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患者のためのがんの薬事典

インライタ(一般名:アキシチニブ)
転移性腎細胞がんの2次治療を変える最新の分子標的薬

取材・文 ●柄川昭彦
発行:2012年12月
更新:2014年1月

  

インライタ(一般名アキシチニブ)近年、新薬の登場で、転移性腎細胞がんの薬物療法は変わり続けてきました。今年は、新たな分子標的薬「インライタ」が登場。2次治療の臨床試験では、がんが悪化しない期間(無増悪生存期間)でも、腫瘍を縮小する効果を示す奏効率でも、インライタが従来の薬剤であるネクサバールを上回りました。この薬の登場で選択肢が増え、腎細胞がんの2次治療が変わります。

細胞の増殖や血管新生を強力にブロック

腎細胞がんの治療は手術が基本ですが、転移があるケースや手術後に再発したケースなど、手術できない場合には薬物療法が行われます。薬物療法は、かつてはインターフェロンαなどによるサイトカイン療法が中心でしたが、近年、スーテント、ネクサバール、アフィニトール、トーリセルといった分子標的薬が登場してきました。それに加え、2012年には、新たな分子標的薬であるインライタが登場しました。

インライタはスーテントやネクサバールと同じ、チロシンキナーゼ阻害薬に分類されています。ただ、標的が絞り込まれている点がこれまでのチロシンキナーゼ阻害薬とは異なります。

がんが増殖するためには、がんに栄養を送る新たな血管やリンパ管が必要です。インライタは、そういった血管やリンパ管ができるのを防ぐことで、治療効果を発揮します。

スーテント=一般名スニチニブ ネクサバール=一般名ソラフェニブ アフィニトール=一般名エベロリムス
トーリセル=一般名テムシロリムス

無増悪生存期間が2カ月あまり延びた

■図1 アキシチニブの効果①無増悪生存期間
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(国際共同第3相臨床試験/1032試験:AXISより)

インライタの有効性を証明した国際的な臨床試験があります。1次治療が効かなくなった転移性腎細胞がんの患者さん(715人)を対象に、2次治療として、インライタを投与した群と、ネクサバールを投与した群で、治療効果を比較した試験です。

この試験における無増悪生存期間は、インライタ群が6.8カ月、ネクサバール群が4.7カ月でした(いずれも中央値、図1)。つまり、2次治療において、インライタは無増悪生存期間を延長することが証明されたのです。

腫瘍を縮小する効果を示す奏効率は、インライタ群が19.6%、ネクサバール群が9.2%で、腫瘍を縮小するインライタの優れた効果が明らかになりました(図2)。

■図2 アキシチニブの効果②抗腫瘍効果
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(国際共同第3相臨床試験/1032試験:AXISより)

また、この試験に参加した日本人の患者さん(54人)に絞り込んだ解析も行われています。それによれば、無増悪生存期間はインライタ群が12.1カ月で、ネクサバール群の4.9カ月を大きく上回りました。奏効率も、インライタ群が52.0%、ネクサバール群が3.4%と大きな差がついていました。少ない患者数での解析ですが、日本人にはとくに効果が高い傾向が示されていたのです。

中央値=大きさの順に並べたとき、全体の中央にくる値
奏効率=がんの大きさに50%以上の縮小が見られた割合

米国臨床腫瘍学会は2次治療薬として推奨

前述した臨床試験の結果を踏まえ、米国臨床腫瘍学会(ASCO)の新しい「腎細胞がん診療アルゴリズム」では、インライタは転移性腎細胞がんの2次治療で用いられる薬剤であると位置づけられています(表3)。

このアルゴリズムでは、1次治療でサイトカイン療法を行った場合の2次治療は、ネクサバールかインライタかヴォトリエント(日本では腎細胞がんには未承認)を使用することになっています。1次治療でチロシンキナーゼ阻害薬(スーテントかヴォトリエント)が使われた場合の2次治療には、アフィニトールかインライタが選択されることになっています。インライタの登場により、2次治療の選択肢が増えたのです。

ヴォトリエント=一般名パゾパニブ

■表3 転移性腎細胞がんの治療アルゴリズム(ASCO 2012)
患 者 第1選択 他の選択
1次治療 予後良好群 または 予後中間群

スニチニブ パゾパニブ※1 ベバシズマブ※2 +インターフェロンα

高用量インターロイキン2 (特定の患者)

ソラフェニブ 臨床試験 (特定の患者)

予後不良群 テムシロリムス 他のVEGF阻害剤 臨床試験
2次治療 サイトカイン療法後 ソラフェニブ アキシチニブ パゾパニブ※1 スニチニブ 臨床試験
VEGF阻害剤後 アキシチニブ エベロリムス 未使用の分子標的治療薬 臨床試験
mTOR阻害剤後 データなし
3次治療 すべての患者

<1:国内未承認 ※2:国内において腎細胞がんに対する適応なし

5mg錠と1mg錠があり用量を微調整できる

インライタは経口剤で、通常、1回5mgを1日2回服用します。ただ、2週間以上にわたって、重い副作用が見られず、血圧が収縮期150mmHg以下・拡張期90mmHg 以下の場合には、服用量を増やすことが推奨されています。最大で1回10mgを1日2回服用まで増やすことができます。

インライタの効果は、血中濃度と関係していることが明らかになっているので、問題となる副作用が出ていないのであれば、服用量を増やすことが望ましいのです。とくに高血圧は、効果を予測するバイオマーカーになることがわかっています。つまり、副作用の高血圧が出る患者さんほど、がんへの効果が現れやすいことが明らかになっているのです。

インライタには5mg錠と1mg錠があります。基本は1回の服用量は5mgですが、1mg錠があることで微調整がしやすくなっています。

高血圧のほかによく現れる副作用には、下痢、疲労などがあります。ただ、前述した臨床試験では、インライタ群の副作用による投与中止率は3.9%で、ネクサバール群の8.0%の半分程度でした。もちろん副作用に対する十分な注意は必要ですが、副作用が相対的に軽い薬であることも確かです。

この薬の価格は、5mg1錠で9094円なので、1回5mgの場合、1日2回で30日分の薬剤費は54万5640円。1回10mgまで増量した場合には、その2倍になります。たとえば、健康保険が3割負担であれば、患者さんが支払うのは、薬剤費の3割です。ただし、高額療養費制度を利用すれば、1月の自己負担額は、収入などによって個人ごとに算出される一定額にまで抑えることができるので、そういった制度を上手に活用していくことが大切になります。

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