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患者のためのがんの薬事典

ティーエスワン(TS-1)配合顆粒(一般名:テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)
経口抗がん剤TS-1に飲みやすさ向上のため顆粒剤が新たに登場

取材・文:柄川昭彦
発行:2009年9月
更新:2019年7月

  
ティーエスワン(TS-1)配合顆粒

TS-1は日本で開発され、胃がんの治療薬として1999年に承認後、大腸がん、乳がんなど適応範囲を広げてきました。効果はもちろん、飲み薬なので外来治療に適しているなど、使いやすさの点でも高い評価を受けています。

しかし、カプセルより顆粒を好む患者、高齢の患者、嚥下困難な患者の中にはカプセル剤をうまく飲み込めない人も少なからずいました。そこで開発されたのが、水に溶けやすく服用しやすいスティック包装の顆粒剤です。

効果・安全性が確認されている経口抗がん剤

[TS-1の効能・効果(2009年6月現在)]

  • 胃がん
  • 頭頸部がん
  • 結腸・直腸がん
  • 非小細胞肺がん
  • 手術不能又は再発乳がん
  • 膵がん
  • 胆道がん

TS-1(一般名テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム)が胃がんの適応症で1999年に承認され、ちょうど10年めになります。

その後、順次、頭頸部がん、結腸・直腸がん、非小細胞肺がん、手術不能または再発乳がん、膵がん、胆道がんに対する効能・効果が認められるなど、適応範囲を拡大してきました。

TS-1はとくに胃がん治療に使われる抗がん剤ですが、上記のように大腸がん、乳がんなど多くのがんの治療に使われている経口抗がん剤です。

TS-1は、昔から消化器がんの治療に使われていた5-FU(一般名フルオロウラシル)という抗がん剤を基礎に開発された薬で、抗がん作用のあるテガフール、抗がん作用の効果を高めるギメラシル、副作用を軽減するオテラシルカリウムという3種類の成分が配合されています。

つまり、5-FUの効果を高め、副作用が軽くなるように開発されたのがTS-1なのです。

TS-1の飲みやすさ向上のため、顆粒剤を発売

[TS-1顆粒剤の開発コンセプト]

  • (1)患者さんの要望から生まれた薬剤
    カプセルだと喉に違和感を感じる人、患者の高齢化、
    嚥下困難な患者etc
  • (2)水に溶けやすいスティック包装の薬剤
  • (3)飲みやすさの向上を目指した剤形

TS-1は1日2回、朝食後と夕食後に服用します。28日間連続で服用し、その後14日間休薬するのが基本的な服用方法です。

内服薬なので点滴投与する抗がん剤に比べ、通院治療が可能というメリットがあります。

その一方で、カプセル剤という剤形のため、高齢者や嚥下困難な患者さんの中には、TS-1をうまく飲めない人がいました。

そこでカプセル以外の飲みやすい剤形として、顆粒剤が開発され、今年6月に発売されました。

この顆粒剤は、水にすぐに溶ける服用しやすいスティック包装タイプです。服用した場合の血中濃度など、その効果と副作用はカプセル剤も顆粒剤も同じです。

TS-1の主な副作用は、骨髄抑制、食欲不振、吐き気、下痢などです。胃がん治療など、TS-1の効果については、最新トピックを中心に後述します。

TS-1服用の継続が治療効果を向上する

抗がん剤治療は、医師の指示に従ってきちんと服用することで初めて期待される効果を発揮します。

薬物治療においては、アドヒアランス(患者の積極的な治療参画)が重視されるようになってきています。

患者が治療内容を十分に理解し、積極的に服薬に取り組むことが、治療効果の向上につながることが明らかになってきたのです。

アドヒアランスには、服用回数や剤形も関係します。

服用回数が少なく、服用量が少ないことや飲みやすい剤形であることが、患者の治療意欲を高めるのです。

こういった観点からも、顆粒剤の登場は大きな意味を持っています。

カプセル剤よりも顆粒剤を好む患者やカプセル剤が飲みづらい状態の患者は、顆粒剤に変えるだけで、アドヒアランスの向上が期待できます。

それによって治療が計画通りに進み、期待する治療効果が得られる可能性が高くなるのです。

日本の大規模研究の結果、胃がん患者の生存期間を延長

TS-1の最新トピックとしては顆粒剤の発売のほかに、胃がん治療に関して日本で実施された2つの大規模臨床研究で、画期的な結果が出ました。

1つめは進行期の胃がん患者に、初回治療として、TS-1を単独投与した場合と、TS-1とシスプラチン(一般名)を併用した場合の治療成績を比較した臨床試験です。

その結果、生存期間中央値(ある治療を行ったときに、その治療を受けた患者さんの半分が亡くなるまでの期間)は「TS-1単独群」が11ヵ月、「TS-1+シスプラチン群」が13ヵ月でした。

また、無増悪生存期間中央値(病勢の進行が見られない状態で患者さんが生存している期間)は「TS-1単独群」が4.0ヵ月、「TS-1+シスプラチン群」が6.0ヵ月でした。

2年生存率は、「TS-1単独群」が15.3パーセント、「TS-1+シスプラチン群」が23.6パーセントでした。

いずれも、併用群のほうが統計学的にも優れていることがわかりました。

この結果、進行期胃がんにおける初回治療の標準治療として、TS-1とシスプラチンの併用療法が標準治療として推奨されています。

もう1つの研究は、胃がんの手術後の再発予防としてTS-1を服用した場合の有効性を調べたものです。

「手術単独群」と、手術後にTS-1を1年間服用する「TS-1投与群」とに分け、比較研究が行われました。

その結果、3年無再発生存率は、「手術単独群」が59.6パーセント、「TS-1投与群」が72.2パーセントでした。

また3年生存率は「手術単独群」が70.1パーセント、「TS-1投与群」が80.1パーセントでした。

つまり、TS-1による術後補助化学療法を行ったほうが、再発が抑えられ、生存期間が延びることが明らかになったのです。

この結果を受けて、胃がんの術後補助化学療法についても、TS-1の1年間投与が標準治療として推奨されています。

その後の研究により、この研究に参加された患者の中で休薬をしながらでも1年間継続し、TS-1の予定服薬量の70パーセント以上服用した患者の生存率が高い傾向がみられました。

今回、顆粒剤の発売により、剤形の種類が増えたことで、TS-1の服用の継続率が向上、ひいては、生存率の向上が期待できるようになります。このような点で顆粒剤の登場は、大きな意味があると言えます。


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