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患者のためのがんの薬事典

オキシコンチン錠/オキノーム散(一般名:オキシコドン)
がんの疼痛緩和に最も多く用いられる麻薬、それがオキシコドンです

監修:畠 清彦 癌研有明病院化学療法科部長
文:水田吉彦 日本メディカルライター協会(JMCA)
発行:2007年10月
更新:2014年2月

  

わが国では、効果の“長い”オキシコドンとして、オキシコンチン錠(塩野義)が2003年夏に発売され、今年の2月には、効果の“短い”オキシコドンであるオキノーム散(同社)も発売されました。
待たされましたが、やっと“長・短”の両方が揃って安心です。

長時間型と短時間型の使い分け

がん患者さんの体の痛み(疼痛)は、1日中継続する“持続痛”と、その上さらに痛みが増す“突発痛”とに分けられます。これらに対応する麻薬にも、“長時間作用型”と“短時間作用型”とがあり、それぞれを使い分けています。すなわち、長時間作用型の麻薬を使って持続痛を抑えながら、突発痛が加わった場合には、短時間作用型の麻薬を臨時追加(レスキュー投与)するわけです。

もしもの話ですが、突発痛に際して長時間作用型の麻薬を追加してしまうと、半日以上にもわたって血中麻薬濃度が著明上昇したままの状態となり、副作用の面で大変に危険です。そんなことにならないよう、突発痛に対しては、血中から速く消えて無くなる短時間作用型の麻薬が追加されるのです。

麻薬の1種であるオキシコドンにも、長時間作用型の“オキシコンチン錠(徐放性の錠剤)”と、短時間作用型の“オキノーム散(速放性の粉薬)”の2種類があり、通常はオキシコンチン錠を1日2回服用しながら、突発痛が襲った際には、オキシノーム散をレスキュー投与するといった具合に使い分けます。

さて、持続痛と突発痛のそれぞれに対応する麻薬ですが、普通は同じ成分のものを選択します。しかしながらオキシコドンの場合には、2003年に長時間作用型の製剤(すなわちオキシコンチン錠)だけが発売され、短時間作用型の飲み薬は未発売であったことから、突発痛を同一麻薬でレスキューする手段がなく、多少困った状況でした。当時も短時間作用型の注射剤は存在しましたが、これでは突発痛に際して患者さん自身が投与する訳にもゆかず、大変に不便でした。

そうした状況を改善すべく、飲み薬の短時間作用型オキシコドンが強く要望され、今年になってオキノーム散が発売されるに至りました。オキシコンチン錠からオキノーム散の発売まで、4年近く待たされたことになりますが、これで長時間作用型と短時間作用型の両オキシコドンが揃い、使い勝手は格段に向上したと言えるでしょう。

オキシコドンが好まれる理由

がん患者さんの疼痛管理に使われる麻薬(強オピオイド)は、モルヒネ製剤、フェンタニル製剤(デュロテップ・パッチなど)、そしてオキシコドン製剤の3つに大別されます。なかでも近年、最も多く用いられている麻薬がオキシコドンであり、状況はアメリカにおいても同様です。

かつて、がん性疼痛緩和を目的とした麻薬使用は、モルヒネが主体でしたが、モルヒネを上回るいくつかの利点がオキシコドンに認められた結果、モルヒネよりも好んで使われるようになっています。表には、長時間作用型のオキシコンチン錠を例にとり、オキシコドンの利点をいくつか列挙しました。簡単ではありますが、順次ご説明しましょう。

まず副作用です。軽い副作用としては、吐き気や皮膚の痒みなどがあり、その頻度はモルヒネよりも若干少ないとされています。幻覚に関しても、欧米の臨床試験では若干少ないと報告されました。なお、眠気を生じる場合には、それを防止するための目覚まし薬がありますから、気になれば医師にご相談ください。また、程度の差こそあれ便秘ぎみになるので、便を柔らかくする薬が同時に処方されます。 重篤な副作用は、モルヒネと同様に“呼吸抑制”です。オキシコドンを服用中の患者さんが不自然に眠ってばかりいるときには、その際の呼吸回数をご家族が数えて、通常よりも減っているなら迷わず医師に連絡してください。

鎮痛効果はモルヒネと同等ですが、モルヒネのような個体差(患者さんによって効く・効かないの差)は少ないようです。服用から鎮痛効果が得られるまでの時間は、大半の患者さんで1時間程度と速やかです。なお、体内に蓄積するといった心配などは無用で、薬物依存性もありません。ただし、精神不安を紛らわせる目的で、必要以上の服用を続ける患者さんが稀におられますから、注意は必要です。 オキシコンチン錠では、錠剤を特殊な工夫でコーティングしているため、消化管の中でゆっくりと溶け出し、12時間の安定した効果が持続します。したがって、服用は1日2回で済みます。

また、5ミリグラムという非常に少ない含量の錠剤から用意されていますので、初めて麻薬を使う患者さん(おそらくは少量でも効果あり)には、大変便利です。がんの進行に伴って痛みが増す場合にも、細かく用量を増やしていけますから、その点でも5ミリグラム錠は大いに役立ちます。 ちなみに、オキシコドンは量を増やせば増やすほど効き目が強くなり、副作用が問題とならない限り、どこまで増やしても良いとされています(ただし、あまりにも量が増えたなら、モルヒネ注射などに変更します)。

[オキシコンチン錠(オキシコドン)の利点]
オキシコンチン錠の特長 ・副作用で、嘔気、嘔吐、皮膚症状、精神症状の発現が少ない(モルヒネと比較)
・内服後、効果発現まで1時間前後と早い
・活性代謝産物オキシモルフォンが微量なため、蓄積を心配しなくてよい
その他の特長 ・AcroContinシステムを利用し、12時間効果が安定して持続する
・5㎎規格製剤があるため、細かい用量調節が可能
・5㎎規格製剤があるため、疼痛発症の初期から投与可能である
・bioavailability(薬剤がどれだけ完全に体に利用されるかを表す)が高い
注意点 ・便秘の発現率はモルヒネとほぼ同様である


保管は厳重に

最後に、保管の注意などを申し上げます。オキシコドンはしばしば「モルヒネではありません」といった説明がされますが、麻薬であることに変わりはありません。海外では薬局からオキシコドンを盗み出し、これを乱用・密売する犯罪者や麻薬中毒が社会問題ともなっています。ですから、ご家庭での保管場所には十分注意を配り、お子様などの手の届かない場所に置いてください。また、薬剤変更などで不要となったオキシコドンは、そのまま家庭内に所有せず、病院や薬局に返却するようお願いします。


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