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患者のためのがんの薬事典

ゾメタ(一般和名:ゾレドロン酸/一般洋名:ゾレドロネート)
高カルシウム血症の治療薬骨転移に伴う諸問題にも大きな効果

監修:畠清彦 癌研有明病院化学療法科部長
文:水田吉彦
発行:2005年9月
更新:2014年2月

  
zometa

女性では”乳がん”、男性では”前立腺がん”において、「骨転移」が多く起こります。骨転移を起こせば、「痛み」「骨折」「高カルシウム血症」などの問題が生じます。ゾメタは、そうした骨転移に伴う諸問題を解決、もしくは軽減するために開発された薬剤です。国内では、”悪性腫瘍による高カルシウム血症”に対する効能が、まず先行して承認されました。近々その他の効能も、追加承認される見込みだそうです。類似薬アレディアとの違いも含めて、ゾメタの利点などを解説します。

まず、骨転移について、簡単に説明しておきましょう。がん細胞は、元の居場所(原発巣)から離れて、血液によって運ばれ、ほかの場所や臓器に住み着くことがあります。これを一般に“転移”と言います。骨転移とは、読んで字のごとく“骨に転移する”ことであり、乳がん、肺がん、前立腺がん等に多くみられる現象です。骨に転移したがんは“転移性骨腫瘍”とも呼ばれ、骨を溶かしてしまうことなどから、色々な問題を起こします(表1)。

■表1 骨転移(特に溶骨性骨転移)に伴う諸問題
高カルシウム血症
骨のカルシウムが血液中に溶け出すことで、頻尿、吐き気、嘔吐、便秘、脱力感、うつ状態などを生じる。カルシウムの溶出を止めれば、血中カルシウム濃度は下がって、症状が消失する。
痛み
体を動かしたり、転移巣に体重をかけた際に激しく痛む。モルヒネなどの鎮痛薬で、ある程度は痛みを抑えることが可能。
骨折
溶骨性骨転移で脆くなった骨が、体重や運動でつぶれる、もしくは折れる。脊髄でこれが生じると神経が圧迫されて手足などに麻痺を生じる。

骨転移で生じる問題の1つ目は、「高カルシウム血症」です。骨転移が広がると、骨が壊されて、血液の中に大量のカルシウムが溶け出します。すると、血液中のカルシウム濃度が高くなり(高カルシウム血症)、その結果として頻尿、吐き気や嘔吐、便秘、脱力感、うつ状態、悪くすると錯乱などを生じます。

問題の2つ目は、「痛み」です。最初は軽い痛みや不快感で始まり、がんの進行に伴って耐え難い痛みに変わっていきます。

問題の3つ目は、「骨折」です。骨転移によって脆くなった部位が骨折し、動けなくなります。場合によっては、背骨の一部が骨折して神経を圧迫し、手足に麻痺などが出ることもあります。

以上のこれらの問題は、骨転移の初期には軽微ですが、進行するにつれQOL(生活の質)を大きく損なう原因となります。

骨を丈夫にする注射

さて、ゾメタですが、これは骨を丈夫にするための薬剤です。骨粗鬆症で使われる“ドロネート系”と呼ばれる飲み薬を強力にした、注射用の新薬です。骨を丈夫にする仕組みは複雑ですが、簡単に言えば「歯医者さんで歯にフッ素を塗ってもらうと、虫歯にならない」のと似ています。

注射したゾメタの成分が骨に染み込んで、骨を溶かそうとする細胞(転移性骨腫瘍も含まれる)の働きを弱める結果、骨は丈夫に保たれます。骨を丈夫に保つことができれば、骨転移に伴う諸問題(高カルシウム血症、痛み、骨折など)は解決されるか、もしくは軽減できるはずです。そんな期待をもって開発されたのが、ゾメタです。

ゾメタと同じ働きをする薬剤には、アレディア(一般名パミドロネート)があります。アレディアは、国内で1994年に承認され、主に乳がんの骨転移で使用されてきました。この2つの新旧薬剤を比較してみましょう(表2)。

■表2 新旧の薬剤比較
商品名
(一般名)
骨を丈夫にする
効果の強さ
点滴の所要時間 投与間隔 ※※ 適  応 ※※※
(治療の対象となる病気)
アレディア
(パミドロネート)
1倍 4時間以上 4週間に1回(国内) 乳がんの溶骨性骨転移(国内)
ゾメタ
(ゾレドロネート)
847倍 15分以上 3~4週間に1回(海外) 乳がん、前立腺がん、その他のがんの溶骨性骨転移(海外)

骨吸収抑制能を大黒ネズミで評価。
※※高カルシウム血症の治療には1週間間隔で投与される場合もある。
※※※高カルシウム血症の治療には、がん種を問わない。

最も目を引くのは、「骨を丈夫にする効果」の違いです。従来のアレディアに比べて、ゾメタの効果は約1000倍強いのが特徴です。

投与に要する時間も、新旧薬剤で大きく異なります。アレディアでは4時間以上かけて点滴するのに対して、ゾメタでは15分ぐらい点滴すれば済んでしまいます(ちなみに、両剤とも約1カ月間に1度の割合で投与します)。

こうした利点に加えてゾメタでは、乳がんのみならず、前立腺がん等にも使える見込み(予定)だとされています。医師がゾメタに期待している理由を、これで多少は理解していただけたと思います。

骨転移による諸問題がゾメタで半減

海外の臨床試験において、ゾメタの投与が“骨転移に伴う諸問題”を減少させました。具体的に説明しましょう。骨転移を生じた患者さん(3000人以上)に、転移後の約2年間に渡ってゾメタを投与し続けたところ、すでに述べたような骨転移に伴う諸問題を生じる患者数が、およそ半分に減少しました(ゾメタを使わなかった患者グループと比較して、発生率が48パーセント減少)。

また、ゾメタを投与し続けたグループでは、諸問題を生じることなく無事に過ごせた日々が、数カ月から半年近くも増えていました。

以上のことから、ゾメタは「問題が生じた後に投与し、それに対処する薬剤」と言うよりは、むしろ「転移後の早期から投与を続けて、問題が生じるのを極力避ける、もしくは遅らせる治療法」と考えたほうが良さそうです。

ちなみに海外では、色々な抗がん薬とゾメタを併用して、骨に転移したがんの拡大を最小限に食い止める努力もされています。この試みに関しては、一部の研究者から“ある程度の効果が見込める”と報告されています。

一方、骨転移を生じる以前からゾメタの投与を始めれば、骨への転移自体が防げるのではと考える研究者もいます。しかし、この件(骨転移の予防効果)については、否定的な研究結果も出ています。

最後になりましたが、ゾメタを投与することで起こりうる副作用を説明します。ゾメタをはじめとするドロネート系の薬剤は、腎臓に大きな負担をかけますので、治療中は定期的な腎機能検査が望まれます。また、骨髄に炎症が起こる場合も少なくありませんから、“この治療が必要か否か”を事前に担当医師と良く話し合うことが大切でしょう。


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