも精神的にも負担の大きな治療といえるでしょう。

薬を注入した後は、原則として2時間は排尿できません。膀胱壁に薬を接触させる時間を確保するためです。

また、注入後最初の排尿では、弱毒化されているとはいえ結核菌を含む尿が排泄されるため、特別な処理が必要です。病院で排尿する場合には病院で消毒がされますが、自宅の場合にも、塩素系漂白剤などを用いて尿を消毒しなければなりません。

イムシストは膀胱内に注入する薬なので、副作用は膀胱に集中して出現します。最も多く見られる副作用は、頻尿、排尿時痛、血尿など。また、発熱などインフルエンザのような症状が現れることもあります。これらの副作用が現れた場合には、主治医に相談し、必要に応じて治療を1週休んだりします。

副作用を軽減する簡単な方法として、水分を十分に取ることが勧められています。尿量を増やすことで、薬の影響を軽くするのです。膀胱内注入後、その日の夕食までに1.0~1.5リットル飲むのが目安とされています。治療を継続するためにも、副作用を上手にコントロールしていくことが大切です。


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