• rate
  • rate
  • rate

患者のためのがんの薬事典

ベプシド/ラステット(一般名:エトポシド)
悪性リンパ腫、肺がんなどに効果のトポイソメラーゼ阻害剤。小児固形がんへの適応が追加承認

監修:畠清彦 癌研有明病院化学療法科部長
発行:2006年9月
更新:2014年2月

  
写真:ベプシド(一般名 エトポシド)

日本では、1980年代に登場した薬です。ベプシド(ブリストルマイヤーズ)、ラステット(日本化薬)と、国内では2種類の販売名で承認されています。
経口剤は、発売当初、軟カプセル剤でしたが、1994 年に、より服用しやすく安定な製剤とした小型化硬カプセル剤に切り替わっています。
従来の適応に加え、昨年、小児の固形がんにも追加承認がされています。

植物の毒性成分を利用した抗がん剤

エトポシド(商品名はベプシド、ラステット)は、メギ科の植物であるポドフィルムをもとに作られた抗がん剤です。ポドフィルムは、非常に強い毒性を持った植物ですが、その根茎に含まれる、ポドフィロトキシンという成分に、抗腫瘍作用があることが確認されていました。しかし、そのままでは、毒性が強すぎて人体には使用できないため、毒性を抑えるために薬剤としてエトポシドが合成されました。

ポドフィロトキシンのような植物由来の成分は、総称して「アルカロイド」と呼ばれています。それぞれさまざまな性質を持っており、たとえばタバコ草に含まれるニコチンもアルカロイドに分類されます。

国内外で幅広く使われているトポイソメラーゼ阻害剤

抗がん剤としては、「トポイソメラーゼ阻害剤」のうちの「トポイソメラーゼII阻害剤」に分類されます。これは、細胞内のDNAの分裂、増殖や再結合に必要な「トポイソメラーゼ」という酵素の働きを抑えることで、抗腫瘍効果を発揮する薬剤です。

エトポシドの開発は、1960年代より進められ、その後の臨床研究の結果、小細胞肺がん、悪性リンパ腫、白血病などへの効果が立証。1980年に、欧米各国で承認されました。現在では、世界78カ国以上で発売されています。日本国内では、1987年に輸入承認がされました。

注射剤と経口剤があり、経口剤については、通常の5日間連続投与の方法に加え、21日間連続投与し1~2週間休薬する方法が、悪性リンパ腫に対しては96年、子宮頸がんに対しては2000年にそれぞれ追加承認されています。

現在の適応疾患は、小細胞肺がん、悪性リンパ腫、急性白血病、睾丸腫瘍、膀胱がん、絨毛性疾患、胚細胞腫瘍、子宮頸がん。他の抗がん剤との併用療法として、ユーイング肉腫や横紋筋肉腫、神経芽腫、網膜芽腫、肝芽腫といった小児の固形がんへの使用が認められています。

主な副作用小児への使用はとくに注意

副作用は、特別強く出る薬ではありませんが、それでも、臨床試験のデータでは、89.2パーセント(総症例4586例)に何らかの副作用が出たとの結果が出ています(注射薬での場合)。主な内容は、頻度の高いものから順に、白血球減少、貧血、食欲不振、血小板減少、脱毛、嘔気、嘔吐、けん怠感、発熱、口内炎などです。他に、まれではありますが、骨髄抑制やショック、間質性肺炎などの重大な副作用が出ることがある(いずれも頻度は0.2パーセント程度)ので、注意が必要です。

また、エトポシドは、小児がんにも多く使われる抗がん剤です。まだ、小児に対する安全性は確立していないので、とくに副作用に注意し、慎重な投与が必要です。中でも低出生体重児、新生児には、減量など、充分な配慮をすることが重要です。

それ以外に、特徴的な問題として、成人小児問わず、治療後時間がたってから、2次性の白血病が起こったとの報告がされています。

各がんにおける代表的な使用法

実際にどの種類のがんで、どのような役割を果たしているか、主なものをいくつか紹介します。

悪性リンパ腫では、ホジキンリンパ腫の再発に対するサルベージ(救援)療法として、EPOCH療法、ESHAP療法の組み合わせで使用されています。

睾丸腫瘍の非セミノーマ、2b期以上のセミノーマでは、シスプラチン、エトポシドの2剤併用療法(EP療法)、もしくはこれらにブレオマイシンを加えた3剤併用療法(BEP療法)が、一般的に第1選択の化学療法となっています。

また、BEP療法は、同様に効果が期待できるとして、胚細胞腫瘍(精巣腫瘍、卵巣腫瘍、性腺外腫瘍)に対しても、2004年に追加承認されました。

肺がんでは、小細胞がんに対して使われます。小細胞がんは、進行が速く、悪性度の高いがんですが、抗がん剤や放射線治療が比較的効きやすいという特徴もあり、90年頃から、エトポシドとシスプラチンを組み合わせたEP療法が、標準的な化学療法とされてきました。

現在は、同じトポイソメラーゼ阻害剤のイリノテカンをエトポシドの代わりに用いるIP療法という治療法が、日本で行われた臨床試験の結果、良好な成績をあげており、日本ではこちらを第1選択として行うことが多くなっています。

小児がんに対しては、2005年2月に追加承認されたばかりですが、現在、さまざまな小児固形腫瘍に用いられています。たとえば、ユーイング肉腫では、イホマイド(一般名イホスファミド)との2剤併用が多く行われています。

また、目に生じる網膜芽腫には、パラプラチン(一般名カルボプラチン)、オンコビン(一般名ビンクリスチン)と組み合わせた3剤併用が一般的です。その他、横紋筋肉腫、神経芽腫、肝芽腫などに対しても、有効な他剤との併用療法が確立されており、小児がんにおいて重要な役割を担っています。

EPOCH療法=エンドキサン(一般名シクロフォスファミド)、オンコビン(一般名ビンクリスチン)、エトポシド、アドリアマイシン(一般名ドキソルビシン)、プレドニン(一般名プレドニゾロン)
ESHAP療法=エトポシド、メドロール(一般名メチルプレドニゾロン)、シスプラチン、キロサイド(またはサイトサール、一般名シタラビン)

[エトポシド(注射剤、単独静脈内投与)の臨床成績]
疾患名 症例数 著効
(CR)
有効
(PR)
不変
(NC)
進行
(PD)
著効率
(%)(CR)
奏効率
(%)(CR+PR)
肺小細胞がん 118 0 40 60 18 0 33.9
悪性リンパ腫 71 8 21 42 11.3 40.8
急性白血病 56 4 10 42 7.1 25.0
睾丸腫瘍 50 1 6 25 18 2.0 14.0
膀胱がん 43 0 5 25 13 0 11.6
絨毛性疾患 56 29 16 7 4 51.8 80.4


同じカテゴリーの最新記事

  • 会員ログイン
  • 新規会員登録

全記事サーチ   

キーワード
記事カテゴリー
  

注目の記事一覧

がんサポート4月 掲載記事更新!