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患者のためのがんの薬事典

ネクサバール(一般名:ソラフェニブ)
日本で初めての根治切除不能、転移性の腎細胞がんの分子標的治療薬

取材・文:「がんサポート」編集部 文山満喜
発行:2009年6月
更新:2019年7月

  
ネクサバール(一般名ソラフェニブ)

ネクサバールは、日本で初めて、根治切除不能または転移性の腎細胞がんを適応症として製造販売承認を取得した経口の分子標的治療薬です。
細胞増殖や血管新生(がん組織への血液供給)にかかわる複数のキナーゼ(がん細胞の増殖に関与する酵素)を阻害し、腎細胞がんの増殖を抑えます。そしてそれによって患者さんの無増悪生存期間を延長する、従来の治療法とはまったく異なる新しい腎細胞がん治療薬です。

日本初の腎細胞がんを適応症とした分子標的薬

ネクサバール(一般名ソラフェニブ)は、2008年1月に、日本で初めて「根治切除不能または転移性の腎細胞がん」を適応症に製造販売承認を取得した経口の分子標的治療薬です。

腎臓に発生する腫瘍には腎細胞がんとウイルムス腫瘍がありますが、腎細胞がんは腎臓の尿細管の上皮にがんができる病気です。

腎細胞がんの罹患者数は、年々増加傾向にある腎がんの中で最も発症頻度が高く、約1万人といわれる国内腎がん患者さんのうち、80~85パーセントを占めています。

腎細胞がんは、がん抑制遺伝子の1つであるVHL遺伝子が欠損している家系で発症しやすいことが知られているほか、喫煙や肥満といった生活習慣因子、アスベスト(繊維状鉱物)やカドミウム(鉄材の錆を防ぐためのメッキ、電池、および鉛等との合金に用いられる金属)などの環境因子、長期にわたる透析(腎臓の代わりに血液を浄化する治療法)などが危険因子として知られています。

進行が早く、予後が不良な根治切除不能または転移した腎細胞がんの従来の治療法は、外科手術による腫瘍除去と、その後にインターフェロンαや、インターロイキン2という薬によるサイトカイン療法(免疫療法)が主なもので、外科手術が不可能な患者さんや免疫療法が効かない患者さんでは、十分な効果を期待できず、新たな治療法の開発が切望されていました。

ネクサバールは、バイエルヘルスケア社とオニキス・ファーマシューティカル社が共同開発した薬剤で、細胞分裂(がん組織の成長)と血管新生(がん組織への血液供給)といった、がんの増殖に関与するキナーゼ(リン酸化酵素)群に作用し、がんの増殖を抑えます。

国内外の臨床試験で無増悪生存期間を延長

ネクサバールの開発は、欧米諸国で先行して行われました。

根治手術のできないまたは転移性の腎細胞がん患者さんを対象に行われた海外第3相臨床試験の中間解析において、ネクサバールはプラセボ(偽薬)に対して無増悪生存期間を2倍に延長し、かつ許容できる忍容性(薬剤の副作用がそれ程強く発現せず、患者さんが治療に耐えられること)であることが示されました。

この結果を受けて、米国食品医薬品局は倫理的観点からプラセボの投与を打ち切り、全例にネクサバール投与の機会を与えるよう提言するとともに、無増悪生存期間の成績に基づいた承認申請を認めました。

このため、米国においては、全生存期間の試験成績を待たずに承認申請が行われ、2005年12月に承認を取得しています。

また、最終解析の結果、ネクサバールの治療による全生存期間の延長効果が示唆されました。

国内で行われた第2相臨床試験でも、海外の臨床試験と同様の成績と、許容できる忍容性を有することが示されました。試験の結果は、無増悪生存期間を32週(中央値)延長、奏効率は12.4パーセントでした。

[ネクサバールの効果(無増悪生存期間 国内第2相臨床試験)]
図:ネクサバールの効果(無増悪生存期間 国内第2相臨床試験)
出典:Akaza H, et al: Jpn J Clin Oncol. 2007;37(10):755-62. 2)Therasse P, et al: J Natl Cancer Inst. 2000; 92(3): 205-16.

主な副作用は、手足症候群、高血圧、下痢

一方、ネクサバールの主な副作用(国内第2相臨床試験の結果)は、手足症候群などの皮膚症状、高血圧、下痢などで、これらは服用後1カ月以内に現れることが多いそうです。

最も発症頻度が高いのは手足症候群で、初期症状として、手のひらや足の裏など、圧力がかかる部分にチクチク、ピリピリとした症状が現れることがあります。対策としてはこまめに角質を除去したり、保湿剤を塗ることで、重い症状にならずにすみます。

高血圧については、服用初期に血圧の上昇が認められることがあります。対策としては、毎日決められた時間に血圧を測定し、高血圧が認められた場合には、専門医への相談が必要となります。

下痢に関しては、止瀉剤(下痢止めの薬)などで対処します。

また、ごく少数ながら、間質性肺炎が現れることがあります。服用中に息苦しいと感じたら、すぐに主治医に相談してください。

ネクサバールは、適正使用推進と安全性対策のため、がん化学療法に精通し、副作用への緊急対応が可能な、専門医がいる医療機関でのみ処方されます。また、発売初期の一定期間については、「全例調査」を行うことが承認条件として義務付けられました。

同時に、ネクサバールの適正使用推進を目的として、ネクサバールの発売元であるバイエル薬品は、インターネット上に、ネクサバールの情報を提供する「ネクサバール総合情報サイト」を開設しました。

ネクサバールを服用する患者さんとその家族は「ネクサバールを服用される患者さんとご家族の方のサイト」から、閲覧することができます。

肝がんの適応拡大を申請中のほか、胃がんなどでも開発中

ネクサバールは、現在、世界70カ国以上で、進行性腎細胞がんの治療を目的に承認されています。

また、30カ国以上で肝細胞がんの適応症も承認を取得しています。日本でも肝細胞がんに対する適応拡大を厚生労働省に申請中で、年内には承認が取得できる見込みとなっています。

肝細胞がん以外で、国内で開発中の適応症としては、胃がんや非小細胞肺がんなど、その他各固形がんに対して適応拡大の計画があります。


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