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患者のためのがんの薬事典

アクプラ(一般名:ネダプラチン)
日本国内で開発された副作用を抑えた新しい白金製剤

監修:畠清彦 癌研有明病院化学療法科部長
発行:2006年7月
更新:2014年2月

  
写真:アクプラ(一般名ネダプラチン)

シスプラチンの副作用を抑えることを目的に、日本で開発された新しい白金製剤です。
多くの臨床試験が行われている段階ですが、中にはシスプラチンよりも優れた成績を示すデータも出ています。
現在は、他の抗がん剤が効かなかった場合など、第2、第3の選択肢として用いられることが多い薬剤です。


ブリプラチン(またはランダ、一般名シスプラチン)という、有名な抗がん剤があります。これは、白金(プラチナ)製剤と呼ばれる薬剤の一種で、がん細胞のDNAと結合し、DNAの合成を妨げることで、細胞の分裂、増殖を阻害するといったはたらきを持っています。1983年より、日本でも発売が開始されたシスプラチンは、腫瘍を縮小させる効果が高く、また多くの種類のがんに適応があることから、その後の抗がん剤治療において、重要な役割を担ってきました。

しかし、吐き気・嘔吐、食欲不振などの副作用が強く出やすいことが特徴の1つで、腎臓障害、骨髄抑制といった重篤な副作用も現れます。この問題を受けて、副作用を抑えた新しい白金製剤の開発が進められ、国内では1990年にパラプラチン(一般名カルボプラチン)が発売されました。

アクプラ(一般名ネダプラチン)も、同じように、シスプラチンの毒性をできるだけ抑えることを目的につくられた白金製剤です。日本で研究・開発された薬剤で、1995年に発売されました。これが、日本国内で開発された最初の白金製剤です。

適応範囲は、頭頸部がん、肺がん、食道がん、膀胱がん、精巣腫瘍、卵巣がん、子宮頸がんです。現在のところ、日本でのみ発売されている抗がん剤で、海外では保険適用はありません。

白金製剤としては比較的水に溶けやすい

通常、患者の体表面積1平方メートル当たり80~100ミリグラムを投与し、4週間以上の休薬。これを1コースとされています。また、投与量に応じて300ミリリットル以上の生理食塩液や注射液に溶かして、60 分以上かけて点滴で静脈注射します。その後は1000ミリリットル以上の輸液をします。

基本的に白金製剤は水に溶けにくい性質を持っています。水溶性が低いと、投与の際に大量の水に溶かさなければならないので投与量も多くなり、その分副作用も多く出ます。その点を改善するために、アクプラは白金製剤の中では比較的水溶性が高い薬剤になっています。アクプラという商品名の由来は、「アクア=水」に溶けやすい「白金=プラチナ」の意です。

シスプラチンに比べれば、副作用は比較的軽いものの、元来白金製剤は副作用が強いことが特徴であり、中でも吐き気・嘔吐などの消化器症状が多くの患者にみられます。これに対しては、制吐剤を併用するなどの対応をとることが一般的です。その他には、全身倦怠感、発熱、聴力障害、脱毛などが比較的現れやすい副作用です。

また、白金製剤の重篤な副作用として代表的な腎障害についても、従来の薬剤に比べて少なくなっていますが、場合によっては、水分補給や利尿剤によって尿量を増やすなどの処置が必要になります。これは、尿量が減少することで薬剤の尿中濃度が上昇し、毒性が強められるためです。その他、骨髄抑制による免疫力の低下が起こることもあり、注意が必要です。

再発・転移がんにおける選択肢に

他の白金製剤と同じように、主に他の抗がん剤との併用で使用されています。新しい薬であることから、今だ臨床試験中のものが多くあり、施設によって使用法にも違いがありますが、その中から、がん種別に用途をいくつかあげてみます。

食道がんの抗がん剤治療において、現在最も一般的に使われている組み合わせは、シスプラチン+5-FU(一般名フルオロウラシル)ですが、副作用が強く現れた場合などに、シスプラチンの代わりにアクプラを使うことがあります。

このように、副作用軽減の理由から、シスプラチンの代わりに使用されるケースが他にもよくあります。また、初回の化学療法が効かなかった場合や、その後の再発例に対する救済療法(サルベージ療法)という位置づけで用いられることが多いのも特徴です。

精巣腫瘍では、主に救済療法として、カンプトまたはトポテシン(一般名塩酸イリノテカン)+アクプラの組み合わせで使われる他、タキソール(一般名パクリタキセル)、イホマイド(一般名イフォスファミド)と組み合わせた3剤併用療法(TIN療法)も行われています。

カンプトとの組み合わせは、再発・進行期の子宮頸がんに対しても、ASCO(米国臨床腫瘍学会)などで良好な成績が報告されており、選択肢の1つとして期待されています。

卵巣がんでは、エンドキサン(一般名シクロフォスファミド)やタキソール(一般名パクリタキセル)との併用が、組み合わせとしては一般的です。

肺がんでは、カンプトやタキソール、タキソテール(一般名ドセタキセル)といった新規抗がん剤との組み合わせが考えられ、シスプラチンとほぼ同等の効果という報告があります。

抗がん剤としての歴史はまだ浅く、海外での適応もないことから、今後も多くの検討、臨床研究が必要になりますが、とくに切除不能例や、進行・再発期のがんにおいての選択の幅を広げる役割を担っている薬剤の1つです。

[疾患別奏効率]
疾患名 有効性評価
対象例
奏効度別例数 疾患別奏効率
(奏効(著効+有効)例数
/有効性評価対象例数)
著効 有効 やや有効 不変 進行
頭頸部がん 90 11 27 5 30 17 42.2%(38/90)
肺小細胞がん 22 0 9 0 9 4 40.9%(9/22)
肺非小細胞がん 103 1 16 4 53 29 16.5%(17/103)
食道がん 29 0 15 2 7 5 51.7%(15/29)
膀胱がん 21 2 6 2 7 4 38.1%(8/21)
精巣(睾丸)腫瘍 15 6 6 0 0 3 80.0%(12/15)
卵巣がん 59 4 18 10 21 6 37.3%(22/59)
子宮頸がん 79 8 24 7 28 12 40.5%(32/79)


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