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患者のためのがんの薬事典

アンプリコアHPV
子宮頸がんの原因であるHPVを調べる検査薬

取材・文:平出浩
発行:2009年7月
更新:2014年1月

  
アンプリコアHPV

子宮頸がんは早期に発見できれば、治る可能性が高いのですが、進行して発見されるケースも少なくありません。背景には、子宮がん検診を受ける女性が少ないことがあります。
また、子宮頸がんの原因の大半はHPV(ヒトパピローマウイルス)と呼ばれるウイルスです。
HPVに感染しているかどうかは、簡単な検査で調べることができます。「アンプリコアHPV」は、13種の高リスク型HPVに感染しているかどうかを調べる検査薬です。

子宮頸がんの原因の大半はHPV

子宮頸がんの原因は、ほぼ100パーセント、HPV(ヒトパピローマウイルス)と呼ばれるウイルスの感染であることが解明されています。

HPVには100種類以上のタイプがあり、そのうち13種類のHPVが子宮頸がんの主原因と考えられています。

また、HPVは主に性交渉によって感染するウイルスで性交渉のある女性であれば一生の内に1回は感染するとも言われています。

しかし、HPVに感染した女性が全員、子宮頸がんになるわけではなく、およそ90パーセントの人は免疫力などの効果によって、感染したHPVは1~2年以内に消滅します。残りの10パーセントほどの人は、HPVに継続して感染していることになり、さらにこれらの人の一部が子宮頸がんを発症すると考えられています。

子宮頸がんは早期に発見できれば完治が見込め、子宮を温存して、妊娠・出産をすることも可能です。そのため、早期発見は重要ですし、さらには、子宮頸がんの原因である高リスク型HPVに感染しているかどうかがわかれば、次の精密検査を受けて適切な対応を受けることができます。

[子宮頸がんの発生メカニズム]
図:子宮頸がんの発生メカニズム

子宮頸部の粘膜細胞でHPVを調べる

子宮頸がんの検査は従来、細胞診(子宮頸部から採取した細胞を顕微鏡によって検査し、細胞の異常を判定する診断法)が中心でしたが、近年、HPV検査が加えられる傾向があります。

日本でも昨年9月に承認を取得した「アンプリコアHPV」は、HPV検査に使われる検査薬です。アンプリコアHPVを使った検査を受けることで、子宮頸がんの主原因である13種類の高リスク型HPVの感染の有無を調べることができます。

検査の方法を、簡単に説明しましょう。

検査を受ける女性は内診台に上がります。医師が柔らかいブラシを使って子宮頸部の粘膜細胞をこすり取り、その細胞のHPV感染の有無を医療施設や検査センターで調べます。子宮頸がんの検査を受けたことのある人はわかるでしょうが、基本的な方法は従来の子宮がん検診(正確には、子宮頸がんの細胞診)と同じです。

また、アンプリコアHPVを使った検査は、すでに行われているHPV検査法とほぼ同等の検査成績を得ています。そのため、高い検査精度を期待することができます。

細胞診とHPV検査を併用している施設もある

検査にかかる費用は、どれくらいでしょうか。残念ながら、保険は使えないため、自由診療になります。自由診療の場合、費用は医療施設によって異なりますが、おおむね5000~6000円が多いようです。

現在、専門家の間では保険の適用が議論されているため、今後は保険診療になる可能性もあります。

子宮頸がんについては、早期発見のために、厚生労働省は、20歳以上の女性には2年に1回程度、子宮がん検診を受けることを勧めています。しかし、この子宮がん検診は子宮頸部の細胞診を指し、HPV検査に関しては今のところ、定められた国の指針はありません。ただし近年は、細胞診と一緒にHPV検査を実施している医療施設もあります。

また、欧米ではHPV検査に関する指針も出されています。

たとえば米国では、30歳以上の女性にHPV検査を受けることが推奨されています。また、細胞診とHPV検査でともに陰性であった場合は次回の検査は3年後、細胞診が陰性で、HPV検査が陽性であった場合は次回の検査は半年~1年後に受けることが勧められています。

オランダでは、細胞診とHPVがともに陰性であった場合、次回の検査は5年後で構わないとされています。

「あかずきん.jp」に子宮頸がんの情報が満載

数多くあるがんの中で、原因が判明しているがんは多くありません。そうした中、子宮頸がんは原因がわかっている数少ないがんです。

細胞診を受けることで、がんやがんになる前の病変(前がん病変=異形成細胞)などがわかるし、HPV検査を受けることで、高リスク型のHPVに感染しているかどうかもわかります。 しかし現状では、子宮頸がんの検診を受ける女性は多くありません。

子宮頸がん検診の対象になる女性の30パーセント弱しか受けていないのが現状です。

対して欧米諸国では、米国の83パーセントなど、70パーセント以上の受診率がある国が多数です。

こうした日本の低い受診率の現状を踏まえて、「アンプリコアHPV」の製造販売元であるロシュ・ダイアグノスティックス株式会社では、「あかずきん.jp」という子宮頸がんの情報サイトを2009年2月に開設しました。

「あかずきん.jp」は、「あかずきんちゃん」が誰もが知っている親しみやすいキャラクターであることに加え、頭巾が子宮の形に似ていることから名づけられました。「あかずきん.jp」では、子宮頸がんの特徴、子宮頸がん検診の意義や流れ、子宮頸がんのリスクをチェックする方法などについて詳しく、かつわかりやすく紹介しています。

繰り返せば、子宮頸がんの大部分は高リスク型HPVが原因で起こります。そのHPVの感染の有無はHPV検査で簡単にわかります。子宮頸部の細胞診とHPV検査を受けることで、子宮頸がんの早期発見は可能です。

20歳以上の女性は、これらの検査を定期的に受けるとよいでしょう。


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